外国人が購入可能な物件は、数に限りがある
ベトナムでは2015年7月に住宅法が大幅に改正され、外国人が指定された不動産を購入できるようになりました。2015年7月以前は、ベトナム人と結婚している外国人か、ベトナムに進出している外国企業が「住居用」として不動産を購入することは認められていました(ただしこの場合、建物、土地は国の所有のため、期限付きの使用権)。しかし実際は、購入資格がある外国人であっても、購入許可や購入までの申請等に大変な時間と手間がかかるため、現実に購入するケースはわずかでした。
それが2015年7月の改正後、ベトナム国内在住者だけではなく、ベトナムに入国を許された人(パスポートの入国印がある人)も、年齢など一定の制限は設けられていますが、購入できるようになりました。そのため、外国人のベトナム不動産投資が大幅に増えたのです。
ただし、外国人が購入できる物件は数量が限られています。外国人が購入(使用権)できる物件として認められているのは、デベロッパーの新規開発した物件(外国人に販売できる許可済み)のコンドミニアムで棟の30%、住宅地域の戸建ての30%までです。
外国人が購入できない物件が販売されていることも
上記で述べた、「ベトナムでは外国人が購入できる物件は限られている」という実情を踏まえたうえで、現在の問題を見ていきましょう。
この限られた物件の中で、自分が購入した物件が「本当に外国人が購入できる物件かどうか」確認したことがある人は、あまりいないのではないかと思われます。恐らく確認する手立てもわからず、不動産販売仲介会社、もしくは開発したデベロッパーを信じ、お任せしている方が多いのではないでしょうか。
筆者が昨年までVINHOME(販売事業部)の1次代理店として「Central Park」と「Golden River」の販売を行っていた頃、外国人に優先して販売できる1次代理店は限られていました。23社の1次代理店中、優先的に外国人向けの販売枠を持っているのは3社で、その他20社はベトナム人を優先した販売枠でした。他の20社が販売する場合は、販売事業部に確認を取ってから、外国人向けに販売する仕組みになっていたのです。
最初のうちは外国人枠に余裕があったので、事後の確認でも物件確保が可能だったのですが、売出しも後半に差し掛かった頃には、外国人販売に優先されていた当方でも、販売事業部に確認しないと外国人に販売できる物件かわからないほど、外国人枠の販売物件は少なくなり、物件の取り合いが起きていました。
そのなかでも特に注意が必要だったのは、ベトナム人が購入した物件を本契約前に転売して取得する方法です。ベトナム人同士なら問題ありませんが、ベトナム人から外国人に転売する場合は、事前に外国人に販売できる物件なのか調べる必要がありました。これは1次代理店側から販売事務局に確認する必要があり、事務局から事前に情報開示が行われることはありません。
実際に、ベトナム人がデベロッパーを挟まず、外国人に直接ベトナム人が購入した「外国人販売枠がない物件」を転売したケースもあり、その際の「ピンクブック(登記簿)」(※第9回参照)の申請は、ベトナム人名義のまま提出されています。同じような事例は他でも聞いており、デベロッパーから現地販売代理店が購入した物件を、外資会社が外国人に利益をのせて販売するなど、本来は外国人が購入できない物件の販売がされていることもあります。
購入物件が「外国人枠かどうか」を確認するには?
いずれにしろ、外国人向けのピンクブックの申請を行いはじめるこれからと、申請後の政府機関認証時(提出後半年~1年後)の頃には、実際に購入した物件が自分の所有権になるのか、結果が分かることになります。
以下、事前に購入した物件が外国人枠かどうかの確認方法です。
①デベロッパーに直接確認する
デベロッパーと直接契約を確認⇒契約内容を確認しピンクブック(登記簿)申請者(提出済み若しくは提出前)の名義を確認しデベロッパーが外国人枠として申請しているかを確認。
②デベロッパーと直接確認が取れない場合の対処
仲介先の不動産販売会社に依頼⇒契約内容を確認しピンクブック(登記簿)申請者(提出済み若しくは提出前)の名義を確認しデベロッパーが外国人枠として申請しているかを確認。
もし、購入した物件が外国人購入枠の物件でなかった場合は、物件の所有者(この場合、ピンクブック申請前の名義者)と協議し事実確認を明確にし、名義が変更できない場合は物件の買取り又は転売にて支払った費用を回収しなくてはいけませんが、ハードルは高いでしょう。
恐らくほとんどの読者の方は、こんなことはあり得ないと思っているのではないでしょうか。私もほとんどの場合は、しっかりしたデベロッパーや販売代理店が問題を起こさないように対応していると思いますが、残念ながら絶対ではありません。その上で、人任せにせずに、しっかりとご本人で確認するのが、不動産投資のリスクを軽減させることになるのです。