人口が減少に転じ、見通しが混迷している日本の不動産投資市場。東京であっても「勝てるエリア」「負けるエリア」と地域差が明確になっています。今後、不動産投資で成功するには、投資エリアを十分に把握することが、ますます重要になってくるでしょう。本連載は、毎回東京23区内の1つの駅とその周辺を取り上げ、不動産投資の観点で地域のポテンシャルを分析していきます。今回は、江東区・東陽町を紹介します。

工場跡地にオフィスが林立した新しい街

「東陽町」駅は東京の東側、江東区に存する東京メトロ東西線の駅です。江東区というと”下町”というイメージがありますが、東陽町は江東区における行政・ビジネスの中心地として栄えており、公共機関やオフィスの集まるオフィス街になっています。

 

東陽町も元々は下町らしい工場の多い街並みでしたが、工場が23区外に移転していき、その跡地を埋める形でオフィス街として発達してきました。オフィス街として整備されたため、路地がとても広く、公園や緑も多いエリアです。比較的新しい街といえるでしょう。

 

駅周辺は基本的にはオフィス街です。江東区の中心というだけあり、駅周辺には竹中工務店 東京本店、明治安田生命 東陽町店、ダイエー東京本社など、数多くの企業の本社や支社があります。大通り沿いにオフィスビルが林立し、東京駅まで電車で10分という利便性から大型のマンションや都営住宅も見られます。駅周辺のお店はチェーン展開している飲食店、銀行、100円ショップなど、ビジネス街らしい街並みになっています。

 

大通りから少し入った路地には戸建て、駅から離れたところには小規模ながら商店街があり、下町らしさも見せてくれます。また、江東区の中心というだけあり、区役所や保健所、免許センターなどの公共機関も集中しています。

 

駅前にスーパーがないのが難点といえますが、駅から5分も歩けば西友やオーケーストアがあり、場所を選べば不便さは感じません。また、徒歩圏内にオフィス・ホテル・商業施設3つの機能を有する複合都市「東京イースト21」、隣駅の「木場」「南砂町」にはショッピングモールがあるため、江東区の中でも生活利便性は高いエリアといえます。

写真左より、大通り沿いにはオフィスビルとマンションが建ち並ぶ/運河沿いには緑道が整備され、緑地環境も整っている/行政・ビジネスの中心地であるため、区役所などの公共機関も集積
写真左より、大通り沿いにはオフィスビルとマンションが建ち並ぶ/運河沿いには緑道が整備され、緑地環境も整っている/行政・ビジネスの中心地であるため、区役所などの公共機関も集積
 

通勤、出張、休日とあらゆるシーンに対応できる交通網!

都心まで電車で10分という好立地
[図表1]都心まで電車で10分という好立地
 

「東陽町」を通る東京メトロ東西線は、千葉方面から東京都心を結ぶ通勤路線として機能しています。東西線は副都心線を除いた東京メトロ線への乗り継ぎのできる非常に便利な路線です。「東陽町」からは有名企業や百貨店の集まる「日本橋」まで3駅、東京駅が徒歩圏内の「大手町」まで約10分。「大手町」からは東京メトロ丸ノ内線・千代田線・半蔵門線、都営三田線が通っており、一回の乗り換えで都内各地へ快適なアクセスが可能です。

 

また、東京メトロ北西部の新宿や渋谷などへも1回の乗り換えで移動できるほか、主要な道路も通っているためバスでの交通網も充実しています。羽田空港へもリムジンバスで30分と、出張通勤や出張、休日の移動も非常に快適なエリアです。ファミリー層から単身者まで、幅広い世代が目的に合わせて交通手段を選ぶことができる、利便性が高いエリアといえます。

職住近接の実現で単身者世帯の需要が増加

「東陽町」駅周辺の賃貸市場

東陽町駅の賃貸市場を分析していきます。まずは賃料相場と築年数の比較です(図表2)。23区平均と比較すると、賃料相場は23区の3,339円/m2に対し、東陽町は3,104円/m2。平米単価の平均値、中央値、最頻値ともに23区平均よりも低いエリアです。都心への交通利便性を考えると割安感のあるエリアです。

 

次に重回帰分析で「築年数」「徒歩分数」「面積」の3つの変数が賃料にどの程度影響を与えているかを分析します。「●徒歩・築年・面積による賃料の重回帰分析結果一覧」(図表2)を見てみると、東陽町駅の単身者物件の月額賃料は「d.切片」の74,220円からスタートし、徒歩1分ごとに「a.徒歩」の725円ずつ、築年数1年ごとに「b.築年」の1,060円ずつ値下がり、面積1m2ごとに「c.面積」の1,350円ずつ値上がることがわかります。

 

「賃料に対する影響割合の比較」(図表2)から東陽町駅の賃貸市場の傾向を分析すると、東陽町は築年による賃料下落「b.築年/d.切片」は23区平均と同水準と安定しています。また、標準偏差の割合「e.標準偏差/d.切片」の割合は23区平均より低く、賃料の変動リスクは低いエリアといえます。

 

[図表2] 東陽町の賃貸市場分析
[図表2] 東陽町の賃貸市場分析
 

[図表3]東陽町の築年数別平米賃料の分布図  [図表2、3共通]※リズムマンションDBより作成(データは2014年3月末日現在のデータです)※賃料単価は平均値であり、平米数を乗算した価格が必ずしも相場と一致するものではありません※重回帰分析は築10~30年、16㎡以上30㎡未満の物件から算出しています

[図表3]東陽町の築年数別平米賃料の分布図

[図表2、3共通]※リズムマンションDBより作成(データは2014年3月末日現在のデータです)※賃料単価は平均値であり、平米数を乗算した価格が必ずしも相場と一致するものではありません※重回帰分析は築10~30年、16㎡以上30㎡未満の物件から算出しています

 

「東陽町」の居住者特性

「東陽町」の居住者特性を見ていきます。まずは単身者世帯の比較(図表4、5)です。東京都ならびに江東区の人口のうち単身者世帯の割合をみると、東京都全体で約47%、江東区で約44%です。東京都と比較して単身者割合は低く、ファミリー層の多いエリアです。

 

一方、東陽町の単身者割合(図表5)は46%と23区と同水準。人口数でみると2010年から2015年で約3,000人増加しており、そのほとんどが単身者の増加です。職住隣接の実現と、幅広い交通網から単身者需要の高まりが伺えます。

 

対象エリア内の居住者の年齢構成(図表6)をみると30代と40代が多く、全体の34%を占めます。落ち着いた住環境のよさと都心への交通利便性の両立が30~40代の単身者の支持を集める理由でしょう。

 

[図表4]地域別単身世帯の比較
[図表4]地域別単身世帯の比較
 
[図表5]地域別1人世帯と2人以上世帯の割合
[図表5]地域別1人世帯と2人以上世帯の割合
 
[図表6]地域別 男女・年齢構成比
[図表6]地域別 男女・年齢構成比

顕著な単身者需要。2035年ごろまで増加の予測

借家数(供給)、人口(需要)ともに伸びる江東区

「東陽町」の所在する江東区は東京23区の東部に位置し、隅田川と荒川に挟まれ東京湾に面しています。「亀戸」「錦糸町」エリアをあわせて副都心に指定されており、鶴亀の亀戸天神社、「錦糸町」南側は遊興地域として発展しています。「東陽町」は江東区の行政の中心地として栄えており、区役所や江東運転免許証などの公共機関も多く存在しているエリアです。

 

住宅・土地統計調査「借家数の変化」(図表7)によると、2008年から5年の間に23区全体で約190千戸の賃貸物件が増え、同調査による「空き家の変化」(図表8)を見ると、空き家数も5年の間で全体的に増えています。江東区を見てみると、供給にあたる借家数は5年の間に約17.6%増えているのに対し、空き家数は約93.2%増えています。賃貸住宅の供給が高まるなかで、いかに居住者のニーズを捕まえるかが求められるエリアといえます。

 

エリア別に貸家の住宅着工数(図表9)を見ると、東京都と23区の各年の増減は相関していることがグラフから読み取ることができます。江東区の供給傾向も東京都や23区の増減と似たような動きを見せおり、2000年ごろから着工数の増加が見られ、2006年以降は低い水準で抑えられていることがわかります。2009年以降はまた増加傾向がうかがえ、2016年も東京都と同じく増加傾向と予測できます。

 

[図表7]地域別借家数の推移
[図表7]地域別借家数の推移

 

[図表8]地域別空き家になっている賃貸住宅数の推移
[図表8]地域別空き家になっている賃貸住宅数の推移

 

[図表9]地域別住宅着工数の推移
[図表9]地域別住宅着工数の推移

 

人口の推移を見てみると、江東区の人口は年々増加していることがわかります。東京都によると江東区の人口は2035年以降に徐々に減少を始めますが、2040年の段階でも2005年人口比で約135%と高い水準を保っています。また、江東区の単身者数も2035年まで増加傾向と予測されています。

 

東陽町においては2010年から2015年で単身者数・率ともに増加しており、今後も単身者需要は一定数見込めるといえます。

 

[図表10]江東区の人口推移
[図表10]江東区の人口推移
 

 まとめ 

「東陽町」駅は東京の東側、江東区に存する東京メトロ東西線の駅です。東陽町も元々は江東区の下町らしい工場の多い街並みでしたが、工場が23区外に移転していき、その跡地を埋める形でオフィス街として発達してきました。駅周辺は基本的にはオフィス街で、江東区における行政・ビジネスの中心地として栄えており、有名企業や公共機関の集まるオフィス街になっています。

 

不動産市場をみると、築年による下落傾向、下落リスクは23区と同水準と低い傾向です。一方、供給にあたる住宅着工数は東京都全体で増加しており、江東区も増加傾向と予測されます。東陽町においては開発は一段落したものの、まだ定期的に供給はされているため、油断はできません。

 

今後の動向に注意が必要なエリアといえますが、その利便性から単身者需要の高まっているエリアのため、大きな変動はないと推測されます。

 

 

本連載は、リズム株式会社が発信する「エリアレポート」の記事を抜粋・編集したものです。

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