物件の「値決め」の精度が上がるデータ収集術
相場より圧倒的に安く買うことは、物件購入における基本中の基本です。「これがすべて」と言ってもいいほどの究極のノウハウともいえます。
その物件が儲かるかどうかは買った価格で「9割方」の勝負が決まります。ここで失敗しないためには、売値が「高い」のか「相場並み」なのか、それとも「安い」のか、これを見極められるかどうかが肝になります。
安く買うために最も基本となるのが、「相場勘を養う」ということです。相場勘を身につけるためには、日々のリサーチの積み重ねしか道はありません。何となく価格や利回りを眺めるのではなく、物件のスペックの細部までしっかり見て、1件ごとに自分なりに値決めをしていきます。
この値決めができるようになると、その物件を「即転売」したとき、いくらで売れるのかの予想が立ち、「買い」かどうかの判断もできるようになるのです。
そのための方法ですが、最初は、業者や成功している投資家に物件のスペックやエリアを伝えて、いくらくらいが適正なのかを聞くようにしてみてください。さらには、普段から投資家仲間に、儲かっている物件の詳細を聞いてみると良いでしょう。
スペックやエリア、値段だけでなく、借り入れ条件、満額出たのか、銀行、支店、返済期間、返済方法、管理会社、どこからの情報源で買ったのかなど、貪欲に根ほり葉ほり聞いて、細部の情報や考え方まで教えてもらってください。
それらのデータが増えれば増えるほど、値決めの精度が上がります。僕もよく質問されるのですが、初心者の方はヒアリングの仕方が浅い印象です。しつこく聞くのは抵抗があるかもしれませんが、遠慮しすぎでは何も得られません。勉強会などで仲間を増やし、その中から何でも聞ける相談相手を見つけてください。自分も相手に提供できる情報を持ち、それをシェアするようにすれば、相手と良い関係を築いていけます。
相場より高い物件は論外ですが、「相場並み」の価格で物件を買っても、儲かるかどうかはわかりません。もっと言えば、今後の市況次第です。
勝ち残るためには、「今後の市況がどう転んでも損をしない物件」を買わなくてはいけません。
最初はとにかく、成功している投資家に意見を聞いてみることです。ミッションのつもりで、果敢に情報を集めましょう。
原則的に「仲介手数料」の値引き交渉はNGだが…
次に、仲介業者との交渉について解説します。交渉といっても、投資家としてのレベルが低ければ、良い物件を引き寄せられません。
そもそも業者に相手にしてもらえませんから、まずはキャッシュを積み上げたり、物件規模を拡大するなど、自分のレベルを上げることが前提になります。
また、業者と良い関係を続けていくために、相手の立場に立った提案をすることも重要であり、Win-Winの関係を築く意識が大切です。
物件を買う立場として仲介業者と渡り合うには、いろいろな交渉が待っています。
●買いつけで一番手にしてもらう交渉
●物件価格の交渉
●決済時期の交渉
●仲介手数料の交渉
このような交渉を一つひとつ成功させ、トータルで見たときに1円でも多くの利益を残せるようにしなくてはいけません。
まず、買いつけで一番手にしてもらう交渉ですが、自分が「買える客」になっていることが重要です。買える客の条件とは、次のような客のことです。
●銀行取引数が多く
●最悪、現金でも買えるキャッシュがあり
●共同担保を入れることができ
●与信が厚く
●情報が回ってくる導線が豊富で
●金払いがよく、「NO」と言わない
●即決即断即行動ができる
僕はどうしても買いたい物件の場合、現金で買えることを再三アピールしたり、業者にお小遣いを渡したりしています。この方法で一番手にしてもらうことが多いです。
とはいえ、初心者が、すぐにこれらの条件を揃えることはできません。そういう場合は、買える客になるために、時間をかけて、一つひとつ「準備」をしていきましょう。
自分一人では無理なら、仲間と組んでスケールを大きくするという方法もあります。「自分が買えなくても、自分の知り合いのコミュニティの仲間の誰かが買います」と相手に伝えることで、紹介される物件が増えることはよくあります。
次に物件価格の交渉ですが、これは売主も絡む交渉のため、それぞれの立ち位置や思惑、メリット・デメリットなどを考えて進めることになります。
自分勝手な要求をしてもうまくいきません。相手の足元を見ながらの状況判断なので、交渉術もケースバイケースになります。
交渉しやすいケースとしては、物件を内覧した際、明らかに修繕が必要な個所や瑕疵が見つかった場合、事前に修繕しておいてもらうか、その分を値引いてもらうという方法があります。
仲介手数料については、下手に値切ったばかりに物件をよそに持っていかれたら嫌なので、基本的に値切ることはありません。ただし、例えばロットが大きい場合など、どうしても値切りたいときもあります。
そういう場合の交渉は、タイミングと言い方が重要になります。どうするかというと、あらかじめ内覧に行って、修繕が必要な箇所があるなどの交渉材料を見つけておくのです。ただし、それについては諸条件がまとまり、契約する段階まで何も言わないでおきます。そして、話がまとまったタイミングで、「ちょっとごめんなさい、いいですか?」という感じで話を切り出します。
言い方に関する注意点としては、ロットが大きいときほど金額ではなく、「%」を使った話をすることです。例えば、5億円の物件なら、仲介手数料は3%+6万円+消費税で1600万円程度になります。これを「500万円値引いてくれませんか」とお願いするよりも、「2%に下げてくれませんか」と言った方が、交渉している額は一緒であるにもかかわらず、小さい値引きをしているような印象を与えられるのです。
交渉は、ちょっとした言い方の工夫で、相手に受け入れられやすくなることがあります。意識して臨んでください。
木下 たかゆき
不動産投資家