前回は、投資とギャンブルの違いについて説明しました。今回は、株式投資とギャンブルの大きな違いを理解するために、「株式投資の仕組み」について見ていきます。

株を持つ=その会社の将来性に投資するということ

前回説明したように、なぜ、株式投資とギャンブルは、それほど大きな違いがあるのでしょうか。それを知るためには、まず株の意味から理解しなければなりません。株とは、簡単に言えば株式会社の持ち分です。

 

実は、すべての会社には所有者(オーナー)がいます。所有者とは、会社をつくるためにお金を出した人のことです。ですから、必ずしも社長=会社の所有者とは限りません。創業社長であれば、創業時に会社のためにお金を出しているでしょうが、二代目以降の社長は会社の所有権を持っていないことも珍しくはありません。

 

会社(事業)を起ち上げるためには、まとまった金額のお金が必要ですが、このとき出資した人たちが、出資割合に応じて会社の所有権を持ちます。例えば、資本金1000万円で会社がつくられたとしたら、500万円を出したAさんが会社の所有権を50%持ちます。300万円出したBさんが30%、200万円出したCさんが20%の所有権を持ちます。この3人が会社の所有者になります。

 

所有権は目に見えないものですから、会社の所有権を示す何らかのかたちが必要になります。出資証明書でもよいのですが、それを分かりやすく表したものが株になります。会社は1000万円の出資と引き換えに、株を100株発行します。このとき、1株の価格は10万円になります。出資金と引き換えに、Aさんは50株、Bさんは30株、Cさんは20株を受け取ります。つまり、株とは会社の所有権を示すものなのです。

 

ちなみに、会社は、この出資金の1000万円を、Aさん、Bさん、Cさんに返済する必要はありません。3人は会社の所有者、つまり身内ですから、お金を借りたわけではないのです。出資してもらったお金は会社の借金にはならず、会社は金利や返済時期を気にすることなく、好きなだけ事業にお金をつぎこむ(投資する)ことができます。

 

その代わり、会社は利益が十分に上がったときには、所有者にその分け前を配分しなければなりません。これを配当金といいます。配当金利回りは会社にもよりますが、年1~5%くらいであることが多いです。

 

つまり、株とは預金のようなものともいえます。ある会社にお金を預けて、その証拠として株券が発行されます。会社はそのお金を事業に投資して増やします。十分に増えていれば、1~5%の金利のようなものが株主の元に戻ってくるからです。もし5%の配当利回りが安定的に毎年支払われるのであれば、20年も経てば出資金を取り戻せることになります。しかし、預金と異なり、株は解約することができません。一度、出資したお金は、株主の都合で返してもらうことはできないのです。

 

その代わり、株は売買することができます。もしあなたが株(その会社の所有権)を売りたくなったときに、買いたいという人がいれば株を売買することができます。その場合の株価はお互いに納得した価格になります。つまりお互いの合意がとれていればいくらでもよいのです。株を買った人は会社の所有権のいくらかと、配当金を受け取る権利を手に入れ、株を売った人は売却代金を手に入れます。

 

もし、株の売却代金が、株を取得したときの代金(出資金額)よりも高かったとしたら、その人は株の売却益を手にすることができます。もし、低かったとしたら売却損が出たことになります。しかし、売却損があったとしても、株を所有している間に毎年、配当金をもらっていたはずなので、トータルで計算してみると利益が出ているかもしれません。

 

つまり、株には二種類の利益を得る方法があります。一つは配当金で、もう一つは売却益です。どちらも会社の業績や成長性がよければよいほど、高くなります。株を持つとは、その会社の将来性に投資することなのです。

資金のない人でも大きな事業を起こすことが可能に

株とは会社の所有権ですから、一般に企業の買収(M&A:Mergers andAcquisitions)は、株の買収によって行われます。その企業の発行済み株式の過半数を買い占めれば、その企業を単独で所有できます。なぜならば、株の過半数を持つと、株主総会における主導権を握ることになって、実質的にその企業を動かすことができるからです。

 

この株式会社の仕組みは、人類の発明の中でも、お金に次いで、経済成長に大きく貢献した発明だといっていいかもしれません。株式の仕組みがつくられたことによって、お金を持っていない人でも投資家を見つけることで大きな事業を起こすことが可能になりましたし、投資家もまた、合理的なかたちで、出資金に見合う利益を受け取ることができるようになったからです。

 

ちなみに、世界初の株式会社は、1602年にオランダで設立された東インド会社だといわれています。当時、東インド会社は、インドや東南アジアとヨーロッパを結ぶ貿易を行っていましたが、船を造ったり、船員を雇ったりするのに多くのお金が必要だったので、株式を発行して資金を多くの人から集めたのです。

 

もともとインド貿易のための船の建造は、貴族がパトロンになって行っていました。しかし、嵐で船が転覆すると出資金をすべて失ってしまうなど、リスクが大きいために、だんだんと一人の貴族だけで出資を続けることが難しくなってきました。そこで、株式によって多くの貴族から少しずつお金を集める方法が考え出されたのです。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

仮に今、あなたに1000万円の預金があるとしましょう。安倍内閣が掲げるインフレ目標2%が今後毎年達成された場合、その預金の価値は毎年2%、つまり20万円ずつ目減りしていくことになります。預金の金利はもちろんつきますが、現…

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