金融機関の融資が厳しくなり始めた現在、不動産投資を始めるタイミングを計りかねている方も多いのではないでしょうか。本連載では、不動産投資家の木下たかゆき氏の著書、『~最速で億を稼ぎ出す男が明かす~ 不動産投資「勝者のセオリー」』(ぱる出版)の中から一部を抜粋し、不動産投資によって最速で「億」を達成するためのメソッドを紹介していきます。

不動産投資において「関西圏エリア」が優位な理由

スピーディな規模拡大を目指すなら、金融機関を抑えることが不可欠です。不動産投資は融資ありきの商売です。まずはそれを頭に叩き込んでください。それに、業者からせっかく物件を紹介されたのに、融資でコケまくっていたら信用を落とし、物件を紹介してもらえなくなってしまいます。

 

不動産投資を始めたばかりの頃は、物件探しにフォーカスしすぎるあまり、融資に関して疎かになる方が多いかもしれません。しかし、何よりも先決なのは、融資です。

 

「物件探しの前に融資先を開拓!」

 

このキーワードを忘れないようにしてください。

 

融資戦略で最も大事なポイントは、「融資が出るエリアで勝負する」ということです。僕は関西圏、特に大阪は、おそらく日本一融資が潤沢なエリアだと思っています。もし僕が、他のエリアで不動産投資をやっていたら、間違いなくここまで規模を拡大できなかったと思います。

 

その理由ですが、大阪は、不動産に融資を出す金融機関がとても多いのです。

 

都銀を抜きにしても、第一地銀、第二地銀、信金信組、ノンバンクも合わせると、おそらく20行はあります。不動産投資向けの融資においては、間違いなく日本一のスケールです。そういう意味で、メガ大家になるためには、大阪に本店所在地を置き、そこに腰を据えて勝負することが有利になります。

 

仮にあなたの住まいが関東圏であっても、大阪で勝負すべきということです。

 

実際に、この話を知り、大阪に不動産投資の拠点を移した投資家が、僕の周りには大勢います。そのくらい、不動産投資において融資先を固めるのは、大事なポイントなのです。

 

別に大阪に引っ越してこなくても、大阪に事務所を開き、社員を雇用すれば(つまりビジネスの実態があれば)、大阪で物件を買い、規模を拡大していくことは可能です。

 

ちなみに大阪以外では、北海道が融資が出やすいようです。特に札幌は狙い目です。釧路や小樽、函館など、各エリアの支店が札幌に集まっているため、信金と信組を合わせると20行以上はあると思います。

 

北海道は東京や大阪と違い、大きな事業が少ないので、不動産に資金が回りやすいのです。ですから、北海道の方は札幌の信金や信組をうまく使って、融資を伸ばしていくと良いと思います。

 

融資が出にくいエリアで規模を拡大しようとしても、すぐに頭打ちになってしまいます。大切なのは、投資エリアにこだわることではなく、収入を増やすことのはずです。融資が緩いエリアで勝負して、一気に億万長者への階段を駆け上がりましょう。

通常は決算書の内容が良くなるまで融資は難航するが…

関東では近年、「一法人一物件スキーム」が話題です。

 

そもそもこのスキームの仕組みですが、「一つの物件ごとに一つの資産管理法人を設立して、他の法人で融資を受けていることを銀行に隠しながら、物件を買い進めていく」というものです。要は、短期間で一気に買い進めるための裏技的な手法といえるでしょう。

 

通常は、物件を一つ買うと、金融機関からは入居状況や入金履歴などを確認するために、半年程度、場合によっては決算期をまたぐまで、次の物件に融資をしてもらえません。他の銀行をあたったとしても、評価はそう変わらず、決算書の内容が良くなるまで、融資は難航します。

 

しかし、この「一法人一物件スキーム」なら、購入ごとに新設法人を作るわけですから、決算書や確定申告の審査を受けることはなくなります。つまり、金融資産(属性)と購入物件の評価のみが基準となるため、そこさえクリアすれば、次々に物件を買い進めることが可能になるのです。

 

また、一法人一物件スキームを使っている業者は、通常、二重売買契約をしてオーバーローンで融資を引いたり、消費税還付を受けることで取得税や登録免許税などの購入に関わる諸経費をペイしたりするノウハウを持っており、投資家にもそれをすすめてきます。これらを駆使すると、「見せ金」も減らさずにキープできるため、短期間で何十億円もの物件を買うことが可能となります。

 

これは机上の空論ではありません。実際に、このスキームで1年も経たずに数十億円の不動産を買った人も実在します。

 

「すごい、そのやり方なら、一気にリタイアできるじゃん!」とうらやましく思う人もいるかもしれません。

「簡単に物件が買えてしまうこと」はリスク⁉

しかし、安易にマネをすることはおすすめしません。劇薬には副作用がつきものです。僕は、このスキームには次の5つのデメリットがあると考えています。

 

①リスクが高い

②税理士費用が高くなる

③赤字でも均等割を払う必要がある

④法人の管理が煩雑

⑤出口をどうするのか?という問題

 

まず、一つ目のリスクが高いという点ですが、万が一、銀行に借入を意図的に隠したことがバレた場合、最悪、借入の一括返済を求められる可能性があります。そうなったとき、物件を売って返済できればいいのですが、市況がこの先グンと良くなる場合を除いては、そんなことは不可能でしょう。そうなれば、一気に破産コースです。

 

また、このようなスキームに手を出す人は、とにかく数字を大きくすることに目を奪われがちで、肝心の不動産の収益性について、調査が甘くなる傾向があります。キャッシュフローが出て、融資が付く物件であればとにかく買っていくというスタンスなのだと思いますが、今の市場で、そんな安易なやり方が通用するほど、不動産投資は甘くありません。

 

実際に、このやり方で買っている人の物件を見せてもらったことがありますが、「自分なら絶対に買わない」ものばかりでした。不動産投資を行う上で、「簡単に買えてしまうこと」はリスクでもあるのです。数を追うことに夢中になっていると、後で苦労する羽目になります。

 

二つ目は、税理士費用が高くなるというデメリットです。このスキームでは消費税還付をセットにすることが多いのですが、そうなると通常は、仲介業者だけでなく、税理士も絡んでいます。すると、消費税還付に対する成功報酬を取られるだけでなく、決して安くない金額で「顧問税理士の契約」が付いてくることになります。その値段が相場より高くても、他にお願いするわけにはいきません。このスキームを理解して、サポートしてくれる税理士さんはほんの数名に限定されるためです。

 

三つ目は、赤字でも均等割を払う必要があるというデメリットです。均等割とは、所得がなくても法人が存在するだけで課せられる法人住民税のことです。法人が10あれば、10社分の法人住民税がかかります。本来なら払わなくていいものを払うのですから、全体の収支は当然悪化します。

 

四つ目は、法人の管理が煩雑になるというデメリットです。仮に、10棟買ったら10法人になりますが、一つの法人ごとに、帳簿書類を作る必要があるため、手間や管理に大変な時間を取られることは間違いありません。

 

そして五つ目のデメリットは、出口をどうするのかという問題です。ここが一番のネックとなります。法人ごと売却するなら、簿外資産、つまり決算書上に載ってない資産と負債の取扱いをどうするのか? という問題が発生します。

 

通常、法人の代表取締役が連帯保証人になっていますから、法人ごと売却するならそれを外す必要がありますが、その引き継ぎはどうするのでしょうか。また、株式の評価をどう決めるのか。上場しておらず、取引もされていない株式は売り買いされること自体がまれなので、客観的な価格をつけることが非常に難しいのです。

 

また、物件だけ売る場合には、残った法人をどう処理するかという問題も生じます。休眠状態にするのか、解散するのか。実際の所、まだ終息に向けて取り組んでいる人を見たことがないので、これに関しては答えが出せませんが、容易でないことは確かです。

 

僕は人のやり方をあれこれ言うつもりはありません。ただ一つ言えるのは、自分は、「一法人一物件スキーム」はやらないということです。

 

僕自身は基本、一法人で買い進めていますし、銀行に隠している法人はありません。至って王道的な手法で取り組んでいます。

 

僕はこれまで、一法人一物件スキームに限らず、裏技的な手法で一気にワープしようなどと考えず、地道に経験を積み上げてきました。だからこそ、確固たる実力をつけることができたと自負しています。そして、その実力があるから、融資が付いて、物件を買えるのです。

 

それに、大阪ではこんな面倒なことをしなくても、融資を付けることはできます。関東でも、めちゃめちゃいい物件なら、裏技なんて使わなくても融資を引くことはできるはずです。小手先の技は、長くは通用しませんし、裏技は、一度始めると後戻りができません。

 

メガ大家を目指すなら、正攻法で勝負です。

 

 

木下 たかゆき

不動産投資家

 

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