前回は、地銀の「アパートローン」を利用するメリットを紹介しました。今回は、なぜ不動産投資家がフルローン物件を好むのかを見ていきます。

フルローン物件は「CCR」が高く、投資効率が良い

前回の続きです。

 

続いては「いくら借りるのか」を取り上げます。不動産投資の世界では自己資金ゼロで購入できる物件というものが存在します。自己資金ゼロで融資を受けることをフルローンといいますが、何もないところからお金が湧いてくるようなもので、この場合、利回りは無限大――といいたいところですが、実際には諸経費を考慮する必要があります。

 

いずれにせよ、かなりの高利回り投資となり、購入時の諸費用といった投下資本の回収は3年もあれば完了するでしょう。

 

フルローン物件が投資家に大人気なのは、CCR(Cash on Cash Return の略、投下資本を何年で回収できるかを示す指標)が非常に高く、投資効率が良いからです。現金をなるべく温存しながら、融資の力を使って物件を買い進めるのが得策だということです。高いCCRを実現して素早く資本を回収するのが「神速の資産形成」の基本戦略となります。

 

これは、ある程度の資金力がある投資家でも同様です。何億円も現預金があれば別ですが、数千万円、ましてや数百万円といった限られた資金を、購入のために使ってしまうのはむしろリスキーです。

 

世間で「お金の専門家」とされるファイナンシャルプランナーに、住宅ローンについて相談をすると、まずは頭金をある程度準備するよう提案されます。すでに借入を行っている場合は、住宅ローンの繰り上げ返済をすすめられるでしょう。

 

確かに、頭金を増やして借入額を減らす、もしくは繰り上げ返済を実行して毎月の返済額を減らすことは、家計も安定するので悪いことではありません。ただし、これは住宅ローンに限った話です。

事業の世界では「手持ち現金の温存」が鉄則

対象がマイホームではなく、アパート・マンションといった収益物件となると話は変わってきます。収益物件の頭金を増やしたり、繰り上げ返済をしたりすることは、メリットよりもデメリットのほうが大きいのです。例えば、繰り上げ返済であれば手数料がかかる点が挙げられます。そして、最大のデメリットは、安易に手元の現金を減らした結果、資金繰りの悪化に対応できなくなることです。

 

「キャッシュ・イズ・キング」という言葉があります。事業の世界では、手持ち現金は常に温存しておくのが鉄則です。手元にある現金は次の物件を買うときの「見せ金」として使えますし、不意の出費に備えることになります。

 

長い賃貸経営のなかで、入退去に伴う原状回復費用(リフォーム費用)やエアコンなど住宅設備が故障した際の修理費といったものはつきものですし、急な水漏れなど予期せぬ出費が重なる時期もあるものです。

 

そのようなときに、「先月、繰り上げ返済したから手元に現金がまったくない」という状況だとしたらどうでしょうか。最悪の場合、毎月のキャッシュフローがプラスで黒字であるにもかかわらず、資金繰りが原因で破綻してしまうこともあり得るのです。

 

一時的な要因をしのげず経営破綻してしまったら、志半ばで倒れるようなものであり、悔やんでも悔やみきれません。このような不本意な状況を避けるためにも、現金はなるべく温存して不測の事態に備えておくのです。もちろん、物件取得後しばらく経ってから徴収される不動産取得税のほか、毎年支払う必要がある固定資産税・都市計画税の支払いも忘れてはなりません。

 

ファイナンシャルプランナーはあくまでも「家計のお金の専門家」であり、不動産投資を実践している人、詳しい人はごく少数です。不動産投資家であれば、「世間一般のお金のルール」を鵜呑みにしないようにしましょう。

 

筆者著書『区分物件オーナーのための 神速!億万長者計画』の冒頭、レバレッジについての解説では「仮に買えるだけの現金があっても、融資を使って買うべき」という考えを紹介しました。これは、CCRが高い効率的な投資を行いながら、自己資金を温存して不意の出費に備える、攻めと守りが一体化したような理にかなった戦略なのです。

 

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本連載は、2017年8月15日刊行の書籍『区分物件オーナーのための 神速!億万長者計画』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

区分物件オーナーのための 神速!億万長者計画

区分物件オーナーのための 神速!億万長者計画

田中 竜太,太田 将司

幻冬舎メディアコンサルティング

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