今回は、創業融資を少しでも多く引き出すために有効な「別紙資料」の作り方等を見ていきます。※希望を持って起業しても、会社の6割は1年で倒産するという厳しい現実があります。経営者の多くは借入に対しネガティブなイメージを持っていますが、創業時期の厳しい状況を乗り越え、長期にわたって安定した経営をするためには、創業直後からの借り入れが不可欠です。本連載では、中小企業が潤沢な融資を受ける秘訣を紹介します。

「別紙資料」でアピールポイントをうまく伝える

 秘訣12 /35  少しでも融資額を多く引き出すには別紙資料を作る

 

「創業計画書」のフォーマットの枠はそれほど大きくないため、事業プランを考え抜き、しっかりとした構想を立てた人ほど、すべてを書ききれないケースも出てくるでしょう。そこで、アピールポイントを上手に伝え、融資の確度を上げ、融資額を少しでも多く引き出すためのテクニックが別紙資料を作成することです。

 

就職試験の際に、履歴書とは別に経歴書や「なぜ御社を志望しているのか」といったレポートを提出したことがある方もいると思います。それと同じようなものと考えてください。とはいえ、自分本位の“ラブレター”を書いたのでは、功を奏するどころか、逆効果になることもあります。以下、別紙資料作成のポイントを見ていきましょう。

 

1 経歴・プロフィール

いくつかの店舗で勤務経験があれば、それぞれの店での勤務年数だけでなく、何を習得したか、任された役職、そこで得た知見などを記載した経歴書を用意しましょう。スタートするビジネスに役立つ資格があれば、それも記載します。

 

2 創業動機

私のお客様で、経験ゼロ・自己資金ゼロの人が、ラーメン店を開業したいと、ラーメンへの愛、自分なりの研究成果を綴った別紙を提出したことで、300万円の融資につながった例もあります。一方的な思いを押し付けるだけではダメですが、例えば、「全国のラーメン店を食べ歩いて味の研究をした」など、“商売への本気度”が伝わるような具体的なエピソードがあれば評価につながるでしょう。

 

3 ターゲットの設定

オフィス街に近い立ち飲み居酒屋ならばサラリーマン、カフェならば20~40代女性、郊外のレストランならファミリー層などと、ターゲットを決めたら、集客のためにどのような工夫をしているのかを資料にまとめます。「ファミリー層がメインなので、掘りごたつ式の座敷を用意します」「仕事帰りの会社員がちょい飲みできる立ち飲みスペースを用意します」など、具体的な方策を記載するとベターです。

 

4 立地・通行量調査

最寄駅の乗降客数、駅からの立地、近隣に何があるかを記載した資料があると、アピールにつながります。オフィスワーカーがターゲットならば、近隣に位置する会社や工場、役所など、ファミリー層ならば学校やショッピングセンターなどを記すと、目指す集客の実現度を計る材料になります。それと関連し、出店・開業予定地の通行量調査を実施し、まとめたデータも有効です。その際、想定としてターゲットとする層(20~40代女性、サラリーマンなど)別に数値を入れるのがコツです。

 

5 提供する商品、サービス、メニューの詳細

飲食店ならば、箇条書きでよいので、提供予定のメニューの一覧をつける、あるいは携帯のアプリなど、仕組みやサービス内容が複雑な場合は、簡単に図式で解説するような資料をつけると、担当者のビジネスモデルへの理解も深まります。

 

6 競合調査

近隣にどのような店があり、同業種の店がどの程度あるか。競合した際の優位性についても分析した資料をつけておくとよいでしょう。

 

7 将来的なプロモーション展開の予定

店舗ビジネスの場合、新規客、リピート客、常連客の3層に向けたプロモーションが、売上を伸ばし続ける上で欠かせません。駅前のビラ配りから、雑誌などのメディア、オウンドメディアでのSEO、SNSを活用した情報拡散、リスティング広告、デジタルマーケティングなど、昨今は新しいメディアも続々と登場しています。一つだけでなく、いくつかのメディアを複合した形で、戦略的に考え、記載することが、将来性を感じさせる評価につながります。

 

8 損益計算書

売上高、売上原価、各経費項目ごとに、毎月どれくらいかかるのかを表でまとめ、どれだけ利益が出るのかを検討して、資料を作成してみましょう。

 

すべてを作成するのは時間的に厳しくても、どの資料も融資を受ける際にだけでなく、将来的にビジネスを成功させる上での必須のものとなります。面談に備え、頭を整理する上でも、取り組むことをオススメします。

融資の可否は「売上見込の説得力」にかかっている

 秘訣13/35   面談では“ストーリー”と“数字の根拠”を明確にする

 

借入申込書を提出し、「創業計画書」のほか、必要書類の準備がすんだところで、公庫の融資担当者と面談することになります。

 

公庫の融資は、まず面談を受け、担当者が面談を元に作成した書類を、支店の課長、支店長がチェックし、OKとなれば融資が受けられます。

 

よって、まずは面談の担当者に融資につながるアピールポイントをしっかりと伝え、理解してもらうことが最初の関門となります。

 

「創業計画書」を元に面談は進みますが、大事なのは具体的な数字の根拠、ストーリーを明確にすることです。

 

「創業計画書」で記入した数字に関して、特に重視されるのが「売上」です。

 

創業時に必要となる設備資金や固定費はムダ遣いをしなければ、コストは、計画から大きくはずれることはないでしょう。

 

しかし、売上は本人のがんばり次第で大きく変わります。売上が伸ばせる人ならば、いくら貸しても返せると判断され、金融機関としては極端をいえば、「いくらでも貸したい」というのが本音になります。

 

つまり、融資の可否、希望どおりの融資額を引き出せるか否かは、創業計画書に記した売上について、より説得力あるプレゼンができるかどうかにかかっているといっていいでしょう。

 

例えば、飲食店の場合は、

 

●周辺に競合店がどれだけあるのか

●出店予定地にどれだけ通行人がいるのか

●周辺にどのような施設があるのか

●来店する方のメインターゲットはどこか

 

などを踏まえ、

 

「メニュー構成」「価格帯」「客単価」「見込める集客数」「回転数」を割り出し、売上の裏付けとします。別紙を用意し、最寄駅の乗降客数や道路沿いならば交通量、会社などの大口客が見込めるかなども踏まえてプレゼンするのがよいでしょう。

 

また、美容院の売上見込みを合理的に説明する方法としては、例えば、前職での指名客が400人いたとします。その顧客が2カ月に1回のペースで来店していたとして、独立後も指名客の半分でも引き継ぐことができれば、単純計算で毎月100名のお客様を確保できることになります。1名あたりの平均単価が8000円だったとすれば、

 

8000円×100名=80万円(月)

 

創業時から月商80万円は見込めると説明すれば、説得力、納得感を持って、事業の将来性を伝えることができます。

 

営業代行業の場合は、「今までに取得した名刺リスト(名刺コピー)」「前職で出した実績」などが売上想定の裏付けとなります。歩合制で高い給料を得ていた場合は、前職の所得が高い理由は、営業力があるからです!とプレゼンしても、納得してもらいやすいです。

 

その他のビジネスも同様で、前職での顧客(クライアント)を独立後も引き継ぐことが可能ならば、既存客リストを別途作成し、伝える方法が有効です。

 

意外に難しいのが通販ビジネスにおける売上予想の説明です。実際に私のお客様でアパレルサイトを立ち上げた事例では、SNSにおける通販サイトのシェア率や、登場しているモデルのインスタグラムのフォロワー数、先行販売をした結果などを提示し、融資に成功することができました。

 

また、売上以外にもさまざまな数字について、その根拠を問われた際には口頭で解説できるようにしておきましょう。

融資が難しい斬新な事業モデルこそ、明確な資料が必要

先に挙げた飲食店や美容室といった、業種名だけで仕事内容がイメージできる業種であれば問題ありませんが、例えば「AI(人工知能)を使った資産運用サポート」など、テクノロジーを駆使した新しいビジネスモデルの場合、「今後、果たしてどの程度需要があるのか」、あるいは「そもそもどのような課金システムになるのか」など、なかなか理解してもらえないリスクがあります。

 

ここで注意しておきたいのが、斬新なビジネスモデルのほうが、融資がとおりやすいのではと思いがちですが、むしろ逆ということです。実は「前例がないビジネスモデル」は効果が測定しにくいため、融資のハードルが上がるというのが正解なのです。

 

まだ世に認知されていない新たな事業、アイデアビジネスに関しては、パワーポイントや手書きの図版でも構わないので資料を作成し、見せながら説明するのがベターです。

将来に繋がる“ストーリー立て”を具体的・論理的に説明

その他、よく聞かれる項目についてもポイントを挙げていきましょう。「創業動機」については、前職でキャリアを積んだ同業種で独立する際には、深く聞かれることはありませんが、まったく異業種からの創業など、その経緯がイメージにしにくい場合は質問されることがあります。「しっかり準備して成功できる自信がある」というストーリーを具体的、かつ論理的に説明できるようにしておきましょう。

 

「職務経歴」についても同様で、同じ業種からの独立、異業種からの転身、どちらであってもその経験が新たな事業に生かせるポイントを挙げられると印象アップにつながります。

 

また、「自己資金」については、コツコツ自分で貯金ができていれば問題ないですが、見せ金と疑われるケースは、確実に質問を受けることになります。ウソはご法度と心得て、正直に話すことが大事です。

 

「取引先」「仕入先」は複数あるのがベストです。「末締め翌月払い」など、その会社との取引条件について「入金が遅く、支払いが早い」関与先ばかりの場合は、リスクを指摘されることもあります。また、取引先、仕入先がいずれも1社の場合は、そこが倒産したらビジネスが継続できないのではという見方をされてしまいます。別途、見込みの仕入先、取引先があればリスト化し、見積書などを既に提出していれば、持参しましょう。

 

面談では時に厳しい質問を受けることもあります。

 

私のお客様のなかにも、個人で面談に臨み、「経験がそこまでないようだけど大丈夫?」「集客の見込みはきちんと調べましたか」などと質問攻めにあい、頭が真っ白になってしまったという方もいます。また、まれに不機嫌になってしまうなど、態度が悪くなってしまう方がいらっしゃいますが公庫の面談担当の指摘は、真摯な態度で受け止めるようにしましょう。

 

また、服装で融資の可否が決まるわけではありませんが、「きちんとしている」という印象を与えるならば、奇をてらわず、スーツで行くのが無難です。スーツを持っていないならば、ジャケットを着用するなど、なるべくかっちりした格好で行くようにしましょう。

 

 

田原 広一

株式会社SoLabo 代表取締役

 

独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣

独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣

田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

6割の会社が起業から1年で廃業!? 資本金400万円の会社を経営している著者が、創業して3年の間に複数の金融機関から8200万円もの融資を受けてきた実績を元に、中小企業でも高額の融資を受けられる秘訣を公開。 大切な会社を…

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