投資時に現金を一切払わない「オーバーローン」
「オーバーローン」という言葉を聞いたことあるものの、あまり詳しく仕組みについて理解している方は、多くはないのでしょうか。ネット上でオーバーローンを検索すると、
「オーバーローン バレる」
「オーバーローン 違法」
など、マイナスイメージの関連キーワードが上位にヒットします。これからさらに融資状況が厳しくなっていくかもしれません。そのような状況のなかで、オーバーローンについて正しく理解することが重要です。そこで今回は、「オーバーローン」を中心に融資の話をしていきます。
投資で不動産を購入する際によくあるケースが、頭金として物件金額の1割~3割を現金で支払い、さらに不動産仲介会社に支払う仲介手数料、保険など諸費用といわれる費用も現金で支払う、というものです。現金で支払った残りの金額は、融資してもらう、というわけです。
一方で「フルローン」は、頭金を一切支払わずに物件代金はすべて融資を受けて、諸費用は現金で支払うことをいいます。そして「オーバーローン」とは物件代金も諸費用もすべてお金を借り、現金は一切使わないやり方のことをいいます。
■オーバーローンは違法?
(1)銀行がしていいという場合違法ではない
結果からいうと、違法ではありません。現実的にオーバーローンで融資を引くことは難しく、違法な方法でオーバーローンを利用する人が多くいるため、悪いイメージがあるだけです。
住宅ローンは諸費用まですべて借り入れする、オーバーローンを適用できる金融機関があります。実際に筆者も現金を一切使わずに自宅を購入しました。その時は、5行の銀行にオーバーローン融資をあたってみて、1行のみがこの条件で融資するという回答をもらいました。ちなみに、ほかの銀行は融資不可や8割融資の返答でした。
つまり、銀行に黙ってオーバーローンを利用すると違法ですが、銀行がオーバーローンをしていいという結論を出していれば違法ではありません。
(2)物件によって審査結果が変わる
投資用ローンを提供している金融機関は、
「オーバーローンできますよ」
「〇〇円までお貸しします」
などの情報はどこにも記載していません。なぜならば、物件ごとによって審査結果は変わるからです。自身の「勤め先」「物件情報」「貯金額」「借入れ」などの情報をすべて銀行側へ提出して初めて、どこまで融資が受けられるかがわかります。銀行にとっても物件ごとに審査基準が異なるため、この点がとても曖昧で、難しいと感じる部分です。
アパートローンのようなパッケージ商品であれば、融資を受けられる大体の金額は想定できます。なぜなら
「こちらが提示している条件にさえ合っていれば物件金額の○○%融資します。しかし、融資条件はこれ以上よくも悪くもなりません」
と、パッケージ化されたのがアパートローンという商品だからです。
しかし、オーバーローンを狙っていくためには、プロパーローン(事業性融資)を利用する必要があります。これは、不動産購入に限らず事業向けの融資として使われるもので、企業へ融資するのと同じ審査手続きが行われます。物件のスペックや、その人の属性、投資経験など、銀行側が細かく審査を進めていきますが、審査が終わるまでは融資条件は決まっておらず、最悪の場合「審査の結果融資不可」という回答が出る場合もあります。しかしその反面、金利が低く借りられたり、フルローンやオーバーローンも狙える可能性があったりする、という違いがみられます。
「賃貸併用住宅」なら投資用ローン以外の手も
■不動産投資でオーバーローンを利用できる場合は?
不動産投資でオーバーローンを利用しやすい方法として、「賃貸併用住宅」を建設する際に住宅ローンを利用するという方法があります。建設面積の50%以上を居住スペースとすることで、住宅ローンと同じ低金利、オーバーローンで融資を受けられるパターンです。50%以上が居住スペースとなると、収益を上げることは難しいのですが、住宅ローンの支払いを賃料で補うことはできるようになります。つまり、賃貸併用住宅は頭金なく、住宅ローンの返済もなく、低金利という好条件で不動産投資をスタートできることはかなりのメリットです。
しかし、住宅ローンを利用する方法は不動産投資の奥義みたいなものなので、一度しか使えないことに注意しましょう。次のステップとしては、賃貸併用住宅によってしっかりと賃貸業の経験を積み、その経験から金融機関に対して、事業性融資(プロパーローン)の打診をしていくことができます。賃貸業の実績、本業の収入、住宅ローン返済がない分、しっかりとためた自己資金を武器にオーバーローンを狙っていくことができるでしょう。
まとめ
不動産投資を行う際に、現金を手元に残してスタートできるオーバーローンは理想的な手法です。融資を行う銀行の心理は、「きちんと返してくれる相手に、たくさんお金を貸したい」というものです。つまり、返済が滞ることのないと判断した相手に対してはオーバーローンを提供してくれる場合があります。そう考えると以下のような条件はあまり好まれないことがわかります。
●初めて不動産投資をスタートする人
●自己資金がほとんどない人
●ほかにも負債を抱えている人
●融資を受けたい物件はそもそもリスクが高い物件
銀行に対して、正直に、そして銀行側が融資したくなるような顧客であることを心掛けることが大切です。