「金融資産」への投資のメリット・デメリット
積極的な投資で資産を増やし、年金で不足する分を補填するといっても、投資の対象はさまざまだ。投資初心者にしてみれば、何に投資をすればリスクが少ないのか、あるいは大きなリターンを得られるのか、皆目見当がつかないという人も多いだろう。また、投資というと多額の資金がなくてはできないものと思いこみ、二の足を踏んでしまう人もいるだろう。
だが、投資といえども、すべてが多額の資金を必要とするわけではないし、ギャンブル性が高いわけでも、やり方が難しいわけでもない。最近では、少額でも可能なものや、リスクの少ないものなど、初心者でも気軽に始められる投資商品も多いのだ。
投資対象を大別すると、土地や建物、金(きん)、美術品といった実物資産と、債券や株
式、投資信託、外貨などの金融資産がある。この2つの大きな違いは、実物資産は「現物が存在する」ということだ。そのため、株式などの、いわば「実体のない」金融資産は、仮にその会社が倒産すれば価値がゼロになってしまうリスクがあるのに対し、土地や貴金属などの実物資産は、市場の動向によって大きく値を下げることはあるものの、無価値になることはない。
また、金融資産に比べて価格の変動が比較的少ないのも、実物資産の特徴のひとつである。特に、グローバル化が急速に進んだ昨今においては、金融危機や世界情勢の変化により、株式や為替は激しく変動しがちだが、その点、実物資産は、歴史的に見ても金融危機や世界情勢の変化に強い傾向が見られることから、投資のリスクをできるだけ避けたい人には向いていると言える。
それに株式投資は、資産運用といえば誰もが最初に思い浮かべるものではあるが、かなりハードルが高いため、投資初心者にはおすすめしない。株式投資で利益をあげるためには、そのための専門知識や、投資にかける時間とノウハウが不可欠となるからだ。日々めまぐるしく変わる株価の動きを常にチェックしながら運用するなど、よほどの経験がなければできないものだ。
とはいえ、短期間で大きなリターンを求めている人には、金融資産のほうが向いているかもしれない。株式や上場投資信託(ETF)は、値上がり後にタイミングよく売却すれば、すぐに利益が得られるからだ。
外国為替も株式などと同じで、購入した通貨の価値が高くなった時点で売却すれば、利益を得ることができる。たとえば、1ドル100円のときにドルを購入し、150円の時点で売却すれば、単純計算で1ドルあたり50円の利益が生まれるというわけだ(そこから為替手数料などが引かれる)。
また、FXは、この為替取引を元金の10倍以上の金額で行うことが可能だが、その分リスクも大きくなる。最近では、25円からできる積立FXや、1500円からできるETFなど、初心者向けを謳う少額投資も人気だが、当然リスクがあることは最初から覚悟しておくべきだろう。
実物資産運用のメリット・デメリット
もちろん、実物資産の運用も、リスクが皆無というわけではない。たとえば不動産の場合には火災や地震、土砂災害などにより被害を受ける可能性もあるし、金やプラチナ、美術品などの場合には盗難の可能性もある。
それでも、不動産の場合は保険に入ることでリスクをある程度は回避することができるし、貴金属に関しても、純金積立の場合は信用できる運営会社を選択するとか、現物購入の場合は銀行の貸金庫に預けるといった策を講じることで、盗難のリスクを最小限にすることは可能だ。
株価や為替が急激に変動するいまのような世の中では、より安全な資金運用として、実物資産への投資の人気が高まるのも当然と言えるかもしれない。なかでも、経済状況や為替相場の変動に影響されにくく、資産価値も落ちにくい不動産は、長期的な安定を望める投資対象だと言えるだろう。
特に不動産投資の場合、土地や建物そのものの価値だけではなく、プラスαとして安定収入が期待できることが特徴だ。
貴金属や美術品といった、その他の実物資産や、金融資産の場合、どれだけ所有していても、売却しないかぎり収入は得られない。しかし不動産は、賃貸に出すことによって、所有しながら「家賃」という安定収入を得ることができる。
不動産投資には高額な購入資金が必要だと思われがちだが、いまは若い世代でも購入しやすくなっている。投資用のワンルームマンションなら1室から始められるので、ある程度の頭金さえ用意できれば、初心者や、資金にそれほど余裕のない人でも、始められるのだ。しかも、家賃でローンを返済し終えたあとは、家賃収入がそのまま年金がわりになるのだから、老後の備えにこれほどふさわしい資産運用はないだろう。