長期で資産運用を考えたとき、相続税は100%発生する「債務」ともいえます。子の代、孫の代まで資産を守っていくためには、かかる相続税も考慮に入れた利回りを試算することが重要です。本記事では、不動産と金融商品の「親子二世代の運用」を比較します。
まず、父親が5億円で金融商品(利回り4%)を購入し、利子・配当の再投資を続けて20年間運用すると、次の図表4のように11億円まで増えます。売却するとしても税引前で11億円の現金が手に入ります。元本が2倍以上になりましたから、一見、とても素晴らしい成果に見えます。
次に、父親が5億円で金融商品(利回り4%)を購入し、利子・配当の再投資を続けて20年間運用を行い、相続を迎えるシナリオを検討します。相続人である子供が運用を継続し、さらに20年間運用を行いますと(トータル40年間の運用です)、次の図表5のように12億円まで増えます。
父親の世代で11億円まで増やしたのに、子供の世代では、40年後に12億円となり、プラス1億円しか増えていません。これは、相続の際に相続税として▲5.5億円の支出を伴うからです。40年目に現金化したとすれば、最終的な税引前の利回り(IRR)は、2.2%となりました。相続税という大きな支出がありますので、当初の利回り4%を下回る結果となるのでしょう。
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継とM&A実務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。
WEBサイト https://kinyu-chukai.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=142
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載資産3億円以上の人のための「相続税対策を徹底的に意識した」資産運用術