前回は、金融機関は「借り手」「物件」のどこを見て融資判断を下すのかを解説しました。今回は、銀行の融資判断のうち、不動産鑑定評価基準と銀行独自の指標を持つケースについて取り上げます。

各金融機関ごとの基準とシミュレートから総合判断

前回の続きです。

 

不動産鑑定評価基準は次のようなものです。

 

●不動産鑑定評価基準

・類似の不動産の取引事例との比較から求める方法

・借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法

・土地と建物に係る還元利回りから求める方法

・割引率から求める方法・借入金償還余裕率から求める方法

 

このような複数の方法から妥当性の高いものを組み合わせて総合的に利回りを求めるとされているようです。つまり、具体的な計算式は存在しないということです。

 

もう一つ収益還元評価には、DCF法と呼ばれる計算方法もあります。DCFとはディスカウントキャッシュフローの略で、不動産の保有期間中に得られる利益と、将来の予想売却価格を、現在価格に割り戻して計算します。DCF法は精度が上がる分、計算式もかなり複雑なものとなり、完全に不動産鑑定評価の領域となります。投資家としては知識として用語を知っているだけで十分です。

 

実際には「積算評価だけ」「収益還元評価だけ」といった偏った基準で判断する金融機関はありません。

 

「積算評価」「収益還元評価」の組み合わせと投資家の属性によって決まります。なかには「積算評価をより重視する銀行」もありますし、「収益還元評価をより重視する銀行」もあります。その判断の基準は各金融機関によって変わるところがあり、それらに加えて金利上昇や空室率をシミュレートして(ストレステストとも呼ばれています)、自行の基準を満たしていたら、融資を出しているのです。

地域の特徴などから、独自の指標を持つ銀行もある

そのほか、その銀行独自の指標を持つケースもあります。

 

不動産投資に積極的な地方銀行のなかには、東日本大震災以降は沿岸部の海抜レベル5メートル以下の物件を避けたり、熊本地震で倒壊した鉄骨のピロティ構造(1階が駐車場などで梁と柱だけで支える構造)で住戸が2階以上にある物件には融資をしないといった、リスクを避けるための厳密なマニュアルが決められているところもあります。その基準は非常に厳しく、この地方銀行が収益性はもちろんのこと、安全性にもしっかり力を入れているのが分かります。

 

結局のところ、銀行の融資が付くということは、銀行目線で見てある程度、賃貸経営が成立すると判断している物件となります。

 

銀行も好き好んですぐに返済が焦げ付いて回収不能になるようなプロジェクトにお金は出しません。そして、賃貸経営のライバルの大半は、経営意識やビジネススキルを持たない、地主のおじいちゃんや、おばあちゃんたちです。地方に行けばそれは特に顕著です。

 

ビジネスパーソンとして頑張っているあなたが、本業で培ったスキルを駆使するだけで、優位に立てることを忘れないでください。

 

また、ここまで紹介した融資基準はあくまで原稿執筆時点での評価基準であり、今後、金融庁の指導でいかようにも変わります。もっと言うと、同じ銀行内でも支店や担当者の違いで、融資への温度感も大きく変わります。原稿執筆時点で、「今後は融資が引き締めになる」といった噂を耳にする状態ですので、「買えるときに買っておく」という決断力が非常に重要となります。

 

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本連載は、2017年8月15日刊行の書籍『区分物件オーナーのための 神速!億万長者計画』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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