建築業界に限らず、安易なブランド信仰が通用しないのは、もはや明白な事実のはずなのですが、とかく住宅や金融などの専門性の高い分野になると、無難に「寄らば大樹の陰」となってしまいがちなのかもしれません。
しかし、本記事に挙げているさまざまな事例は、残念ながらというべきか、誰もが知っているようなメーカーの実話をもとにしています。
コンプライアンスが厳しく叫ばれるようになった昨今、一昔前の営業スタイルはやや改善されているとも耳にしますが、金融庁の規制により、金融機関などで投資リスクへの説明義務が厳格化されているのに対し、まだまだ不動産業界は“甘い”ように私の目には映ります。
一時、世間を騒がせた建築偽装問題ではないですが、都合の悪いリスク材料は、なるべく見せたくないという姿勢がうかがえてしまうのです。
CMの制作費なども、建築原価に乗ってくる!?
たとえば、賃貸住宅を手掛けるメーカーが営業用に配布している資料やホームページなどを見ると、今後、15~20年スパンでの賃貸住宅の供給予想値と新規供給需要の予測値の推移などのデータが載っています。これによると、老朽化物件の滅失、淘汰により、今後も賃貸住宅については安定的な需要が望まれると謳われています。
しかし、よくよく見ると、グラフの下には、「〇年以降の数値は、過去データをもとに試算した推計値であり、各省庁から発表されている数値データではありません」と書いてあります。
ご年配の方ならば、見逃してしまうのではないかという小さな文字で、です。ちなみに金融商品のリスク文言に関しては、文字サイズの基準が厳密に規定されていますが、それに対してやや不親切と言わざるをえません。
また、「当社は、賃貸経営に関して○年のキャリアを持ち、当社で建築されたオーナーさんは95%の入居率を実現しています」などと謳われる実績、ブランド力についても、安易に信じるべきではないでしょう。これまではそうだったのかもしれませんが、今後、住宅市況が厳しくなるなかで、これを維持できるのかどうか。はなはだ疑問です。
もう一度、申し上げます。
たとえ、テレビで有名タレントを使ったCMを流しているような企業であっても、知名度だけで信頼するのは早計です。そもそも、こうしたCMの製作費は、建築原価、つまりあなたの負担へとはねかえっていくだけなのですから。
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