信用情報は、家族の分も含め事前確認が必要
秘訣4/35 金融ブラックは要注意。自分プラス家族の信用情報もチェックする
下記の図表のチェックリストをご覧ください。「クレジット事故を起こしたことがある」、「携帯代の支払いを遅延したことがある」方は、審査に落ちてしまうリスクが高まります(詳細は本書籍『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣』44ページをご確認ください)。
[図表]これに当てはまると融資のハードルは高い?6つのチェックリスト
「黙っていればバレないのでは?」と思われるかもしれませんが、そう甘くはありません。
シー・アイ・シー(CIC)という会社があります。適正なクレジット・ローン取引のために、クレジット会社や金融機関などが共同出資した会社で、消費者のクレジットやローン利用に関する信用情報の収集・管理・提供・開示を行なっています。
借入れを申込むと、金融機関はCICの信用情報を確認し、お金を貸すかを判断しています。ここで信用情報にキズがあると判明すると、融資が難しくなります。
実はCICは、加盟する金融関連会社だけでなく、借入れをする本人も申込めば自身の信用情報を開示し、確認することができます。
「口座の残高が足りなくて支払が遅れてしまったことがある」などの、うっかり起こってしまった遅延も含め、心配な方は一度自分でCICの情報をチェックしておくことをオススメします。
方法は簡単です。パソコンやスマートフォンで、CICのHPから「自分の信用情報を確認」のページを選び、指示に沿って手続きをすれば、PDFで開示報告書を取得することができます。開示の手数料は1000円で支払はクレジットカードのみとなります。
クレジットカードを持っていない場合は郵送やCIC窓口での開示も可能です。また、消費者金融系の信用情報については、「日本信用情報機構(JICC)」のサイト内でチェックできます。
では、信用情報がブラックな人は、絶対に融資を受けられないのかというと、公庫の審査についていえば、100%不可とはいえません。
ブラック情報が消えるまでの5~7年の間も申込みは可能です。ブラックか否かだけで不可ということではなく、ビジネスプランや今後の返済能力も加味した上で審査となります。
一番のマイナス評価となるのが、金融ブラックであることを隠してバレた場合です。配偶者と一緒にビジネスをする場合は、家族のブラック情報も含めて、事前に調べておきましょう。
任意整理や個人再生なら、5年以上の経過で可能性あり
事 例 過去に任意整理をしても完済したことで、700万円の借入れに成功したCさん
債務整理の方法には、自己破産や借金額を圧縮する任意整理、個人再生などの手段がありますが、私のお客様で7~8年前に任意整理をした方で融資に成功した方がいらっしゃいます。
Cさんとしましょう。実はその事実が発覚したのが、融資の面談後。Cさんから慌てた様子でかかってきた1本の電話でした。
「田原さん! すみません。実は過去に任意整理していたことを面談の担当者から突っ込まれまして・・・」
「えっ・・・私との面談では、そんなお話されてなかったですよね?」
「はい。実は支払い忘れていた借入れ金が5万円残っていたことを失念していました」
「なるほど・・・。わかりました。じゃあ直ちに返済しましょう!」
「返済すればなんとかなるんですね」
そんな会話を経て、Cさんには即、対処に動いてもらいました。
ネガティブな事実が判明したことで、公庫からの印象は下がりますが、借金全額をキレイに返済していれば制度上は融資が可能です。さらに、直近で債務整理を行なった場合、融資は困難となりますが、5年以上経過していれば可能性はあります。
Cさんの場合、債務整理の他の条件としては、自己資金50万円、親からの借入れが150万円で合計200万円が通帳に入っている状態でした。
成否の可能性は半々といった条件でしたが、結果としては希望額満額の700万円の融資に成功しました。これも返済を完了したことと、親御さんの協力があったこと、さらに創業計画書などがしっかりしていたことが決め手となりました。また、私は公庫の資金調達実績が豊富であるため、スピーディに完済の手続きができたことも、後押し材料になりました。
自己破産の場合はハードルが高くなりますが、任意整理や個人再生の場合は、5年以上経過をしていれば可能性はあります。もちろん信用情報にキズがないに越したことはありませんが、やや厳しい条件でも、融資アドバイザーの知恵を借りることで、クリアできるケースもあります。あきらめずに相談してみることをお勧めします。
事業の立ち上げが可能な「資金の総額」を把握しておく
秘訣5 /35 運転資金と設備資金の違いを知る
融資を受ける前に、押さえておくべきポイントがあります。それはトータルで資金がいくらあれば、事業の立上げが可能かということです。
融資を受けるにせよ、自己資金を貯めるにせよ、ゴールの目安を見定めるのが先決です。まずはざっくりと世間の相場を見ていきましょう。
公庫の「2017年度新規開業実態調査」によると、開業資金自体は減少傾向にあります。
平均は1143万円ですが、500万円未満が全体の約40%を占め、約30%が500~1000万円未満で独立開業を実現しています。
無論、必要となる資金は業種ややり方によっても大きく異なりますが、見積もっていく上で知っておきたいのが事業にかかる資金には2つのタイプがあるということです。
創業時にかかる設備資金と、その後にかかる運転資金です。
両者は資金の性格が違えば、審査の際の基準も異なります。融資を申込む際に提出する「創業計画書」(あるいは事業計画書)では、2つの資金を明確に区別し、それぞれ必要な額と内訳を記入しなければなりません。
審査では額に関して具体的な裏付けも求められますので、まずはそれぞれの定義を押さえておきましょう。
●設備資金
創業時の設備投資に必要な資金、会計上では「(固定)資産」に位置付けられるものです。資産には有形(形のあるもの)だけでなく、無形(形のないもの)も含まれます。具体的には、不動産初期費用(テナントの契約金)、店舗の内装・外装費、機械設備、ホームページ作成費用、パソコン、電話、机、その他備品などが挙げられます。
●運転資金
会社や事業を回していく(運転していく)上で継続的にかかる費用。設備資金に該当しない費用になります。
具体的には商品仕入、人件費、外注費、広告宣伝費、地代家賃、消耗費などです。
業界別にかかる費用の内訳を見ていくと、飲食業ならば「厨房機器や調理器具」「店舗の内外装費用」「店舗の契約費用」などが設備資金。その後、店舗を経営していく上で必要な運転資金としては、「人件費」「仕入れ費用」「毎月の家賃」などが挙げられます。
これらを合算して、飲食店の開業資金としては平均して1000万円程度、同じく店舗が必要となる美容室の場合、500万円程度から開業可能ですが、シャンプー機器などに資金をかけると3000万円程度かかるときもあります。
医院の場合も診察に必要な機器を購入すると、最低でも1000万円、高価な機器に多額な費用を投資した場合、1億円程度かかるケースもあります。
つまり、設備投資をどれだけするかで、必要な資金の額は大きく変わってきます。
設備資金は、設備の購入・投資にしか使えない点に注意
それぞれの費用項目を区別するとともに、大前提となる注意点が「設備資金は設備の購入、投資にしか使用することができない」ということです。
開業資金がかさむ店舗ビジネスでとき折見られるのが、内外装費といった設備投資に費用をかけすぎて、開業後の運転資金が足りなくなってしまうケースです。
後に解説しますが、設備資金と運転資金では、設備投資のほうが高額の借入れがしやすくなります。ならば設備資金を実際に使う金額よりも多めに借りて、運転資金が足りなくなったらそっちに回せばいいと思うかもしれませんが、残念ながら基本的には認められません。
また、運転資金については目安の金額が決まっている点にも注意が必要です。創業時には「オシャレな店にしたい」「最新の設備を入れたい」と夢がふくらむままに、コストの設定も跳ね上がりがちですが、こと融資の審査に関しては、自己資金の額や経験値によって予算の“妥当性”が重視されます。
あまりに借入れの希望額が妥当な金額よりかい離していると、計画性がないと判断され、1円も融資が受けられないこともあります。
相場より高い、あるいは身の丈に合わない設備投資を見積もっても、売上アップに結びつくという説得力あるストーリーがなければ、減額される、あるいは融資自体がNGとなるリスクが高いということも押さえておきましょう。
田原 広一
株式会社SoLabo 代表取締役