返済が進んでいくと、借入残高(マイナス資産)は減少しますが、建物評価は借入残高ほど大きく下がりません。一方、収益は蓄積されていきますので、この超低金利下にあっては、概ね15~20年の間に、債務超過は解消されてしまいます。ましてや、収益が蓄積されていくとなれば効果がゼロどころかプラスに転じてしまいます(図表2)。
【図表2 借入が相続対策だと思っていませんか?】
つまり、節税効果だけを見れば、建築した当初が一番効果があるわけです。言い方は悪いですが、アパートが完成した瞬間に亡くなってもらうのがベストという意味で、「早く死んでください」と言っているようなものなのです。
なんと悲しい相続対策でしょうか。私が、この手法を「愛のない相続対策」と呼んでいるのはそれゆえです。
無論、こうした事実もしっかり説明した上で、収益が上がってきた時点で、効率的に収益を分散するまでのアドバイス、サポートを実践しているならば、問題はありません。私の会社では、債務控除の節税効果が薄れてきた物件については、次の新たなる手を必ず提案しています。しかし、住宅メーカーは「建物を建てる」までがビジネスであり、その後の経営や相続対策まではフォローしてくれません。
その意味でも、やはり「愛のない相続対策」と言わざるをえないのです。
大手の会社ならば安心だろう…という考えは危険
◆要注意トーク3「当社は賃貸経営に関して〇年のキャリアを持っています」
テレビを見ていると、人気の芸能人を使った大手住宅メーカーの宣伝CMが頻繁に流れます。
今をときめく芸能人がにっこり笑顔で、「土地の活用はお任せください」などと語るCMは安心感にあふれ、「CMに人気タレントを使うような、大手の会社ならば安心だろう」と思ってしまう人は多いようです。