長期で資産運用を考えたとき、相続税は100%発生する「債務」ともいえます。子の代、孫の代まで資産を守っていくためには、かかる相続税も考慮に入れた利回りを試算することが重要です。本記事では、不動産と金融商品の「親子二世代の運用」を比較します。

10億円の現金の相続には5億円の相続税を支払います。資産家の手取りは5億円です。その後、資産家が資産運用して2億円増やしたとすれば、7億円となります。しかし、7億円の現金の相続には3億円の相続税を支払います。子供の手取りは4億円です。その後、子供が資産運用して2億円増やしたとすれば、6億円となります。

 

しかし、6億円の現金の相続には3億円の相続税を支払います。孫の手取りは3億円です。このように、相続税という損失が不可避であることから、個人財産の規模がどんどん縮小します。これは、相続税という制度が設けられている日本特有の現象です。

 

[図表3]相続による財産規模の縮小

 

ちなみに、香港には相続税の制度がなく、不動産オーナーはいったん所有権を獲得すると、相続税を理由に売却を強いられることがないため、一生涯そして世代を超えて不動産を所有し続けることになります。その結果、建物の建て替えは行われず、ボロボロの建物を使い続けることになるわけです。

 

それでも売りに出される不動産がないことから、僅かな供給に対して需要が過大なものとなり、不動産価格が信じられないくらい高くなります。

不動産と金融商品「親子二世代運用」の比較

ここで、シンプルな資産運用モデルを想定し、理想的な資産運用の方法を検討します。単純化するために、不動産と金融資産はそれぞれ1種類の銘柄しかないという前提を置きましょう。現在(2018年)の不動産市況を前提とすれば、標準的な表面利回り(家賃収入)が5%程度。諸経費を差し引くと、不動産の利回りは概ね2%と考えます。

 

一方、金融商品の利回りは、現在(2018年)の金融市場で取引される大企業の社債(たとえば、ソフトバンクなど)を想定して、概ね4%と考えることにしましょう。つまり、不動産よりも金融商品の利回りのほうが2%高いということです。これには異論があるでしょうが、筆者が実務を通じて持っている感覚です。

 

不動産の利回りと金融商品の利回りには、いずれも所得税等(または法人税等)が課されますが、概ね20%程度であり、利回りの変動によって20%程度の誤差は当然に出るはずで、大勢に影響ないため無視することにしましょう。ただし、相続税は最高税率55%と無視できないため、一律50%という前提を置くこととします。

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