本連載は、毎回東京23区内の1つの駅とその周辺を取り上げ、不動産投資の観点で地域のポテンシャルを分析していきます。今回は、豊島区・「池袋」駅。

池袋まで徒歩圏内でありながら、静かな住環境

「要町」駅は東京の北側、豊島区に位置しています。要町は池袋まで1駅と歩いていける距離ながら、繁華街がなく治安も良い、一人暮らしでも暮らしやすいエリアです。

 

駅を出るとまず要町通りという大きな通りに出ます。通り沿いにはスーパーやコンビニ、飲食店、中高層のマンションが立ち並びます。交通量は多いですが、再開発された道路幅が広く開放感があります。駅前に「要町病院」もあり、平日夜間診療も行っているため万が一のときも安心です。

 

大通りから一本入ったところには「池袋」の隣であるかを忘れてしまうぐらい落ち着いた住宅街が広がっています。また、要町駅から北に伸びる「えびす通り商店街」は狭い曲がりくねった道路が入り組んだ昔ながらの商店街です。飲食店や薬局、八百屋などがぽつぽつとある小さな商店街ですが、昔からの商店や個人経営の個性的な飲食店も多く、人情味のある商店街です。

 

「要町」は都心の利便性と住環境の2つを兼ね備えたところに住みたいという人におすすめの街です。

 

写真左より、新しいお店も増えてきた昔ながらの「えびす通り商店街」/老朽化した商店を改装オープンしたコミュニティスペース「西池袋マート」/「立教大学」
「要町」駅周辺の風景 写真左より、新しいお店も増えてきた昔ながらの「えびす通り商店街」/老朽化した商店を改装オープンしたコミュニティスペース「西池袋マート」/「立教大学」

 

◆「池袋」も徒歩圏内! 交通環境にも恵まれた「要町」

[図表1]「要町」のアクセス

 

「要町」駅は有楽町線、副都心線の2駅が通っており、ターミナル駅の「池袋」から1駅のところにあります。池袋を起点に西は両路線とも和光(埼玉県)まで並走しており、池袋から有楽町線は東京の東側へ、副都心線は渋谷を通って直通東横線で神奈川方面までを結びます。

 

一番のポイントは「池袋」の隣なので池袋まで歩いていけること。夜遅くなっても歩いて帰れる利便性から単身世帯に人気があります。また、都内のターミナルを結ぶ副都心線を使うことで乗り換えなしで「新宿三丁目」まで11分、「渋谷」まで18分と素早いアクセスが可能です。有楽町線を使えば「永田町」「有楽町」といった、オフィス・ショッピングエリアにも乗り換えなしで行くことが可能です。

 

このように、都内の多方面に簡単にアクセスできる「要町」は、居住環境と利便性の両方を兼ね備えた、都会で働く単身者にとって最適なエリアといえるでしょう。

「築10~20年のマンション」が多い賃貸市場

◆「要町」駅周辺の賃貸市場

「要町」駅の賃貸市場を分析していきます。まずは賃料相場と築年数の比較(図表2)です。賃料相場は23区の3,339円/㎡よりやや低めな3,287円/㎡。池袋の隣ながら割安な賃料相場です。築年数の比較を見ると平均築年数は同程度ながら、最頻値は23区平均より低い値です。23区平均と比較して築10~20年の中古マンションの多いエリアであることがわかります。

 

次に重回帰分析で「築年数」「徒歩分数」「面積」の3つの変数が賃料にどの程度影響を与えているかを分析します。「■徒歩・築年・面積による賃料の重回帰分析結果一覧」(図表4)を見てみると、要町駅の単身者物件の月額賃料は「d.切片」の57,605円からスタートし、徒歩1分ごとに「a.徒歩」の791円ずつ値下がり、築年数1年ごとに「b.築年」の1,017円ずつ値下がり、面積1㎡ごとに「c.面積」の2,026円ずつ値上がることがわかります。

 

「賃料に対する影響割合の比較」(図表4)から要町駅の賃貸市場の傾向を分析すると、築年による影響割合「b.築年/d.切片」、標準偏差の割合「e.標準偏差/d.切片」は23区平均よりやや高い値です。マンション開発の多いエリアに見られる特徴で、リノベーションでの賃料改善効果の期待できる市場です。

 

[図表2]要町の賃貸市場分析

 

[図表3]要町の築年数別平米賃料の分布図

 

[図表2~4共通] ※リズムマンションDBより作成(データは2015年12月末日現在のデータです) ※賃料単価は平均値であり、平米数を乗算した価格が必ずしも相場と一致するものではありません。 ※重回帰分析は築10~30年、16㎡以上30㎡未満の物件から算出しています。
[図表4]要町の徒歩・築年・面積による賃料の重回帰分析結果一覧 [図表2~4共通]
※リズムマンションDBより作成(データは2015年12月末日現在のデータです)
※賃料単価は平均値であり、平米数を乗算した価格が必ずしも相場と一致するものではありません。
※重回帰分析は築10~30年、16㎡以上30㎡未満の物件から算出しています。

 

◆「要町」の居住者特性

要町の居住者特性を見ていきます。まずは単身者世帯の比較(図表5)です。東京都ならびに豊島区の人口のうち単身者世帯の割合をみると、東京都全体で約47%、豊島区で約63%です。要町エリアは近隣に大学や専門学校が多くあるため一人暮らしニーズが高く、単身世帯は65%と高めです。また、2010年から2015年で世田谷区の単身者世帯は約6.3%ほど増加し、要町においても3.7%増加しています。

 

年齢構成比グラフ(図表6)を見ると、要町はやや男性のほうが多く、20~30代の比率で約4割を占めます。近隣に学校が多く、池袋至近という立地から、若い世代に人気のエリアとなっています。

 

[図表5]地域別1人世帯と2人以上世帯の割合

 

[図表6]地域別男女・年齢構成比

将来的にも安定した「単身者ニーズ」が見込める

◆借家数(供給)、人口(需要)ともに伸びる豊島区

「要町」駅の所在する豊島区は東京23区の北西部に位置しています。「池袋」のような華やかな繁華街や高級住宅地として有名な「目白」など、様々な特性の街が点在しています。

 

住宅・土地統計調査「借家数の変化」(図表7)によると、2008年から5年の間に23区全体で約190千戸の賃貸物件が増え、同調査による「空き家の変化」(図表8)を見ると、空き家数も5年の間で全体的に増えています。豊島区を見てみると、供給にあたる借家数は5年の間に約16.2%増えているのに対し、空き家数は約52.6%増えています。賃貸住宅の供給が高まるなかで、いかに居住者のニーズを捕まえるかが求められるエリアといえます。

 

エリア別に貸家の住宅着工数(図表9)を見ると、東京都と23区の各年の増減は相関していることがグラフから読み取ることができます。豊島区の供給傾向も東京都や 23区の増減と似たような動きを見せおり、2000年頃から着工数の増加し、2006年以降は低い水準で抑えられていることがわかります。2009年以降はまた増加傾向が伺えますが、2016年以降は増加傾向が抑えられており徐々に減少サイクルに入ると予測されます。要町においても大規模な開発は予定されておらず、傾向に大きな差はないでしょう。

 

人口の推移(図表10)を見てみると、年1%程度の割合で毎年増加を続けています。豊島区は人口増加率は平均的で、2005年からの平均増加率で9位です。また、東京都によると豊島区の人口は2025年以降に徐々に減少を始めますが、2040年の段階でも135%と高い水準を保っています。また、豊島区の単身者数も2030年まで増加傾向と予測されており、要町も2010年から単身者数は増加しています。劇的な増加は期待できませんが、今後も安定した需要のあるエリアでしょう。

 

[図表7]地域別借家数の推移

 

[図表8]地域別空き家になっている賃貸住宅数の推移

 

[図表9]地域別住宅着工数の推移

 

[図表10]豊島区の人口推移

 

 ◆まとめ 

「要町」駅は東京の北側、豊島区に位置しており、池袋まで1駅と歩いていける距離ながら、繁華街がなく治安も良い、一人暮らしでも暮らしやすいエリアです。

 

駅前の要町通りにはスーパーやコンビニ、飲食店、中高層のマンションが立ち並びます。交通量は多いですが、再開発された道路幅が広く開放感があります。大通りから一本入ったところには「池袋」の隣であるかを忘れてしまうぐらい落ち着いた住宅街が広がっています。

 

また、要町駅から北に伸びる「えびす通り商店街」は狭い曲がりくねった道路が入り組んだ商店街です。飲食店や薬局、八百屋などがぽつぽつとある小さな商店街ですが、昔からの商店や個人経営の個性的な飲食店も多く、人情味のある商店街です。

 

賃貸市場に目を向けると、築年による賃料下落と賃料のばらつきは23区平均よりも高い割合。リノベーションによる賃料改善効果の期待できる市場と分析できます。一方、人口総数、単身者世帯の劇的な増加は期待できませんが、今後も安定した需要のあるエリアでしょう。

 

本連載は、リズム株式会社が発信する「エリアレポート」の記事を抜粋・編集したものです。

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