借金こそが成功の鍵!?「借入れゼロ」の会社が失敗するワケ

「アベノミクスで景気回復」という文言が、そもそも事実かどうか怪しくなってきた昨今。アベノミクス自体は2012年から続いているものの、この7年間で、「景気回復」どころか経営難・後継者不足に陥り、会社を手放した中小企業オーナーもいることだろう。ファイナンシャルプランナーの田原広一氏は、そのような事態を憂い、「借金=悪ではない」と断言する。本記事では、「借金」が会社の生存率を高める理由について解説する。

軌道に乗せられず、廃業を余儀なくされる経営者たち

会社生存率という言葉をご存じでしょうか。これは会社が生存している率を示したもの。つまり、会社を立ち上げてから生き残る確率を示す数字になります。では、日本の中小企業の“生存率”はどの程度なのでしょうか。

 

計算法や調査母体によっても、さまざまな数字が取り沙汰されていますが、中小企業庁のデータを参照すると、平均して1年で約3割、3~5年で4~6割が廃業に追い込まれるという実態が明らかにされています。つまり、夢を抱き、相応の資金と時間をかけて事業を立ち上げたにもかかわらず、数年で約半分もの会社が倒産してしまうのです。先の中小企業庁の調査で、会社ではなく、個人事業主の場合はさらにサイクルが早く、1年で約4割が“店じまい”に追い込まれるというデータもあります。

 

近年、一部上場企業をはじめとする大企業の多くが、業績が回復基調にあり、過去最高益を更新するなど景気のいいニュースを耳にします。しかし、日本における会社の約99%を占める小さな会社はその恩恵をなかなか受けられない状況にあります。とくに、ビジネスをスタートしたばかりの中小企業は、依然、苦しい状況に置かれているのです。

お金が出て行く創業初期は資金ショートが起きやすい

なぜ中小企業や個人事業主が廃業に追い込まれやすいのでしょうか。理由はさまざまですが、小規模な事業の場合は比較的シンプルで、突き詰めていくと原因は一つです。

 

お金がなくなると会社は潰れるのです。つまり、会社の資金が底を尽くと、事業が回らなくなる。多くの会社の倒産理由の筆頭に挙げられるのが資金ショートです。資金ショートは、会社の成長ステージのどの段階でも起こりうるものですが、とくに資金ショートのリスクが高いのが創業初期です。飲食店を例にその背景について考えてみましょう。

 

店を開くには多くの資金が必要です。初期費用となる設備資金として、物件取得費から内外装費、厨房機器の費用などで1000万円程度かかるケースも少なくありません。多額の資金が一度に手元から出ていくわけです。

 

なんとか資金をやりくりして開業にこぎつけても、それ以降に必要となる運転資金や、家賃、商品の仕入代金、そして人を雇えば人件費が毎月必ず出ていきます。もちろん、創業期から売上、利益が順調に上がれば問題ありません。

 

しかし、株式会社東京商工リサーチの調査結果を取りまとめた中小企業の「原因別倒産状況」(中小企業庁)を見ると、直近6年の調査で一貫して倒産理由の1位に挙げられているのが「販売不振」です。つまり、多くの企業が創業当初は、想定より売上が上がらず、1~3年程度で廃業に追い込まれていくという構図が見えてきます。

売上が想定どおりに上がることはまずない

実際、私が携わってきた数多くの事例を見ても、最初から想定どおり、売上・利益が上げられるケースはまれです。業種にもよりますが、黒字転換には6~7カ月程度かかるというのが平均的数値です。

 

しかも、多くの方は開業に向けて「こんなオシャレな店にしたい」「スタッフがやりがいを持って仕事ができる環境を整備したい」などと夢ばかりがふくらみ、“ロマンとソロバン”のバランスに目がいかなくなってしまいます。コストがふくらむ一方で、とかく売上の見通しを甘く立てがちです。

 

さらにオープン当初は、遠方から友人がわざわざ来てくれたり、近所の人も物珍しさから立ち寄ったりしてくれる“ご祝儀相場”も期待できます。しかし、実力が伴ったきちんとした差別化ポイント、戦略がない限り、すぐに客足は遠のいていきます。厳しい状況に陥ってから打てる手はそう多くありません。

 

「このままではマズい」と、メニューや業態を見直すなどのテコ入れをしたいと思っても、資金の余裕がなければ新たな戦略を打つこともままなりません。客が来なければ、仕入れのロスも増えるばかりで、新たないい食材の仕入れもできなくなってしまいます。また、サービスや料理のレベルアップのためには、“数”をこなし、経験値を積むことも肝要ですが、閑古鳥が鳴いていては、それも実現できません。まさに“貧すれば鈍する”で、「客が来ない→売上が上がらない→料理やサービスのレベルダウン→客足がさらに遠のく」という悪循環に陥ってしまいます。

 

一方で家賃などの運転資金、固定費は売上に関係なく毎月かかります。こうしてコスト負担ばかりがのしかかり、店を閉めざるを得なくなるわけです。

売上ゼロでも生活できる生活費の蓄積が大事な理由

ここでは飲食店の事例を挙げましたが、営業代行業のような元手ナシで始められるようなビジネスでも、コストは抑えられても集客ができなければ、事業は立ち回りません。

 

美容室など既存顧客を引き継ぎやすい業種であったとしても、周到な準備をしていない限り、売上が順調に上がるまでにはやはり半年程度はかかるのが平均です。とき折、ネットに流布されるような成功話や開業セミナーなどで聞いたノウハウをうのみにし、「このとおりにやれば、絶対にうまくいきます!」などと自信満々で相談にみえるような方もいらっしゃいますが、ビジネスに“絶対”はありません。半年ぐらいは赤字、生活費が入ってこない状況が続く可能性があるということを、覚悟するべきです。

 

「開業前に最低でも半年間分ぐらいは、売上がゼロでも生活できるよう生活費を貯めておいてください」

 

融資サポートのお申込みをされる方に、私がいつもそう申し上げるのは、決して大げさな話ではなく、現場で数多くの失敗事例を見聞きしてきたからこその助言なのです。

お金を借りることに及び腰になる日本人

とはいえ、自力で開業資金以外の余剰資金を蓄えておくのは、よほどの資産家でない限り、なかなか難しいことかもしれません。自力で貯められないなら、どうするか。ここで出てくる選択肢が「借りる」という手段です。

 

融資の話に入っていきますが、とかくリスクを取ることについて及び腰になりがちな国民性もあるのでしょう。日本においては「お金を借りる」ことに関して、誤った常識、悪いイメージを抱いている方も多いようです。まずは、借金につきまとうありがちな誤解・イメージを取り上げ、解説していきましょう。

株式会社SoLabo 代表取締役

平成18年、ファイナンシャルプランナー2級取得。平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、財務諸表論講座講師を務める。
平成24~27年にかけて税理士事務所3社に勤務。平成24年8月、個人で融資サポート業務をスタート。
平成26年、税理士試験合格。平成27年12月、創業の融資を支援する株式会社SoLaboを設立、以降、特に日本政策金融公庫からの融資実績は800件以上にのぼる。
自身も融資を複数回受けてきた経験があり、創業3年で合計8200万円の融資を受けることに成功。
実体験を踏まえたアドバイスは多くの起業家から支持されている。

著者紹介

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田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

6割の会社が起業から1年で廃業!? 資本金400万円の会社を経営している著者が、創業して3年の間に複数の金融機関から8200万円もの融資を受けてきた実績を元に、中小企業でも高額の融資を受けられる秘訣を公開。 大切な会社を…

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