時代ごとに変化してきた不動産投資
不動産投資について、どのように情報を得て、どのような投資プランを検討していますか? 本を片手に、ネットの情報を頼りに、セミナーを受講して、友人や上司の紹介で…など、様々な方法で情報を得て、検討しているのではないでしょうか。
人によって合う・合わないがあり、正解・不正解はありませんが、正しい情報を平等に取り入れることが重要です。なぜならば、不動産投資は時代によって手法や流行があるからです。
たとえば、本の内容が古かったら、今の時代にはマッチしません。また、不動産投資の成功者が語るセミナーで、この人みたいになりたいと思ったところで、同じことができる時代は終わっていることも多々あります。つまり、不動産投資で成功するには最新の情報を知ることが大切なのです。
■今までの不動産投資市場の流れ
昨今、「不動産投資」とよく耳にするようになりましたが、もちろん何十年も前から投資を行っている人は大勢います。そんななか、時代によって方法や流行は変わっていきます。まず不動産投資の時代の流れをみてみましょう。
(1)バブル崩壊後~1990年代の不動産投資
昭和から平成の初めのころの不動産投資は、現在のようにインターネットが発達してない時代で、不動産投資会社による電話営業で顧客に押し売りするようなスタイルが横行していた時代でした。
当時の物件は12m2くらいの風呂・トイレが一緒の狭いワンルームが中心。銀行の貸し出し金利は3%以上(バブル期は8.5%以上)、ローンを30年(現在は45年ローンもある)組み、月々の持ち出しは2万円以上というのが一般的。不動産投資会社は「節税」「売却益」をメリットとして営業をしていました。
下記(図表1)を見ればわかる通り、バブル期といわれている80年代後半からマンション価格は急騰し、90年代には新築マンションで1億後半の高値もつきました。それと共に年収倍率もなんと18.12倍まで拡大したという背景がありました。不動産価格が上昇していたので、物件の転売による売却益目的(キャピタルゲイン)での利益儲けがメインだったのです。
バブル崩壊後、20m2くらいの風呂・トイレ別の1Kマンションタイプが主流になりました。しかし、金利や融資期間が変わっても投資手法に大きな変化はなく、金利が高いため融資を活用した場合、キャッシュフローが大きく赤字になる物件が多くありました。バブル期前後と現在で、不動産投資のキャッシュフローはどう違うのか、下記のシュミレーション(図表2)を見てください。
このように、バブル期前後の収支は今よりもマイナス幅が大きいですが、「融資を活用すれば、団体信用生命保険に加入できるから生命保険代わりになる」「不動産取得が赤字となるから、給与所得と損益通算することで、サラリーマンでも節税効果がある」といって投資用不動産を販売していたのです。
(2)2000年代の不動産投資
2000年代になると、多くの金融機関がワンルームマンション投資で業界に進出してきました。それと同時に融資への審査基準が少し緩くなり、会社員なら、会社の信用を活用してほとんどの方が融資を組めるようになったのです。とはいえ、貸出金利は4.5%を超え、返済比率(収入に対する返済の割合)を無視したような融資も横行し、多くの債務者が苦しめられた時代でもありました。
一方で現在に比べて都心の不動産価格がバブル期から見て底をついた時代でもあったので、当時、ワンルームマンションを購入して、近年売却をすることにより、売却益(キャピタルゲイン)を得た人は多くいます。
その後、ITバブル、ミニバブルと呼ばれる時代には都心のマンション価格は再び高騰。ワンルームマンション投資が盛り上がるなか、新築アパート投資が知られるようになったのも、この時代でした。またインターネットの普及で情報をWEBで簡単に探せるようになり、一般の方もで「不動産投資」の情報を目にする機会が増え、一気に浸透した時期といえます。
ところがリーマンショックの影響で外資系金融機関が撤退し、その影響で他の金融機関も不動産融資が厳しくなり、不動産の価格が下がり始めました。さらに東日本大震災の影響などもあり、木造よりもRC(鉄筋コンクリート造)のほうがよいのではないか、という議論が交わされるようになりました。
不動産投資に関しては「マンション派VS.アパート派」という図式が主流になり、それぞれの会社がそれぞれの主張を展開するようになりました。「マンション投資は月々マイナス収支なのに対して、アパート経営は月々プラス収支でかつ土地が残る」と対比されることがありました。
(3)2010年代の不動産投資
東京でのオリンピック開催が決まったあと東京都心部を中心に価格高騰が始まり、ワンルームマンション投資は、マイナス金利実施により超低金利で融資を受けられるようになりました。「価格が高騰したら売却して売却益を出しましょう」という、キャピタルゲインをメインにした販売手法が主流になりました。
一方、一棟収益不動産に関しては「まだまだ地方は安い」という謳い文句で地方の物件に人気が集まりました。その後、「空室改ざん」「家賃改ざん」「年収改ざん」「預貯金改ざん」など、違法な手法が明るみになり、不祥事ニュースが続きました。このような大きなリスクを顧客に背負わせる悪徳手法を多くの不動産会社がやり続けて、多くの犠牲者を出す結果となってしまったのです。
「旅館業としての不動産投資」に注目が集まる
■現在の不動産市況と不動産投資
今から不動産投資を始める人は、時代も背景も、融資条件も異なるため、過去の手法を真似することはできず、過去の成功者の話は過去のものでしかありません。ここで重要なのは、今の時代にはどのような不動産投資がよいのか、果たして不動産投資自体がよいものなのかを考えることです。
(1)マンション価格の動向
①中古マンション価格の動向
下記(図表3)の直近10年間の不動産価格指数推移のデータを見ればわかりますが、2013年12月以後ほぼ右肩上がりであることがわかります。
2018年2月に判明した金融機関と不動産投資会社とのトラブルは、不動産価格全体にも影響を及ぼし、地方収益物件の投資も動きは鈍くなりました。融資が厳しい時代は、不動産の価格は下がり始めます。買える方が少なくなると、価格を下げざるを得ないからです。そういった意味ではキャッシュを持っている人は「買い時」だといえます。
②新築マンション価格の動向
一方、新築マンションの価格は、図表4の通り、2015年~2016年に少し下がったものの、その後すぐ価格の上昇に転じたことがわかります。
(2)家賃相場の動向
下記グラフ(図表5)を見ればわかりますが、2017年3月あたりから、家賃相場が上昇しはじめたことがわかります。 また、1部屋もしくは2部屋のひとり暮らしタイプの部屋の家賃よりも、ファミリータイプの家賃相場が少し不安定であることがわかります。
(3)オリンピックがもたらす不動産投資市場への影響は?
時代はオリンピック効果で海外からの観光客も増え、政府は、2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人の訪日観光客を獲得するという目標を掲げています。過去のオリンピックでは、開催後も観光客は上昇する傾向にありました。そこで注目を集めているのが、ホテルや旅館といった宿泊施設。不動産投資においても、旅館業を見据えたものが注目を集めています。旅館業は東京だけではなく、京都や大阪、福岡などといった地方の中核都市でも有効で、利回りも通常の賃貸経営よりも高くなるケースが多くなっています。
まとめ
昨今、ひと口に「不動産投資」といっても様々なバリエーションがあります。 新築一棟、新築区分マンション、中古一棟、中古マンション、駐車場経営、旅館業としての投資…これらを比較するには、多くのセミナーに参加したり、本を参考にしたりすればいいでしょう。 多角的に不動産投資を理解し、最新情報を基に、自分に合った不動産投資をすることが一番重要なのです。