今回は、なぜ東京の不動産が突出した価格上昇を見せるのか、その理由を解説します。※本連載では、多数の著作を持つ評論家・パーソナリティとして知られる鶴蒔靖夫氏の著書、『信頼が絆を生む不動産投資』(IN通信社)から一部を抜粋し、年金制度や貯蓄などさまざま問題と合わせ、日本のこれからの不動産市場について見ていきます。

マンションの「2020年問題」が懸念されているが…

特にいま注目を浴びているのは、東京の不動産投資だ。これほどの活況が見られるのは、2020年に開催される東京オリンピックの影響によるところが大きい。というのも、東京でのオリンピック開催が決定してからというもの、東京都内の不動産価格は上昇し続けているからだ。特に都内のマンション価格の高騰は著しく、開催が決まってからの2年間で約11%も上昇している。

 

なかでも、オリンピック会場が集中する湾岸エリアの不動産価格は、真っ先に上がった。海外の投資家(特に中国の投資家)が、オリンピック開催地の不動産の値上がりを見込んで、マンションを次々と購入したからだ。日本銀行の金融緩和の影響で円安になったことも、海外の投資家を呼びこむ大きな要因となった。いまや東京の不動産業界は、まさにオリンピックバブルの様相を呈しており、都心のマンションの価格の上昇はピークを迎えているとも言えるだろう。

 

そのため、不動産関係者のなかには、現在の不動産業界の活況は東京オリンピック開催までであり、終了後はいっきにバブルがはじけて不動産価格が暴落すると予想する者も少なくない。マンションの「2020年問題」などと呼んで、その危険性を指摘する者もいるほどだ。

 

しかし、これまでもコンピュータの2000年問題や、団塊の世代の大量退職にともなう2007年問題など、巷ではたびたび「○○年問題」がまことしやかに囁かれてきたが、実際に社会が混乱に陥るほどの問題が起きたためしがない。同様に、マンションの2020年問題も、特に大きな混乱が起きるような事態にはならないだろうと私は考えている。

 

というのも、東京の不動産価格が上昇している原因は、オリンピックだけにあるわけではないからだ。

 

東京では現在、渋谷駅周辺をはじめ、大規模な再開発プロジェクトがあちらこちらで進められており、2021年以降にそれらが次々と完成を迎える予定となっている。

 

さらに、2027年には東京~名古屋間を結ぶリニア中央新幹線が開業する。開業後は、東海圏からさらに多くの人が東京に流れこんでくるのは間違いないだろう。そのターミナル駅となる品川駅周辺では、日本を代表する国際交流拠点としての大規模な再開発が行われる予定だという。

 

このように、オリンピック関連以外にも、再開発やリニア中央新幹線開業といったトピックスが目白押しだからこそ、多くの投資家の注目が、東京に集中しているのだ。

日本の人口は減っても、東京への人口一極集中は続く!?

また、オリンピック以後の東京は人口が減少し、それにともなって住宅の供給過多が進み、空き家や空室が増加して、不動産価格の下落を招くのではないかとの指摘もある。しかし、それに関しても、心配することはないと私は考えている。たしかに、少子高齢化によって、日本の人口そのものは今後も減少の一途をたどるに違いないが、地方都市ならともかく、東京の人口が減るとは思えないのだ。

 

総務省が公表している「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」というデータによれば、2017年1月1日現在の東京都の人口は1353万53人で、前年度比11万4704人の増加である。こうした東京の人口増加は、今後も続くに違いない。

 

それに、最近は大学の都心回帰が進んでいる。都心の地価高騰の影響で、かつては多くの大学がこぞって郊外の広大なキャンパスに移転したが、ここにきて18歳人口が減少したことにより、各大学は生き残りをかけて、より学生にとって魅力的で利便性の高い都心に戻ってきているのだ。実際、中央大学や東京理科大学、明治大学、青山学院大学、東京歯科大学、立正大学、大妻女子大学など、最近になって都心にキャンパスを移した、あるいは移そうとしている私立大学は多い。

 

こうした大学の都心回帰が進めば、それだけ地方から東京に移ってくる大学生人口は増えるだろう。当然、ワンルームの賃貸マンションやアパートなどの需要は高まる。

 

ほかにも、最近は晩婚化が進んでいることも、ワンルームマンションの需要を押し上げることに一役買っている。

 

いくら地方創生が叫ばれようとも、雇用があり、若い世代を引きつける街が点在する東京は、やはり魅力的である。東京への人口一極集中は、今後も続くに違いない。

 

そして、東京における賃貸需要がこれだけ高ければ、オリンピックバブルが終焉を迎えたとしても、不動産価格がいつまでも下落し続けるという可能性は、まずないだろう。したがって、少なくとも東京における不動産投資は、今後も手堅い資産運用における最も有望な選択肢のひとつであり続けるだろう。

信頼が絆を生む不動産投資

信頼が絆を生む不動産投資

鶴蒔 靖夫

IN通信社

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