マンション投資、アパート経営…ひと口に「不動産投資」といっても、その手法は様々。それぞれの特徴をしっかり押さえることが、不動産投資スタートの第一歩となるのです。本記事では、株式会社SRコーポレーションで不動産コンサルティングを行う高澤啓氏が、一般の投資家が行える3つの不動産投資法について解説します。

一般の投資家ができる不動産投資法は主に3つ

不動産投資、不動産経営といわれるものは多くありますが、一般の投資家が金融機関から融資を活用して購入するケースで考えると、マンション投資、アパート経営、そして旅館業経営の3つが対象といえるでしょう。本記事では、それぞれの特徴と現在のマーケットについて見ていきます。

 

まず、それぞれの違いを見ていく前に、「マンション投資」は投資といわれ、「アパート経営」・「旅館業」は経営と呼ばれるのはなぜか、考えてみましょう。

 

ポイントは、「商品に投資をする」という意味合いが強いか、「自分で経営する」という意味合いが強いかの違いです。マンション投資は、読んで字のごとく、商品化されたものに投資する意味で「マンション投資」といわれることが多いようです。一方でアパートや旅館業は、経営方法を変えることが可能で、内装や外観などもアレンジでき、「経営」という表現が似合うため、このように呼ばれています。

 

ちなみに「不動産投資」は、これだけ認知されているにも関わらず、この言葉自体は辞書にもウィキペディアにもありません。造語というか、常套句的な存在なのです。

都心マンション投資では「売却益」狙いの投資家が増加

マンション投資は、一般の方が不動産投資を始めるきっかけになりやすい商品です。江戸時代から長屋という文化はありますが、地主や資産家以外で一般の方が購入し、不動産投資を始めるようになったのは、マンションが最初です。

 

分譲販売された日本最古のマンションは、「宮益坂ビルディング」です。1953年、戦後まもなくのことですから、当時はかなり注目を集めました。この集合住宅の一戸を購入・居住し、最後に家を出ていく際、「売る」のではなく「貸す」ことが行われるようになったのです。これが、「マンション投資」普及の要因です。

 

以前のマンションは、今の時代のようなコンパクトマンションよりも、ファミリー向けのマンションが多く、借りるよりも「夢のマイホーム」としての購入がメインでした。しかし、「賃貸需要」を起因として、住宅用としての分譲マンションと、賃貸用としての分譲マンションにわかれていきます。

 

高度経済成長期、東京の人口は激増しました。他県から若者を中心に労働者が集まり、「一人暮らし」というカテゴリが広く認知されるようになりました。ここの「需要」を拾う意味で、ワンルームマンションが多く建設され、賃貸住宅としても世の中に定着していったのです。

 

立地を選び、事業者がRC(鉄筋コンクリート)造で建設するマンションは、耐久性や遮音性に優れ、地主を中心として存在していたアパートよりも、賃貸需要の人気が集まりました(一方で、施工費や需要増などの理由から、RC造のマンションはアパートよりも賃料が割高になりました。そのため、マンションに住むのが金銭的に厳しい人などがアパートに住むという構図ができたのです)。

 

その後、バブル期や、ITバブル期、そして近年のオリンピック効果があり、マンション投資は販売戸数を伸ばしていきました。バブル崩壊後も、マンションの価格は多少の上がり下がりはあるものの、都心の不動産価格の高騰や、施工費の上昇、物価の上昇などで、投資用のマンションも年々高騰しており、キャピタルゲイン(売却益)狙いで投資する人も増えています。

 

不動産投資全体にいえることではありますが、都心への人口流入が増えれば、都心の賃貸需要は高まり、賃料も上昇する傾向にあります。まさに賃料や価格というものは、オークションの原理です。欲しい人、住みたい人が多いほど、価格は高騰していきます。好立地のマンションは、10年前の分譲時に比べて売却価格が上昇しており、都心のエリアであれば、マンション投資はインカムゲインよりもキャピタルゲインのほうが強い傾向にあることも特徴です。

一般の投資家にとって「アパート経営」は難しい時代に

以前のアパート経営というのは、江戸時代からある長屋のように、地主が賃借人に貸すというスタイルが主流でした。そのため、土地を持っていない人はアパート経営とは無縁のイメージでしたが、2000年代から「土地なし」でもアパートオーナーになる人が増えてきました。実際のところ、土地を活用するアパート経営と、土地から購入するアパート経営では大きな違いがあります。

 

土地を所有している方は、建物費用のみでアパート経営を始められるので、投資資金に対して利回りがよくなります。ところが、自己所有の空いている土地にアパートを建てるため、その場所に賃貸需要があるかどうかという点が、今後の経営に大きな影響を与えます。

 

それに比べると、土地から買うアパート経営は、初期費用として土地の資金+建物資金がかかるので、投資利回りは必然的に低くなります。しかしこの場合、アパート販売業者が購入後の賃貸管理も請け負う関係で、賃貸需要が見込める土地にアパートを建設して販売します。必ずとはいえませんが、たまたま空いている土地でアパート経営をするよりも、賃貸需要が見込める可能性は上がります。

 

また、多くの新築アパート業者は、金融機関と提携を結び、フルローンで融資を組むため、少額の頭金でアパート経営を始めることができるのも特徴の1つです。

 

一方で売却を考えると、マンションよりも法定耐用年数が短く、劣化も早い木造アパートは、売却時に大きく値段が下がる可能性があります。また、中古アパートは現在融資を組むことが難しい時代なので、出口戦略を考えると、売却先が見つからない可能性があります。つまり、アパート経営は早期売却を前提にインカムゲインをメイン収益とした商品であるといえるのです。

 

加えて、地方では全体的に土地価格が下落しているので、場所選びを慎重にしなければなりません。しかし、アパートは容積率の関係で商業地域よりも住居地域に建てることが多いため、どうしても最寄り駅から離れてしまい、経営が厳しくなるケースが多く見られます(逆にいえば、都心の駅前の一等地に土地を所有している人には、非常に有効的な資産活用法ともいえます)。

 

実のところ、以前筆者が所属していた会社は、新築のマンション投資とアパート経営を両方扱っている上場企業でしたが、アパート経営のほうが月々の収支はよく、土地もすべて個人の所有権になるため、自由度が高く魅力的な部分も多くありました。

 

しかし、2018年の金融機関の不祥事によって、地方アパートへの融資は厳しくなりました。まだ新築アパート経営は健在ですが、価格帯の大きさから、どうしても買える人はマンション投資に比べると限られます。一般の会社員がアパートを買える時代はほぼ終わったといえるでしょう。

インバウンド需要増加で注目される「旅館業経営」

最後に旅館業経営についてです。この場合、自己所有の既存物件を旅館業として申請、許可を得ることで、区分マンションの一室でも、空きビルでも、一棟アパートでも、戸建てでも、通常の賃貸経営ではなく、旅行者を相手にした旅館業経営ができます。

 

もちろん新規購入の不動産で旅館業を行うこともできます。海外からの旅行客が増えている昨今、宿泊施設不足を解消し、日本の「おもてなし」精神を世界へ広められる、有望なビジネスともいえます。

 

旅館業申請をするには、建物として一定の条件をクリアしていることも重要ですが、そもそも旅行者が足を運ぶ場所や、空港近く、繁華街付近でないと、旅行者需要を獲得することはできません。また、東京都とそれ以外の県では明らかに外国人宿泊者数に差があるので、より場所の選定が重要になります。専門的なノウハウが必要ですから、旅館業経営に強みを持つ業者に問い合わせることをおすすめします。

 

 

高澤 啓

株式会社WALLMATE不動産

投資事業部 プロデューサー

 

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本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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