国家公務員は「投資」で収入を得てもいいのか?
国家公務員は、「倒産がない」「リストラがない」など、安定したイメージが強いですが、色々と制約が多いのも事実です。また、いまだに年功序列がまかり通り、なかなか昇給が難しい職業でもあります。「将来のために資産を増やしていきたい」と考えている国家公務員のなかには、「投資」という選択肢を検討する人もいるでしょう。しかし「公務員は副業禁止」という考えから、本業以外で収入を得ることに二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、国家公務員の副業としての不動産投資について考えていきます。
■国家公務員の業務規則
最初に法律は、国家公務員の副業をどのように規定しているか、見ていきましょう。
国家公務員法 第103条
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
国家公務員法 第104条
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
さらに国家公務員法では、以下のような原則があります。
第99条:信用失墜行為の禁止
本人は勿論、所属する職場、公務員自体のイメージを壊さない、信用をなくさない為
第100条:守秘義務
本業の秘密が副業などを通して外部に漏れないようにする為
第101条:職務専念の義務
精神的・肉体的な疲労などにより、本業に支障が出ないようにする為
いわば、「信用を失うこと、業務に支障をきたすことは絶対にするな」と書かれています。しかし、「副業は禁止」という言葉はそれぞれの条文には一言も書いていません。「信頼を失わないこと」「社会に貢献すること」であれば、行ってもいい解釈することができます。
■国家公務員でもできる、代表的な投資方法
確かに国家公務員は会社員と違い、制限されることはいくつかありますが、投資を制限されているわけではありません。そこで、代表的な投資商品のメリットとデメリットを見ていきましょう。
(1)投資信託
投資信託とは、投資家から集めたお金を元に、運用の専門家(ファンドマネージャー)が株や債券などの複数の商品に投資・運用し、利子としてお金を受け取る金融商品のことをいいます。
①メリット
●1,000円などの少額で始められる
●自分の代わりにファンドマネージャーというプロに運用を任せられる
●複数の債券や株を買うことによって、リスク分散をし大きな損失を避けられる
②デメリット
●信託会社にお金を保有している間は、手数料や運用手数料などの信託報酬を取られる
●元本保証がないため、万が一失敗してしまう場合は、資産が大きく減る可能性がある
●金利や為替の影響を受け、価値が下がる可能性ある
(2)不動産投資
不動産投資とは、他人資本(不動産投資ローン)を利用して不動産を購入して、それを賃貸に出し、家賃収入を得る投資商品のことです。
①メリット
●完済後の家賃収入、私的年金を得られる
●融資で団体信用生命保険に加入することによって、生命保険代わりになる
●そのままで評価される金融商品に比較して、地価などで評価される不動産は、相続税などに有効的である
●管理会社に管理を任せることによって、本業が忙しい人でも持つことができる
②デメリット
●空室により、融資への返済は自己資金から出す必要がある
●返済期間中に、金利上昇リスクによって、月々の返済額が上がり、キャッシュフローが減る可能性がある
(3)株式やFXなどの投資
株式やFXは、企業の株券(株)や他国の通貨(FX)などを売買して、利益を生み出していく投資です。
①メリット
●一度知識と能力をつければ、半永久的に稼ぎ続けられる
●大きな資金を投資すれば、大金を手に入れられる可能性もある
②デメリット
●中途半端な気持ちや知識でやってしまうと、大損する可能性がある
●ある程度利益が出せるようになるまで、それ相応の勉強が必要
●値動きが早いため、1日に最低1~2回為替状況を確認する必要がある
筆者の経験上、少額だからとりあえず始めてみる、他人資本だから融資を利用するなど、軽い気持ちで始める方は、やはり失敗する確率が非常に高いです。投資するには、自分に合ったポートフォリオが最も重要で、始める前にきちんと投資目的、投資プランを決めるようにしましょう。
社会的信頼が高い国家公務員は「融資」でも有利
上記の代表的な投資商品のなかで、国家公務員に適しているのは、筆者は不動産投資だと考えています。不動産投資は数多くある投資商品のなかで、唯一、他人資本、つまり融資を活用して始められる投資です。融資を受けるには勤務先や年収など、個人の属性が重視されるという点では、国家公務員は社会的信用が高く、非常に有利になります。
国家公務員の副業は「人事院規則14-8」において詳細に規定されていますが、そのうち、不動産投資について抜粋していくと、以下の範囲内であれば、国家公務員でも不動産投資を行うことができます。
●5棟10室未満
●年間家賃収入500万円未満
ちなみに、地方公務員の場合は、在籍している地方自治体が規定している規則に従って判断することが必要です。自治体によって不動産投資が許可される規模が異なるので注意しましょう。
国会公務員にしろ、地方公務員にしろ、許可が必要な規模の不動産投資を無許可で行えば「懲戒処分」を受けることになるので、投資の規模感には十分に気を付けてください。
ある国家公務員が不動産投資を始めた理由
最後に、筆者が相談を受けた国家公務員のA様の実例を紹介します。
【A様の属性】
年齢:36歳
職業:陸上自衛隊
既婚/未婚:未婚
投資目的:将来の備え(年金対策)
相談内容:国家公務員も年金体制が一元化されて、将来年金が貰えなくなる、貰えたとしても少額になってしまうことが予想されるから、今から将来の備えを作っておきたい。
「将来の年金対策がしたい」という投資目的だったので、完済しやすくするために、月々の支出が少ない、中古ワンルームの投資用不動産を提案し、購入いただきました。今後は預貯金で繰り上げ返済をしていき、早期完済を目指しています。
まとめ
先行きの不透明感が増す日本において、「国家公務員でも安泰ではない」という意識は、国家公務員のなかでも広がりつつあるようです。民間企業に勤めている方よりも制約が多いので、規則をきちんと把握し、その範囲内で資産運用をするように心がけましょう。