前回は、ベトナム不動産を購入する際の注意点を紹介しました。今回は、ベトナムで「外国人」が「不動産賃貸業」を行う際の留意点を見ていきます。

登記簿発行前の賃貸開始は、法的には「グレー」

2015年7月の住宅法改正により、外国人は指定された不動産の使用権を購入できるようになりました。その物件の多くは2017年の中頃から引き渡しが始まり、外国人オーナーによる不動産賃貸事業が開始されました。ここでは、外国人が不動産賃貸業務を行う上での法律上の注意点を紹介します。

 

まずは、法律上の権利についてです。ベトナムには現在、土地の使用権、建物の所有権に関しては通称「レッドブック」及び「ピンクブック」と呼ばれる登記簿があります。新規物件であれば物件の引き渡し後に開発会社から行政機関に登記申請が行われ、約3ヶ月~1年くらいで受理され、権利の確定及び登記簿の発行が行われます。初回発行までは時間がかかりますが、発行済みであれば登記簿の名義を書き換えるだけなので短期間でスムーズに使用権や所有権の変更が行えます。

 

ここでよく問題になるのは、登記簿が発行される前に物件の賃貸や転売で収益を上げることができるかという点です。法律上は申請中ということで、登記簿発行が行われていない為、土地の使用権や建物の所有権はデベロッパーである開発会社、または販売会社の権利になっています。そのため、権利を証明できる唯一のものはデベロッパーとの販売契約書だけという状態です。

 

法律においても登記簿発行までの権利が購入者にあるとの明確な説明はありません。しかし実際には、登記簿が発行される前でも、物件の引き渡しが終了した時点で購入者の物件として賃貸や転売が行われている状況です。いわゆる、法的にはグレーゾーンという解釈です。したがって、海外の弁護士の立場から言えば、「登記簿がまだ発行されていないのであれば、賃貸も売買もできない」との解釈になります。これは法律上、ベトナム人も同様の扱いとなりますが、ベトナムでは登記簿が発行される前であっても賃貸や転売を問題なく行っています。なぜなら合法的に可能な手続きが行える実情があるからです。

リスク回避のためには「現地の法律」の理解が重要

この合法的な手続きというのは、物件転売の場合では登記簿の申請前(行政機関に提出前)であれば、物件の販売者、購入者、デベロッパーの三者で契約を締結し、デベロッパーが登記簿の名義を購入者に変更して申請を行うことで、登記簿発行の前に転売締結が完了するという方法です(デベロッパーによっては申請前の登記簿の書き換えを行わないところもあるので確認が必要です)。この方法で注意が必要なのは、既に登記簿を行政機関に申請済みの場合、申請中の登記簿の使用権、所有権を変更できないため、転売契約ができないという点です。

 

物件賃貸の場合にも同じように、行政機関、関係各所への届け出が必要です。きちんと申請・登録を進め、それに応じた税務申告を正しく行って認証を受ければ、海外への送金も問題なく行うことができます。ちなみに、税務申告には入金月の税務申告(付加価値税、所得税)と、年度末の確定申告(所得税)が必要であり、付随してベトナム国内の銀行口座による「税コード」の登録も必要です。税務申請は、手間を要する作業ですので、税理士事務所に頼むと費用がかさみます。そのため家賃利回りも想定して物件を吟味する必要があります。

 

ベトナムはしっかりとした法治国家であり、法律も厳粛で厳しい国です。特に外国人は法律を理解し、対応しなければいけません。ひとたび法律違反を犯せば国外退去、出入国禁止、国内の財産没収などが行われる可能性もあるのです。この連載のなかで繰り返し書いていますが、投資する国の法律をしっかり理解することが、先々のリスク回避に繋がるのです。

 

ベトナムで外国人が不動産を本格的に購入できるようになって未だ3年10ヶ月弱です。正直なところ、法整備が追いついていない部分もあり、デベロッパーや消費者の独自の解釈に拠るところもあって、何が正解かわからない点も存在します。その為に、私を含めた外資系の会社は右往左往することもあります。しかし、本当に現地事情に精通していれば、その都度、情報のアップデートが出来るため、対応・対策を行うことが可能です。現地に精通し、現地に根付いて、しっかりと事業を行う信用できる業者を見極めることも、ベトナムでビジネスを行う際には重要な点です。

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