エリートサラリーマン・須藤を通して「不動産投資」について学ぶ本連載。今回は、営業課長・九門が購入を勧めてきた投資用マンションについて見ていきます。

「銀行のお金で生命保険に入れるということです」

前回の続きです。

 

「そうですか。ご結婚がまだの場合、保険に入られてない方が多いですよね。実は、マンション・オーナーになると、無料で保険に加入できるんです。団体信用生命保険といって、銀行で住宅ローンを組むと付いてくるものなのですが、ローンを完済する前に須藤様が亡くなられた場合、残りのローンは保険で支払われるんです。

 

つまり、途中で須藤様が亡くなったとしても、残された家族は無料でマンションを手に入れることができます。この保険料は銀行が支払ってくれるので、須藤様はタダで、けっこうな金額の生命保険に加入できるんです」

 

情報量が多すぎて、頭が混乱してきた。

 

「まとめましょうか。マンション・オーナーになることのメリットは、大きく分けると三つです。一つ目は、ほとんど元手をかけずに、銀行ローンでマンションを手に入れられること。当初は、家賃収入でローンを返済するので収入はありませんが、ローン完済後は、家賃収入がそのまま須藤様の収入になります。老後の個人年金みたいなものだと考えていただければいいと思います。

 

二つ目は、ローンの金利返済分が経費になるので、そのぶんの税金が戻ってくるということ。須藤様のように、大企業にお勤めで年収の高い方の場合は、この節税分がけっこうな金額になるんですよね。

 

そして、三つ目が銀行のお金で生命保険に入れるということです。須藤様も、いずれご結婚のあかつきには生命保険を検討されると思うので、今から入っておけば安心ですよ」

 

なるほど、なるほど。オレは情報を頭の中で咀嚼した。さて、これをどう判断するべきか。セールスマンの話をすべてうのみにするほど、オレはばかじゃないつもりだ。うまい話にはやはりどこかで裏がある。だからといって、すべてが噓で、詐欺話を持ちかけられているとも思わない。そんな、調べればすぐに分かるような事実関係で、噓をつく人間は少ないだろう。

「人気が高くなっていて、残り1室しかないんです…」

ひととおり話を聞いたところで、オレはいったん話を切り上げることにした。

 

「お話はよく分かりました。非常に魅力的な話だと思いますので、ひとまず持ち帰って、検討させていただくことにします」

 

そう言って伝票に手を伸ばすと、それを見た九門の手がすっと動いて、伝票をオレから遠ざけて言った。

 

「とんでもございません。コーヒー代はこちらで払わせていただきます。ええ、もちろん、ごゆっくり検討していただきたいところなのですが、少々問題があるんです。というのは、こちらのマンションですが、今非常に人気が高くなっていて、残り1室しかないんです。こうしている間にも、ほかの方が手付け金を入れてしまうかもしれなくて、おそらく明日までは残らないかもしれないと、思っているんです。

 

会社としては、売れるのであれば、どなたに買っていただいてもよいのですが、せっかくのご縁ですから、私としては、ぜひ須藤様に買っていただきたいという思いはあります。というのは、私だって人間ですから、やはり話していて気持ちのいいお客様と、そうでない人がいるんです。須藤様のような方に買っていただけたら、私たちも幸せなんですよね」

 

横で橘高が、うんうんと頷く。オレは、相手のお世辞に簡単に乗るような人間じゃない。意地が悪いかもしれないが、一言、付け加えずにはいられなかった。

 

「そんなこと言って、私に買わせたいのは、お二人にボーナスが入るからなんでしょう?」

 

九門はニヤリと笑った。

 

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本連載は、2017年11月2日刊行の書籍『40歳独身のエリートサラリーマンが「不動産投資」のカモにされて大損した件』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

40歳独身のエリートサラリーマンが「不動産投資」のカモにされて大損した件

40歳独身のエリートサラリーマンが「不動産投資」のカモにされて大損した件

杉田 卓哉

幻冬舎メディアコンサルティング

大手上場企業に勤めるサラリーマン、須藤。40歳独身。将来への不安から、副収入を求めて「新築区分マンション投資」に手を出すが・・・。可愛い声の女性担当者がテレアポでおびき寄せ、イカつい営業マンが強引にクロージング!…

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