今回は、海外進出で成功を掴んだ企業の例を見ていきます。※経済のグローバル化の進展に伴い、海外市場にビジネスチャンスを見いだす日本企業は増え続けています。しかし、ガラパゴス化した契約締結方法や契約書の形式に慣れきってしまい、グローバルスタンダードに対応できず、大きな損失を被るケースも少なくありません。本連載は経営者に向け、法務リスクを回避し、世界に通用する「契約締結のノウハウ」を解説します。

人口減少は「労働力の減少・市場の縮小」と同義

2008年をピークに、日本の人口は漸次減少を続けています。2017年には全国で約40万人が減少しました。出生者数94万人に対して、死亡者数が134万人だったからです。ちなみに、死因の1位は例年どおりガン(悪性新生物)ですが、4位に老衰が入りました。今後数年以内に、日本人の三大死因の一つは老衰になると予想されています。

 

企業にとって人口の減少は、労働力の確保が難しくなるのと同時に、市場の縮小を意味します。

 

例えば、1995年に653万部を記録した漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』の発行部数が、2018年に176万部と4分の1に下落したのは、漫画雑誌の人気低下とともに、少子化が影響しています。子ども人口の減少に伴い、ランドセルや学習机の売り上げも年々右肩下がりとなっています。

 

少子化の影響で国内の売り上げが下がっているなかで、ランドセルメーカーはファッションアイテムとして海外にランドセルを売り出すことを目論みました。パリでランドセルのファッションショーを開催したり、アジア圏で高級かばんとして売り出したり・・・といった試行錯誤を重ねた結果、現在ではセレブにも人気のファッションアイテムとして、「ランドセラー」なる言葉まで生まれているようです。

 

ランドセルの話はあくまでも一例ですが、日本市場が縮小するなかで海外に販路を求めた企業の成功譚はいくつもあります。

 

有名なところでは、学習塾チェーンを展開する株式会社公文教育研究会です。同社は、海外駐在員向けの教室をアメリカに開設したことに始まり、現在では世界50カ国に現地教室を持つ、世界のKUMONとなっています。学習者数も、国内160万人に対して海外が268万人と、海外市場がメインとなっています。

 

農機メーカーの株式会社クボタも、国内市場の縮小に伴い、1998年から中国に製造会社を作って本格的な海外進出を始めました。当初は、国内外の価格差から苦戦したものの、土地が広大で機械化率の低い中国市場ですから、ひとたび受け入れられれば、その売上額は莫大になります。現在のクボタは、農機メーカーとして世界3位の売上高を誇るようになっています。

6割以上の中小企業が海外進出で「好影響」を実感

大企業ばかりではありません。売上高5600万円、従業員5名(2016年)の株式会社マブイストーンは、沖縄のご当地ヒーロー「琉神マブヤー」を展開するコンテンツ企業ですが、このマブヤーを各国に合わせたご当地ヒーローとしてアジア圏に売り込み、マレーシアのご当地ヒーロー「琉神ジュワラー」として再生させました。

 

また、売上高1.3億円、従業員22名(2016年)の有限会社佐賀ダンボール商会は、佐賀県の特産品である有田焼や万年筆、万華鏡などのメーカーと提携して「有田焼万華鏡」、「有田焼万年筆」などを開発し、中国、アメリカ、ロシア、ドバイなどの高級百貨店に卸しています。

 

売上高1.9億円、従業員10名(2016年)の室町酒造株式会社も、国内市場の縮小に危機感を抱いて海外輸出に取り組み、製造する日本酒やリキュールを、イギリス、ロシア、アメリカ、スペインなどに輸出するようになりました。

 

この3社は、いずれも中小企業庁によって「海外展開の成功事例」として紹介されたものです。

 

日本国内よりも海外でよく知られるようになった例もあります。熊本県の味千ラーメンは、そのチェーン店の7割が熊本県内にあるローカル企業が提供しているもので、全国的にはほとんど知られていませんでした。しかし、ライセンス契約のかたちで中国に進出して大成功を収め、2018年現在は、日本国内80店舗に対して、海外では737店舗を展開するようになりました。中国で日式ラーメンといえば豚骨ラーメンを指すようになったのは、熊本の味千ラーメンの成功があったからです。

 

JETRO(日本貿易振興機構)のアンケート調査(2017年度)によれば、海外市場への進出や輸出を行った企業のうち65.2%が売上高において、「かなり向上/増加した」もしくは「向上/増加した」と回答しています。中小企業に限定しても62.4%が売り上げへの好影響を感じていました。

 

このように、意欲的な中小企業の経営者にとって、海外市場への進出、海外への自社製品の輸出は、行って当然のものとなってきました。

海外取引の成否は「契約」で9割決まる

海外取引の成否は「契約」で9割決まる

菊地 正登

幻冬舎メディアコンサルティング

経済のグローバル化が進展した昨今、ビジネスにおける海外取引は増加の一途を辿っています。 こうして海外現地での事業や海外企業との取引が増えるにしたがって高まるのが、法務リスク。 海外マーケットにビジネスチャンスを…

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