ミレニアル世代が鍵?「期間限定店舗」が表参道に急増するワケ

ロサンゼルスを本拠とする世界最大(2018年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)が、ポップアップストアについてまとめた「ジャパンリテールビューポイント 開花するポップアップストア」より一部抜粋し、ポップアップストアの増加要因を見ていきます。

ロードサイドの出店が目立つ、ポップアップストア

■ボリューム

東京の主要リテールエリアでは、ポップアップストアと呼ばれる期間限定店舗の出店が増えている。特に、従来からの百貨店やショッピングセンターに加えて、路面店舗スペースを利用した出店形態が増えている。

 

[図表1]は、当該エリアに出店した全体のポップアップストア数と、そのうち路面店舗スペースに出店した数を比較したものだ。2015年は全体で284件だったポップアップストア数が、2018年には380件と34%増えた。特に、路面店舗スペースに出店したポップアップストア数の伸びが著しい。2015年は77件だった路面店舗スペースへの出店数は、2018年には110件と43%増えている。ホップアップストア全体の出店数の増加分(96件)のうち、4割弱が路面店舗での出店だったことになる。

 

[図表1]ポップアップストアの出店数
[図表1]ポップアップストアの出店数

 

路面店舗でのポップアップストアの出店が増えている理由として、企業がブランドや商品のプロモーションのためにポップアップストアを使うようになったことが挙げられる。背景には、スマートフォンの普及と、それによるソーシャルメディアの拡大もあるだろう。

 

総務省が2018年5月に発表した「通信利用動向調査」によると、2017年におけるスマートフォンの個人保有率は60.9%と、調査を開始した2014年の44.7%から3年間で16.2ポイント上昇した。スマートフォンの普及によって、SNSなどを使ったコミュニケーションの容易性が飛躍的に向上した。

 

すなわち、情報が一気に拡散する環境が整ったことで、ポップアップストアを使った企業プロモーションが盛んになった。特に路面店舗はブランドの世界観が表現しやすいといわれており、百貨店やショッピングセンターに比べてコンテンツ作りの自由度が高い。そのため、高いプロモーション効果が得やすいと考える企業が多く、路面店舗スペースを利用したポップアップストアの出店が増加した。

 

なお、2015年に路面店舗のポップアップストアを出店した77件のうち、その後、東京の主要リテールエリアにおいて、路面店舗ないしは百貨店やショッピングセンター内に常設店舗を出店したリテーラーは13%だった[図表2]

 

[図表2]路面店舗のポップアップストアを 2015年に出店し、その後に常設店舗を出店した割合
[図表2]路面店舗のポップアップストアを2015年に出店し、その後に常設店舗を出店した割合

 

これを見る限り、路面店舗のポップアップストア出店を、常設店舗出店への布石としている企業は少ないようだ。むしろ、路面店舗のポップアップストアを出店する企業の多くは、ポップアップストアと常設店舗の使いわけをおこなっていると考えられる。

 

なぜなら、路面店舗のポップアップストアを出店する企業のなかには、すでに近隣に常設店の路面店舗を持っているところが多数含まれているからだ。常設店舗では時間を掛けてブランディング*1をおこなう一方で、ポップアップストアではプロモーションをおこなうという、それぞれの戦略をとっていると思料する。

 

*1:ブランドに対する共感や信頼などを通じて、消費者にとっての価値を高めていく、企業と組織のマーケティング戦略の1つ

 

■期間

[図表3]は、路面店舗のポップアップストア出店期間をレンジ別の割合で示したものだ。出店期間としてのボリュームゾーンは、2015年と2018年ともに「1週間以上-2週間未満」(2015年:35%、2018年:31%)だった。「1週間未満」を含めると50%を超えている。本来ポップアップストアとは、空き店舗のスペースなどに突然出店し(ポップアップ)、一定期間で突然消えてしまう店舗のことをいう。そのため、2週間未満という短い期間が多いことは理にかなっている。

 

[図表3]路面店舗のポップアップストア出店期間
[図表3]路面店舗のポップアップストア出店期間

 

短い期間の出店のメリットとして、2つのことが挙げられる。1つ目は、「限られた時間のなかで提供される特別な体験」という意識を消費者に持たせやすく、期間中の来場を促進できることだ。2つ目は、出店コストを抑えることができるため、比較的小規模な企業も出店しやすくなることだ。

 

2015年と比較して、2018年に大きく割合が増えたのは「2週間以上-3週間未満」(8ポイント上昇)だ。オープンとクローズの準備期間を合わせて1ヵ月という使い方が増えていることから、実際の出店(オープン)期間は3週間未満になることが考えられる。また、消費者の嗜好が多様化するなかで、新商品のテストマーケティング*2をするポップアップストアは増えており、「2週間以上-3週間未満」が最適な期間だという推測もできる。

 

一方、2018年に大きく割合が減ったのは「1ヵ月以上-3ヵ月未満」(10ポイント低下)だ。ポップアップストアの出店ニーズが増加しているなかで、消費者を飽きさせない仕掛けとして1ヵ月未満でストアを入れ替える傾向にあることが考えられる。

 

*2:新商品の発売時に、リスク軽減のために地域や期間を限定して商品を試験販売し、消費者の反応を実験すること

出店エリア決定の鍵は「ミレニアル世代」

路面店舗でのポップアップストア出店を、エリア別の割合で示したの[図表4]だ。出店エリアとしてのボリュームゾーンをみると、2015年は「原宿」(38%)、そして「表参道」(29%)が続いており、両エリアで67%を占めた。2018年は「表参道」(45%)が逆転し、「原宿」(34%)が続いている。また、両エリアが占める割合は79%と、2015年に比べて12ポイント上昇している。

 

[図表4]路面店舗のポップアップストア出店エリア
[図表4]路面店舗のポップアップストア出店エリア

 

「原宿」と「表参道」にポップストアが集積する大きな理由は、ミレニアル世代に人気があり、彼らが好んで訪れるエリアであるためだ。多くの企業がミレニアル世代をターゲットとしたプロモーションを展開している。ミレニアル世代に支持されるブランドとなることで、ファン/購買層の若返りが図れるほか、旬なブランドになることもできる。

 

また、ミレニアル世代は“デジタルパイオニア“や“デジタルネイティブ“などと呼ばれている。SNSなどを使ったコミュニケーションに長けており、リテーラーにとっては、短期間に情報を拡散してくれる世代だ。彼らはモノ消費よりもコト消費を重視し、他者の共感や評価を重視する意識が強い世代だといわれている。そのため、彼らが魅力を感じるコンテンツや、情報を発信したくなる仕組みを作ることが、ポップアップストア成功の鍵ともいえる。

 

2018年の「表参道」の割合が2015年に比べて16ポイント上昇した一方、2018年の「原宿」の割合は4ポイント低下している。これは、必ずしも「原宿」エリアの人気が落ちたからではない。主な理由は2つあると考える。

 

1つ目は、ミレニアル世代に続く世代として認識されはじめた“Z世代”を多く含み、カジュアルな若者の街というイメージが強い「原宿」に比べて、「表参道」はお洒落で洗練された街というイメージがあることだ。そのため企業は、「表参道」の街のイメージと自社ブランドとの親和性を感じやすい傾向にある。2つ目は、「原宿」に比べて「表参道」は路面店舗スペースの新規供給量が多く、物理的にポップアップストアが作りやすい環境となっていることだ。当エリアでは、住宅からリテール物件への建て替えが散見されており、「表参道」のリテールエリアが拡がっていることが路面店舗のポップアップストア出店増加につながっている。

 

■業態

最後に、路面店舗のポップアップストア出店を業態別の割合で示した[図表5]。2015年、2018年ともにボリュームゾーンは「ファッション」(それぞれ41%と35%)と「食物販・飲食店」(それぞれ34%と31%)だ。

 

[図表5]路面店舗のポップアップストア出店業態
[図表5]路面店舗のポップアップストア出店業態

 

「ファッション」の内訳をみると、アパレルをメインに扱うブランドが、ほかのファッションブランドとのコラボレーション商品を企画し、限定販売しているケースが多い。ブランドの新たな魅力を表現することで既存ファンを維持すると同時に、新たなファンを獲得するといったプロモーションの狙いがあるようだ。

 

「食物販・飲食店」の内訳をみると、調理の度合いが大きいレストランなどの重飲食はあまりみられず、ほとんどが調理の度合いの小さいカフェなどの軽飲食だ。さらにその多くは、メーカー系企業が販売する食品や日用品、サービスをプロモートする企画として開設されている。いずれも、食べたり使ったりという実体験を消費者に提供することで、その価値を理解してもらうという趣旨で行われている 。

 

全体の13%と割合は小さいものの、2018年の「ヘルス&ビューティー」は2015年に比べて5ポイント上昇した。理由として、2つのことが挙げられる。1つ目は、化粧品や美容家電も実体験によってその価値が理解されやすいことだ。化粧品業界はほかの業界と比べて、売上高に占める広告・販促費の割合が高い。プレーヤーが多く、B to Cビジネスのなかでもレッドオーシャンといわれているためだ。厳しい競争を勝ち抜くためには、プロモーションを通してブランド価値や消費者認知を高める必要がある。

 

2つ目は、業態全体でインバウンド需要の取り込みに成功しており、潤沢な資金力を背景にプロモーションの企画・実行が容易となったことだ。訪日外国人数が増加傾向にあるなかで、「ヘルス&ビューティー」による路面店舗のポップアップストア出店は、今後も増加すると予想する。

 

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CBRE日本法人は、不動産賃貸・売買仲介サービスにとどまらず、各種アドバイザリー機能やファシリティマネジメント(FM)などの18の幅広いサービスラインを全国規模で展開する法人向け不動産のトータル・ソリューション・プロバイダーです。CBREの前身となった生駒商事が1970年に設立されて以来、半世紀近くに亘り、日本における不動産の専門家として、全国10拠点で地域に根ざしたサービスを展開してきました。

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CBREグループ(NYSE:CBG)は、「フォーチュン500」や「S&P 500」にランクされ、ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社です(2018年の売上ベース)。全世界で90,000人を超える従業員、約480カ所以上の拠点(系列会社および提携先は除く)を有し、投資家、オキュパイアーに対し、幅広いサービスを提供しています。不動産売買・賃貸借の取引業務、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、事業用不動産ローン、不動産鑑定評価、不動産開発サービス、不動産投資マネジメント、戦略的コンサルティングを主要業務としています。

写真は、リサーチ エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。
CBREのリサーチ部門の責任者として、オフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場ならびに売買市場のリサーチ業務を統括。製鉄会社および投資銀行勤務を経て1997年から2013年まで証券アナリストとして株式リサーチ業務に従事。2000年からはJREITを中心に不動産セクターを担当。UBS証券、ゴールドマンサックス証券、マッコーリーキャピタル証券、みずほ証券を経て、2013年10月より現職。

著者紹介

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※本調査は、東京の主要リテールエリア(=銀座、表参道・原宿、新宿、渋谷)において、Webベースの調査結果をまとめたものです ※調査期間は2019年3月20日~4月8日 ※本文書は貴社の責任と判断で利用いただくものであり、弊社は、貴社又は第三者が本文書に基づいて行われた検討、判断、意思決定及びその結果について法律構成・請求原因の如何を問わず一切の責任を負わないものとします。

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