不適当な処理が横行し、税務調査を受ける事態に発展
B社はインターネットで通販を行うECサイトを運営しています。従業員は20名、年商は3~4億円になります。
同社では経営陣にも従業員にも経理に関する知識を満足に持った者がおらず、日ごろから杜撰(ずさん)な会計処理が横行していました。
取引先とのお金のやりとりでは税抜きと税込みが混在しており、そのために例えば同じ5万円の取引であっても、支払う金額が「5万円」や「5万円プラス税額」などというように担当者ごとにまちまちの状態になっていました。
また、請求書の管理も適当で、支払ったはずの相手に再度支払う二重払いも当たり前のように起こっていました。
さらに、経費精算に関するルールも定められておらず、従業員に仮払金を渡したあとで、使った経費を差し引いた残金が戻されないケースも少なからず発生していました。
このように、B社の経理体制は問題だらけであり、そのためにいつ大きなトラブルが起きてもおかしくないありさまでした。案の定、税務署に目をつけられるところとなり、ついには税務調査を受ける事態を招いてしまったのです。
「領収書を撮影&スマホでアップ」がルール化されると…
税務調査で厳しい追及を受けたことに懲りたB社は、外部の専門家に依頼して、自社の経理システムを抜本的に改革することを決めました。
経理のクラウド化が全社的に進められたことにより、外部の専門家と社内の会計データをリアルタイムで共有することが可能となりました。専門家は、それらのデータを精査しながら、経理・会計上の問題点について次々と改善策をアドバイスしていきました。
その結果、前述した税抜きと税込みが混在していた状況や請求書の不適当な管理方法も改められることになりました。
また、経費精算についても、経費を払ったらすぐに領収書やレシートをスマートフォンのカメラで撮影してクラウドにアップすることをルール化し、仮払金の残金処理を監視する仕組みが設けられました。例えば20万円の仮払金を渡して15万円が経費として使われたような場合には、5万円の返金を促す通知が自動的に送られる仕組みを導入したのです。
こうして経理の透明化が進んだ結果、従業員の間には「常に見られている」という意識が浸透し、「不正が起こりにくい環境=内部統制」が自然と形づくられていきました。
それまで、内部統制が不十分だったために、B社は、社内の不正や経理ミスによって少なからぬ額の金銭的な損失を被っていたものと推測されます。
しかし、内部統制が確立されたことにより、そうした損失は一切発生しなくなりました。その結果、クラウド経理を導入する前は数百万円程度だった同社の余剰資金は、現在、1千万円超に達しています。