大阪のオフィス市場…空室率はさらに低下
■梅田の空室率は0.1%
2019年3月期の大阪グレードA※空室率は0.5%となり、対前期(2018年12月期)比0.5ポイント低下した。前期は0.1ポイント上昇したが、今期は大幅な低下となった。
需給の逼迫(ひっぱく)状況はさらに加速しており、依然として空室は非常に少ない。グレードBも対前期比0.3ポイント低下の0.9%、オールグレードも対前期比0.4ポイント低下の1.3%となった。
※グレードの定義は、記事下の図表3を参照
エリア別に見ると、「梅田」エリアの今期の空室率は0.1%と、対前期比0.2ポイントの低下となった。依然として中心部へのテナント需要が多く、新規開設や館内増床、レンタルオフィスからの拡張移転等が見受けられた。「堂島」「淀屋橋」「本町」エリアにおいても空室率は1%未満であり、「中之島」エリアのみがわずかな上昇となったものの、1.8%と低水準である。
想定成約賃料を見ても、空室率の低下と連動し、グレードAでは対前期比+2.1%(24,350円/坪)、グレードBは対前期比+3.0%(13,700円/坪)、オールグレードは+4.2%(13,220円/坪)となっている。この状況は、しばらく継続するだろう。
大阪ビジネスエリアの中心部では、100坪を超える空室は非常に限定的になってきている。築浅または好立地のビルに水面下の空室情報があれば、既存テナントの解約通知が出る前に、複数の企業で取り合いになるのが現状である。
今後、大阪へのオフィス移転や、新規開設等を検討している企業は、最新の空室情報を入手し、移転に関する計画について、上層部承認等の社内プロセスを速やかに進行させるように準備しておくことが必要である。
■今後の大型新規供給
2018年9月に竣工した「なんばスカイオ」では、堅調に空室消化が進み、90%以上稼働の目途がついた。次の大型新規供給は、「淀屋橋」エリアで「オービック御堂筋ビル」が2020年1月竣工を予定しており、大阪オフィスマーケットではその動向が注目されている。
2021年以降は、「梅田」「新大阪」「淀屋橋」「本町」の各エリアにおいて、新規供給計画の話がある。ただし、その次に計画が発表されている、2022年4月竣工予定の「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」までは、空室率の水準に大きな変化は見られないだろう。
「神戸」のビルオーナーは賃貸条件の柔軟化が必須⁉
■神戸のオフィスマーケット
神戸における2019年3月期の空室率は、対前期(前年12月期)比0.1ポイント低下の1.7%となり、引き続き緩やかな低下が続いている。依然、三宮エリアを中心に新規開設や拡張移転の動きが優勢で、一部に大型の減床や撤退通知もみられたが、解約予告期間内での成約事例も多く、空室があまり顕在化しない。テナントにとっては、思うような物件・時期の増床や移転が困難なマーケットが続きそうだ。
想定成約賃料は対前期比で1.7%(190円/坪)上昇して11,580円/坪となった。2021年の「神戸阪急ビル東館」竣工や、「新港突堤西地区再開発」に伴う二次空室が次のマーケットの潮目となるが、実際にそれらの動きが具体化してくる2020年までは空室率1%台の継続が予想され、しばらくは賃料の底上げも続くだろう。
ただし、事務所・店舗ともに大阪中心部や京都エリアほど需要に強さはなく、物件への引き合いの重なりや成約賃料の上昇幅は限られる。オーナー側は賃料上昇を目指しつつも、早期成約のためには賃貸条件の柔軟化を図る必要もあるだろう。
盛況な「京都」…オフィス賃料は過去最高を更新
京都における2019年3月期の空室率は、対前期比0.1ポイント低下して0.5%となった。長期にわたり物件の新規供給はないが、テナントの新規開設や拡張意欲は高く、空室率が1%を下回る状況が継続している。全体的に満室稼働の物件が多く、空室が出ても、分割された1区画ずつという状況である。
想定成約賃料は前期比で2.3%(320円/坪)の上昇となり、14,300円/坪であった。テナントが決定する度に賃料が上昇するため、過去最高を更新し続けている。具体的な新規供給が待たれるなか、依然として少ない空室を複数テナントが同時に検討する状況は変わらず、賃料上昇がどこまで継続するのかが注目される。
近年、オフィスエリア内も含めて激増した京都のホテル等の宿泊施設については、昨年頃から稼働率に陰りが出始めている。立地によっては、ホテル開発を検討していた事業者が、長期的な収益の観点から、ホテル以外の用途として、オフィスの建設も視野に入れる動きが出てきている。