前回は、なぜ「フルローン物件」は不動産投資家に人気が高いのか、その理由を取り上げました。今回は、金融機関は「借り手」「物件」のどこを見て融資判断を下すのかを解説します。

融資判断で見るのは「借りる人の属性」

前回の続きです。

 

では、金融機関はお金を貸す・貸さないをどうやって判断するかというと、借りる人の「属性」を見ています。属性とは筆者著書『区分物件オーナーのための 神速!億万長者計画』で詳述したとおり、勤務先、勤続年数、年収、資産といった、融資の返済に影響がある項目全般を指します。専門性の高い資格や人柄も、広い意味では属性となります。

 

とはいえ高収入のエリートサラリーマンでなければいけないということではありません。現状でいえば、融資を利用するには金融機関のテーブルに載ることが大前提となり、その基準ともいえるのが年収700万円です。ただその年収に満たない人でも融資を受けられるケースはあります。

 

共働きの夫婦であれば、合算した年収が700万円以上であれば融資を受けることが可能です。どうしても年収が届かないという人は、自己資金を貯めながら、本業を頑張ったり、より条件の良い会社へ転職したりすることをおすすめします。専業主婦の奥さんにパートに出てもらって条件をクリアしたという人もいます。

物件の評価基準は「積算評価」「収益還元評価」の2つ

銀行は借りる人の属性を見る一方で、物件の評価もきちんと行い総合的に融資の判断をしています。銀行の物件評価には大きく分けて、「積算評価」と「収益還元評価」の2つがあります。

 

まず積算評価の求め方ですが、収益物件の価格を分解すると、それは「土地」と「建物」の価格の合計となります。「土地」の価値は「路線価」で求められ、「建物」の価値は「建物再調達価格」から残存価格が導き出されます。

 

この2つの合計が収益物件の「積算価格」となります。文字だけで表現すると直感的に理解しにくい部分なので、参考までに計算式も載せておきます。この式を暗記する必要はまったくないので、頭の片隅にでもとどめておいてください。

 

一方、収益還元評価では、年間の純収益を還元利回りで割った数字が、物件評価額となります。純収益とは、家賃収入から維持管理費、修繕費、固定資産税といった必要経費を引いた金額となります。還元利回りはキャップレートとも呼ばれており、周辺の取引事例から適切な利回り水準を求めたものです。

 

 

●積算評価の計算法

積算価格=①土地価格+②建物価格

①土地価格=前面道路の「路線価」×土地平米数

②建物価格=建物面積×再調達価格×(残存年数/法定耐用年数)

 

 

●収益還元評価の計算法

収益還元価格=年間の純収益÷還元利回り

 

例えば還元利回りを5%と設定し、年間の収益が1000万円、年間経費(維持管理費・修繕費・公租公課・損害保険料・空室等損失相当額等)が200万円だったとして、収益還元価格は次のとおりです。

 

(1000万円−200万円)÷0.05=1億6000万円

 

1億6千万円ということになります。この計算式を見て、「還元利回りの設定が計算結果に大きく影響する」ことに気がついた人もいるかもしれません。この還元利回りが曲者で、求める基準があってないような存在なのです。

 

この話は次回に続きます。

 

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本連載は、2017年8月15日刊行の書籍『区分物件オーナーのための 神速!億万長者計画』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

区分物件オーナーのための 神速!億万長者計画

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田中 竜太,太田 将司

幻冬舎メディアコンサルティング

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