人気のテーマ型投信…アクティブ運用の手数料は高すぎるのか?

特定のテーマに沿った銘柄に投資を行う「テーマ型」投資信託。対象がわかりやすく、投資家からの人気を集めている一方で、採用している「アクティブ運用」の手数料が高すぎるとの声も少なくない。本記事では、アクティブ運用における手数料の妥当性について考察する。

テーマ型投信が生みだした「アクティブ運用」への誤解

本連載第3回(関連記事『意外とリスクも大きい?「インデックス投資」が抱える問題点』参照)において「インデックス投資」が抱える問題点について述べた。今回は、多くのインデックス投資家の間でいわれている「アクティブ運用は手数料が高すぎる」「アクティブ運用はインデックス投資に勝てない」という意見について、筆者の考えを述べていきたい。

 

まず、「日米の投資信託の資金流入上位30投信」のここ10年の変化について見てみよう。

 

[図表1]日米資金流入上位30投信の変化 出所:モーニングスター
[図表1]日米資金流入上位30投信の変化
出所:モーニングスター株式会社

 

上記図表1からもわかるように、日本で「アクティブ型」というと、真っ先に「テーマ型」(昨年でいえば、ロボット、5G、EV、フィンテック等)を思い浮かべる人が多い。テーマ型とは、世間で話題のテーマと関連した銘柄に的を絞った投資信託のことで、依然として資金流入の半数以上を占めている。

 

 

この「テーマ型」はわかりやすく、投資家と販売員の双方にとって夢を想像しやすいため、日本の投資家からの人気は高い。一方で、米国ではまったくといっていいほど人気がない。投資理論的に「運用実績がない」「旬のテーマに集中投資(分散投資がされてない)」「テーマが長期的に発展するか、勝ち組企業がどれかは不透明」「すでに割高」など多くの問題点があげられるからだ(関連記事『日本で売れている「テーマ型」投資信託…欧米では不人気な理由』参照)。

 

以上のように、テーマ型の人気が高い日本では、アクティブ型=「テーマ型」を連想する投資家も多い。その点も、冒頭のような「アクティブ運用は手数料が高すぎる」「アクティブ運用はインデックス投資に勝てない」といった誤解を生むきっかけになったのではないかと筆者は考える。

 

当然だが、アクティブ型は「テーマ型」だけではない。長期的に株価インデックスの上昇が続く米国において、アクティブ型のなかでも「対ベンチマーク・アクティブ型」が半数以上を占めている。「幅広く投資するアクティブ型」、すなわち企業や価格分析により、上昇が期待できる銘柄を多めに買い、下落すると考えられる銘柄を少なく買うことで、インデックス等のベンチマークを上回ることを目指す運用スタイルである。

 

確かに、インデックス投資家から見れば、アクティブ運用は「高額な信託報酬」に映るかもしれない。しかし、日経平均等、価格の高い株に過度に偏っているインデックスやTOPIX等、ある意味成長余地の少ない大型株インデックスに、いくら信託報酬が低いからといって、投資を続けるのはベストな選択であろうか?

 

下記図表2は、日本株式に投資する投資信託の直近3年間の年率リターンと、年率の信託報酬を比較したものである(なお、この期間のインデックスの年率リターンは、TOPIXで5.3%、日経平均では7.9%となっている)。

 

[図表2]日本株式に投資する投資信託の直近3年間の年率リターンと、年率の信託報酬の比較 2019年1月末時点で3年以上の運用実績がある日本株式に投資しているファンド(595件) リターンは3年間(2016年2月~2019年1月)の年率 出所:モーニングスター株式会社、ブルームバーグのデータをオリックス銀行株式会社で加工
[図表2]日本株式に投資する投資信託の直近3年間の年率リターンと、年率の信託報酬の比較
2019年1月末時点で3年以上の運用実績がある日本株式に投資しているファンド(595件)
リターンは3年間(2016年2月~2019年1月)の年率
出所:モーニングスター株式会社、ブルームバーグのデータをオリックス銀行株式会社で加工

 

上記図表2を見ると、信託報酬が1%以下であるファンドの多くは「インデックス・ファンド」だが、1%を超える信託報酬をとる「アクティブ・ファンド」のなかには、インデックスをはるかに上回るリターンを出しているファンドが多数存在していることがわかる。

 

とはいえ、インデックス投資家のなかには、信託報酬が1%を超えるファンドは高すぎると考える人もいるであろう。

 

では、以下のAとBでは、どちらの年間リターンが多いだろうか。

 

A:ファンドの基準価額が年間10%上昇、信託報酬年1%

B:ファンドの基準価額が年間10.5%上昇、信託報酬年2%

 

複雑な計算が必要になり、即答しかねる人も多いのではないだろうか。ところが、正解は簡単だ。基準価額は、信託報酬等の運用管理費用を控除したあとのものであるため、年間のリターンを比較するのに、信託報酬は関係ない。単純に、基準価格の上昇率から判断すればよいのだ。したがって、年間リターンが多いのはBである。

 

筆者の意見としては、目先の信託報酬の多寡よりも、リターンの確保を図るために「自分が何に投資しているか」という広い視野で見る投資戦略のほうが、はるかに重要であると考える。信託報酬が多少安いからといって、安易に値嵩株や大型株中心のインデックス投資がベストと考えるのは、いかがなものであろうか。

「旬」や「安い信託報酬」以外も考慮した投資戦略を

日本のアクティブ・ファンドの中心である「テーマ型アクティブ」は、旬のテーマ型で新規設定ファンドも多い。そのため、販売会社からすすめられて、個人投資家が買うとなった際に、3年の運用実績もないものがほとんどである。加えて、年間の投信保有期間に応じてかかる信託報酬以外に、購入したときに発生する「購入時手数料」が2~3%かかるファンドも多い。

 

 

筆者の経験上、幅広く投資する「対ベンチマーク・アクティブ型」で、運用期間が3年以上あり、インデックス等のベンチマークを上回っているファンド、しかも購入時手数料が低額や無料の投資信託を、販売会社で推奨されることは残念ながらあまりない。

 

その証拠に、そのようなファンドの販売数と、販売会社の運用資産残高とは相関関係がなく、資金流入額ランキングに入ってくることもあまりない。このような状況からも、日本の投資信託はまだまだ「投資家の長期利益」よりも「販売会社の短期的な手数料」が優先されている気がする。

 

以上のように、多くの投資家は、旬のテーマへの集中投資で運用実績が乏しい「テーマ型アクティブ」か、安い信託報酬ばかりに目がいってしまい、投資内容は二の次にした「インデックス投資」かのどちらかを選択しがちである。「対ベンチマーク・アクティブ型」のなかから、良好な長期運用実績を有する、自分が納得できる投資戦略を選ぶ、あるいはそういうファンドを中心に扱っている販売会社を選ぶ、このような考え方も投資家としては賢い選択であると筆者は思う。

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

オリックス銀行株式会社 役員補佐
資産運用営業部 部長 

<WEBサイト>

1993年 ヘッジファンド会社コモディティーズコーポレーション(USA)より、CTA/クオンツトレーディングを学ぶ。
1995年 オリックスコモディティーズ社にてCTA/マルチアセットのポートフォリオマネジメント業務を開始。
2007年 オリックスインベストメント社のチーフポートフォリオマネージャー。米国のファンドオブファンズの資金、日本の上場企業年金の資金等を運用。
2013年 投資顧問会社 Robeco(オランダ)出向 Investment Officer
2015年 よりオリックス銀行勤務

著者紹介

連載元ヘッジファンドマネジャーが明かす「投資信託」の真実

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