なぜ日本企業には「海外取引のトラブル」が頻発するのか?

経済のグローバル化の進展に伴い、海外市場にビジネスチャンスを見いだす日本企業は増え続けています。しかし、ガラパゴス化した契約締結方法や契約書の形式に慣れきってしまい、グローバルスタンダードに対応できず、大きな損失を被るケースも少なくありません。本連載は経営者に向け、法務リスクを回避し、世界に通用する「契約締結のノウハウ」を解説します。

トラブルの多くは「契約」が原因

経済のグローバル化が進展した昨今、ビジネスにおける海外取引は増加の一途を辿っています。

 

海外取引には、商品やサービスの輸出、設立した現地法人との取引、あるいは外国企業の製品の輸入などさまざまな形態があります。例えば約3000社を対象にJETRO(日本貿易振興機構)が行った海外事業展開に関するアンケートでは、81.9%の企業が輸出拡大への取り組みに意欲を示しています(2016年度)。現地に拠点を設けるという意味での海外進出の意欲を見ても、拡大を図ると回答した企業は60%以上にのぼります。

 

実際に日本企業の海外現地法人数は増加傾向にあり、2006年度に約1万6000社だった現地法人企業数は、9年後の2015年度には約1.5倍の約2万5000社にまで増加しました(経済産業省「海外事業活動基本調査」)。

 

人口減少に伴う日本国内マーケットの縮小が確実視されるなかで、政府も企業の海外展開を後押ししています。2013年には、「5年間で1万社の中小企業を海外進出させる」という目標を掲げ、公庫での融資なども積極的に実施しています。またTPPの締結による一部製品の関税撤廃などもあり、海外でビジネスを展開するチャンスは急速に広がっているのです。

 

こうした海外現地での事業や海外企業との取引が増えるにしたがって高まるのが、法務リスクです。

 

例えば日本企業が自社製品を海外で販売する場合、現地の販売代理店や小売業者との取引が必要になります。この契約内容によって日本企業の海外取引の成果が大きく左右されることに注意しなければなりません。海外企業は日本企業とはビジネス環境も商習慣も異なります。そのため、契約内容をめぐって海外企業とトラブルになり、紛争に発展する例が多々あります。その結果、せっかく海外事業で手に入れるはずだった利益のほとんどを、裁判費用や賠償金などで失ってしまう企業も決して珍しくありません。

 

海外マーケットにビジネスチャンスを見出す日本企業の経営者は、法務リスクによって利益を損なうことを可能な限り回避する必要があります。

日本企業同士の契約は「信頼関係」が重視されるが…

筆者は、弁護士としては長期である約3年間の英国留学経験を持ち、実際に現地の法律事務所での勤務研修を受けた国際企業法務を得意とする弁護士です。海外企業との取引を数多く扱ってきた経験から、日本企業が海外取引で損をする原因は、そもそも国際基準の契約の性質を理解していないことにあると断言できます。

 

日本企業同士の契約においては信頼関係が重視されるため、トラブルや揉め事が発生した場合の対処については契約時に協議されないこともよくあります。その一方、海外企業はトラブルが発生することを前提に、契約時から自社が有利になる内容を盛り込むことを徹底します。そのため細かな契約条項や文言が日本企業にとって不利な条件となっている契約を提案してきますが、日本企業側は深く吟味せずに契約を結んでしまいがちです。そしていざトラブルになったとき、一方的に海外企業の要求を呑まざるを得なくなります。

 

日本企業の経営者は、国内でガラパゴス化してしまった契約締結方法や契約書の形式に慣れており、その結果、グローバルスタンダードに対応できずに大きな損失を被っています。

 

そこで本連載では、まず日本企業の経営者が知らない、海外取引における契約の考え方を丁寧に解説していきます。

 

海外取引の成功・失敗事例についてはJETROなどの機関でも公表していますが、事例とあわせて、「トラブル時に何が争点になったのか」、「どのような契約を結んでいれば、利益を守ることができたのか」まで解説している書籍はほかになく、契約についての考え方を読者に提示できるのは、海外との国際企業法務の経験が豊富な筆者だからこそと自負しています。

 

「知らぬ間に不利な契約を結んでしまった・・・」といった事態に陥らないよう、本連載をお読みいただければと思います。

 

 

菊地 正登

片山法律会計事務所 弁護士

 

片山法律会計事務所 弁護士

2001年、早稲田大学法学部卒業、2003年に弁護士登録。2009年に渡英。University of Southampton LL.M.(法学修士)コースワークに参加し、英米法、比較知的財産法、コーポレートガバナンスなどを学ぶ。2010年には法律事務所Hill Dickinson LLP(ロンドン)にて勤務研修を経験する。2012年に帰国。2017年、片山智裕弁護士とともに片山法律会計事務所を設立。豊富な海外経験を活かし、英文契約書の作成・リーガルチェック・翻訳、海外展開のアドバイザリー業務など、国際的なビジネスを展開する企業の法務をサポートしている。

著者紹介

連載国際企業法務に明るい弁護士が伝授 海外取引を成功に導く「契約締結」ノウハウ

海外取引の成否は「契約」で9割決まる

海外取引の成否は「契約」で9割決まる

菊地 正登

幻冬舎メディアコンサルティング

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