不動産を持っているだけで重くのしかかる税金
不動産は売っても買っても、持っているだけでも税金がかかります。親から相続した場合など、意外と税金の基礎を知らずに払い続けているオーナーもいます。不動産の取得から保有、さらに売却においては、主に次のような税金がかかることをおさえておきましょう。
不動産は単価が高額なだけに、「率」で計算する税金の額もおのずと高くなり、その実額が大きな負担となります。そのため多くの人が購入や売却においても〝二の足〟を踏んでいる感が否めません。
〈取得時にかかる主な税金〉
一般に不動産を購入して取得する場合には、不動産取得税や登録免許税、消費税、印紙税などがかかります。そして、相続によって取得する場合には、相続税や登録免許税などがかかり、贈与によって取得する場合には、贈与税や不動産取得税、登録免許税がかかってきます。
①不動産取得税
不動産の取得に対して、その不動産の所在地の都道府県が、その不動産の取得者に課税する税金です。ここでいう「取得」には、売買の他に、贈与や交換、また建築も含まれます。
②登録免許税
新築の建物に対する所有権の保存登記の他にも、種々の登記の際にかかってくる税金です。不動産の売買によって所有権が移転した際に、その登記を行うと登録免許税がかかり、借り入れを行った場合には抵当権の設定登記について登録免許税がかかり、さらに、贈与や相続によって所有権が移転した場合にも、その登記について登録免許税がかかります。
③消費税
土地の取得に関しては非課税ですが、建物の取得や売買に関する手数料については、取引価額に対して課税されます。現行は8%ですが、消費税増税により10%になると、さらに負担の大きい金額になります。
④印紙税
不動産の売買やローンなどの契約を結んだ場合に、その契約文書に記載した金額に応じて課税される税金です。
⑤相続税
不動産を相続によって取得した場合、取得時の価額に応じて課税されます。2015年の改正法では、基礎控除の引き下げをはじめ、大幅な増税となりました。
⑥贈与税
不動産を贈与によって取得した場合に、贈与を受けた人は取得時の価額または国が決めた路線価に応じて課税されます。相続税の増税に関連して、贈与税も今後増税に注意する必要があります。
〈所有しているだけでかかる税金〉
一般に不動産を所有していると、毎年、固定資産税と都市計画税がかかります。ただし都市計画税については、かからない地域もあります。
①固定資産税
毎年1月1日に、土地や家屋の他、償却資産などの固定資産を所有している人は、その固定資産の価格をもとに算定された税額を支払わないといけません。支払先は、その固定資産の所在する市区町村です。3年に1回、地価公示価格に準じて見直しが行われます。
郊外、地方都市の資産家では、年間数百万円単位の固定資産税を納付している人もたくさんいます。そうなると、土地活用で安定的な収益を上げているか、別の事業を経営して軌道に乗っていないと、とても継続して支払える金額ではありません。
②都市計画税
道路や公園、下水道整備などの都市計画事業に充当するための目的税です。市街化区域内に土地または家屋を所有している人に対して、固定資産税と合わせて納める仕組みになっています。
「資産課税」は、バブル崩壊後も上がり続けてきた
こうした税金のなかで特に不動産オーナーを悩ませているのが「固定資産税」です。東京の中心部に一戸建ての住宅や総戸数の少ない低層マンションなどの不動産を所有していると、この金額がばかになりません。
この固定資産税は2012年度の税制改正により大幅な増税となりました。その内容は、住宅用地と特定市街化区域農地(三大都市圏の特定市の市街化区域内の農地)に関して、「負担調整措置を80%から90%にする」というものです。2012年度、2013年度は90%ですが、2014年度からは負担調整措置が廃止され、固定資産税評価額の全額が課税標準とされます。
計算例などは専門の他書に譲りますが、かつて固定資産税は平成6年に評価水準を統一するという名目で公示価格の70%と定められました。固定資産税評価額がそれ以前の時価の2〜3割だった頃に比べると全国平均で3倍強になり、大きな波紋を呼んだ経緯もあります。それを、さらに増税しているのです。
バブル崩壊後20年以上も地価は下落し続けてきたのに、資産課税は上がり続けてきたということになります。相続税の増税も合わせて考えれば、資産家は不動産を所有しているだけで不安になるというより、税金の負担を考えるほどに悲観し、疲れ果ててしまうといった状況でしょう。
ちなみに、固定資産税は賦課課税方式の税金です。申告によって税額が決まるのではなく、市町村が税額を計算し、納付書を送ってきます。そのため計算ミスも相当あるようです。負担額が増え、さらに役所側にミスもあるとなると、まさに泣きっ面に蜂の状態です。
私がコンサルティングを行った、首都圏に大きな邸宅を所有する財閥系の名家では、固定資産税を毎年3000万円ほど支払っていましたが、税当局の過去10年にわたる評価書を調査した結果、崖地・不整形地などの減価要因の見落としといった大きな間違いを見つけ、年間の固定資産税を40%減の1800万円ほどに引き下げさせたこともありました。このように、課税当局の課税価格に疑問を持った場合には専門家である不動産鑑定士に調査を依頼することをおすすめします。