「建物の構造」は、不動産投資の収益計画に直結する
医師だからこそ高いレバレッジ効果が見込め、節税効果も高い不動産運用。では、いざ物件を購入しようと考えたときに、どのような物件を選べばより効率的に運用できるのでしょうか? せっかく不動産運用を始めるのですから、不動産運用についての基本的な知識を本連載で確認していきたいと思います。
まず、収益を生み出す建物の種類、おもに構造面の違いからおさえてください。なぜならこの建物の構造こそが、不動産運用のすべての基点であり、収益計画に直結するからです。
建物の構造には、おもに次のようなものがあります。
①木造アパート
②鉄骨造アパート
③RC(鉄筋コンクリート)造マンション
(※それぞれにおいて、さらに新築/中古という選択肢がある)
どれを選ぶかは、予算、物件の立地などの条件によってケース・バイ・ケース。一概にこれが良いとはいえません。それぞれの特徴を以下に示します。ただし、この後説明しますが、医師の皆さんが不動産運用を始めるに際しては、新築、中古を問わず木造は避けた方がよいです。
【①木造アパートの特徴】
木造の建築コスト(初期費用)は安いのですが、鉄骨やコンクリートに比べて、劣化が早いため、ランニングコスト、つまりメンテナンス費用がかかりがちです。「減価償却」の期間の基準となる法定耐用年数では、RC造は47年に対して、重量鉄骨造は34年、木造は22年と、木造は圧倒的に短いのです。
木造の耐久性が劣る部分として、おもな部位は外壁と屋根の防水処理でしょう。木造は、基本的に構造体が地震などの力に対して、ある程度揺れることで損傷を防ぐ柔構造なのでこれらの劣化が早くなるのです。
いずれも数年ごとに修繕工事が必要となり、その都度少なからず費用がかかります。そのほかにも思わぬ部位が傷んで、収支計画が狂ってしまうことが少なからずあります。
もし、このような修繕を怠ると、
修繕をせず放置
↓
劣化が進み家賃を下げざるを得ない
↓
同時に入居者の不満もたまり空室率が上がる
↓
収入が減少し修繕したくてもできなくなる
という悪循環が発生します。さらに考えられるリスクとしては、
●家賃を下げたことによってモラルの低い入居者が集まるようになり、家賃滞納のリスクが増大
●大きな地震などの災害が発生したとき、通常では落下しない設備が落ち、入居者が怪我をしたことに対して損害賠償
といったことも想定できなくはありません。
【②鉄骨造/③RC(鉄筋コンクリート)造の特徴】
一方で鉄骨やRC造は、地震力に対して変形しない剛構造です。外壁や屋上の防水処理が木造ほど早く劣化することは基本的にありません。またRC造マンションの外壁の多くは、タイル貼りなので基本的にメンテナンスフリーです。
ただし、鉄骨造、RC造問わず、1981年以降に完成した物件を選ぶようにしましょう。阪神淡路大震災では、1981年以前に建てられた建物に特に多くの被害が出ました。それは、この年の6月に建築基準法が改正され、これ以降に完成した建物の耐震性が大幅に上がっていたからです。
もし、より安心な物件を求めるなら「住宅性能表示制度」の耐久性等級3を取得している物件を選べばいいでしょう。
同制度は2000年に施行された品質確保法によって、第三者機関が物件の耐久性や耐震性などの性能を評価(任意)するものです。建築基準法が定める最低基準が等級1、60年程度の耐久レベルが等級2、90年程度の耐久レベルが等級3となっています。
等級3のマンションには「100年コンクリート」などと呼ばれている強度の高いコンクリートが使用され、長寿命が期待できます。メンテナンス費用がかかりにくく、入居者に対しても安心感をアピールができるといった意味でお勧めです。
信用度や耐久性に問題のある「木造」は避ける
こうした構造面での比較以外に、さらに私が木造をお勧めしない理由は、たとえば中古マンションを1棟購入したと考えてください。その1階をリノベーションして、将来クリニックを開業したとします。そのとき患者がどのような印象を持つか、です。
想像してみてください。木造アパートの1階にあるクリニックとRC造マンションの1階にある病院を。信用度はどちらが上でしょうか?
内装に関しては木質感があった方が、患者は癒やされることもあるでしょう。しかし、それは木造だけでなく、どの構法でも実現可能です。また、木造の場合は5年から10年ごとの白アリ防除工事が必須になります。費用がかかる上に、床下に散布した薬剤によって心身の弱った患者に悪影響が出る可能性も否定できません。
このように不動産運用においては、建物の構造は非常に重要なのです。特に将来にわたってその物件をどのように運用していくのかを考えておくことが、成功のカギになります。