上海では100ヵ所超え!世界の「コワーキングスペース」事情

ロサンゼルスを本拠とする世界最大(2018年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)が、アジア太平洋地域のテナントとビルオーナーに対して行った調査レポート「The Evolution of Co-Working: Supporting the Emergence of the New Eco-System」の日本語抄訳版から一部を抜粋し、アジア太平洋地域で劇的に変化している「最新オフィス事情」を解説します。

デジタルネイティブの増加に伴い、対応を迫られる企業

■対応ペースには業界間で格差

テクノロジーへの対応度合いは業種により異なっている。対応度が高いのは、もちろんテクノロジーの進化を牽引するTMT(IT関連・メディア・通信)セクター。また、フィンテックの台頭に対策を迫られている金融業界も対応度が高く、R&D投資をはじめ、ビジネスインキュベーション施設の設置等を積極的に推進している。

 

デジタルネイティブの消費者が増えているなか、製造業や卸・小売業にとって、「消費行動や嗜好の多様化」への対応は喫緊の課題だ。しかし、回答結果からは、必ずしも十分に対応しきれていない実態が浮かび上がる。

 

[図表1]テクノロジーのビジネスへの重要度と対応度合い
[図表1]テクノロジーのビジネスへの重要度と対応度合い

 

■スマートビルを構成するテクノロジー

ビル管理に関するさまざまなオペレーションが自動化された“スマートビル”。IoTによって、ビル管理者とテナント間のリアルタイム接続が可能になり、次世代スマートビルの開発も進行している。

 

スマートビルの最大の特徴は、エネルギー消費量と二酸化炭素の排出量の削減が可能なことである。ビルオーナーは、エネルギー管理システムで関連コストの大幅な削減ができる。また、IoTによってビル管理に関するさまざまなデータをリアルタイムで収集できるため、問題発生前の事前対処が可能になる。

 

[図表2]スマートビルを構成するテクノロジー
[図表2]スマートビルを構成するテクノロジー

 

■オフィスビルの新たな潮流

アジア太平洋地域(以下、APAC)では、スマートビルの開発は始まったばかり。ビルオーナーにとって、その開発・導入コストの負担はもちろん、それらを賃料に上乗せして、テナントに転嫁するのも容易ではない。テナントニーズに合ったスマートビルの開発するためには、テナントとビルオーナーが初期段階から協働し、テナント側の求める機能やテクノロジーを把握することが重要だろう。

 

現在、センサーを活用した屋内環境のエネルギー管理は、すでに複数のビルオーナーが採用していることが本調査で明らかとなった。しかし、持続可能なエネルギーの導入にはコストがネックとなっており、事例としてはまだ少ないのが現状だ。

 

一方、先進的なビルオーナーは、コワーキングスペースや予約可能な共用会議室を導入するなど、より柔軟に対応したオフィススペースの提供に努め、競争力を高めている。

 

[図表3]スマートビル | オフィスビルの新たな潮流
[図表3]スマートビル、オフィスビルの新たな潮流

拡大するコワーキングスペース…日本での需要は?

■APACで拡大するコワーキングスペース

コワーキングスペースの数は、世界全体で2016年に対前年比22%増加した。APAC(日本を除く)でも同時期20%程度増加したようだ。具体的には、2016年から2017年にかけて、香港、シンガポール、上海、シドニーで、新たに約50ヵ所が開業した。今現在の上海では、起業の促進を図る政策の後押しもあり、100ヵ所超が稼働している。また、インドでは、2014~2016年の間にその規模は3倍に増加した。

 

※出所:Deskmag Global Co-working Survey

 

■グローバル企業もコワーキングスペースに注目

他社とのコラボレーションやネットワークの構築を促進するコワーキングスペースのユーザーは、ベンチャー企業や個人事業主から大手グローバル企業まで広がりつつある。それに伴ってサービスの多様化が進んでおり、たとえばフィンテックなどのベンチャー企業を主要顧客とする施設では、メンターシッププログラムの実施や、資金調達サポートのためのイベント等も開催されている。

 

[図表4]コワーキングセンター数および 現地オペレーターが運営するコワーキングセンターの割合
[図表4]コワーキングセンター数および現地オペレーターが運営するコワーキングセンターの割合

 

[図表5]グローバル企業の中で、第三者が運営するタイプのオフィスを利用している/利用予定と回答した割合
[図表5]グローバル企業のなかで、第三者が運営するタイプのオフィスを利用している/利用予定と回答した割合
[図表6]オペレーターの出店戦略
[図表6]オペレーターの出店戦略
[図表7]グローバル企業が、 第三者が運営するオフィスを利用する主な理由
[図表7]グローバル企業が、第三者が運営するオフィスを利用する主な理由
 
[図表8]コワーキングスペースから生まれる新たなビジネス・エコシステム
[図表8]コワーキングスペースから生まれる新たなビジネス・エコシステム

 

■ビジネス・エコシステムのプラットフォーム

スタートアップ企業がコワーキングスペースを利用するメリットの1つは、法律家や会計士などの専門家や、ほかの企業とのネットワークを構築しやすいということだ。大企業のメリットとしては、スタートアップ企業とのつながりを通じ、斬新なアイデア、イノベーション、起業家マインドを取り入れられることが挙げられるだろう。

 

アジアの大手企業のなかには、新規事業の立ち上げにあたり、スタートアップ企業の形でコワーキングスペースを利用するケースが複数みられる。また、グローバル企業がコワーキングという場を利用し、スタートアップ企業から社員をヘッドハントする事例も多い。こうした動きを受け、人材あっせん会社がコワーキングセンターに入会するケースも散見される。

 

市場が拡大する一方で、中小のオペレーターのなかには、大手との競争が困難になると予測できるものも多く、今後数年、オペレーターの買収・合併も増えると考えられる。中期的にみると、オペレーターは、ユーザーである事業会社との関係を深める過程で、ファシリティマネジメントやオフィスデザインのほか、働く場所に関するアドバイザリーなどを提供するケースが増えるのではないだろうか。その意味で、コワーキングオペレーターは、不動産サービス業界にも大きな変革をもたらす可能性がある。

 

■日本におけるコワーキングスペース

「コワーキング」は、最近の日本の事業用不動産業界において流行語となっている。2018年には、コワーキングスペースのオペレーターである米国のWeWorkが、すでに開業したものを含め複数拠点を日本に開業し、テナント企業から注目を集めた。

 

WeWorkは、各拠点で通常のレンタルオフィスよりも2、3倍広いスペースを提供している。今後日本のマーケットにおけるコワーキングスペースの供給の大部分は、同社の積極的な事業拡大計画によって展開されていくだろう。

 

そのほかにも、リージャス(Regus)が新しく始めたサービス「SPACES」が展開する拠点も成功しており、また香港企業も東京への進出を検討している。さらに、三井不動産株式会社をはじめとした日本の大手デベロッパーやオーナーも、この動向に注目し、クライアント企業にコワーキングスペースの提供を行っている。

 

ユーザー層はより幅広くなることが予想され、スタートアップを予定している企業、起業家、IT企業に代表されるミレニアル世代のクライアントだけではなく、一般企業からの需要も増えるものと考えられる。

 

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CBRE日本法人は、不動産賃貸・売買仲介サービスにとどまらず、各種アドバイザリー機能やファシリティマネジメント(FM)などの18の幅広いサービスラインを全国規模で展開する法人向け不動産のトータル・ソリューション・プロバイダーです。CBREの前身となった生駒商事が1970年に設立されて以来、半世紀近くに亘り、日本における不動産の専門家として、全国10拠点で地域に根ざしたサービスを展開してきました。

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CBREグループ(NYSE:CBG)は、「フォーチュン500」や「S&P 500」にランクされ、ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社です(2018年の売上ベース)。全世界で90,000人を超える従業員、約480カ所以上の拠点(系列会社および提携先は除く)を有し、投資家、オキュパイアーに対し、幅広いサービスを提供しています。不動産売買・賃貸借の取引業務、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、事業用不動産ローン、不動産鑑定評価、不動産開発サービス、不動産投資マネジメント、戦略的コンサルティングを主要業務としています。

写真は、リサーチ エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。
CBREのリサーチ部門の責任者として、オフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場ならびに売買市場のリサーチ業務を統括。製鉄会社および投資銀行勤務を経て1997年から2013年まで証券アナリストとして株式リサーチ業務に従事。2000年からはJREITを中心に不動産セクターを担当。UBS証券、ゴールドマンサックス証券、マッコーリーキャピタル証券、みずほ証券を経て、2013年10月より現職。

著者紹介

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※本連載は 『BZ空間誌 2018年春季号』掲載記事掲載当時のものです。
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