前回は、空室リスクを抑え、収益性を高める方法について説明しました。今回は、優秀な不動産仲介会社の見極め方を見ていきます。

「神経衰弱」のような物件紹介をする会社はNG

神経衰弱というトランプゲームをご存じかと思います。裏返しに広げられたトランプを返していき、2枚のカードの数字が同じであれば、返した人はそのカードを自分のものにすることができる。勝敗は取ったカードの枚数で決まります。

 

ゲームとしてはおもしろい神経衰弱ですが、ビジネスでこれをする仲介会社とは付き合ってはいけません。遊びであれば、返したカードが思っていた数字と違っていても問題ではありませんし、逆に違う数字が出てきたほうがゲームは盛り上がるかもしれません。しかし、ビジネスでは「時は金なり」です。無駄にカードを返し続けていても、利益は上がりません。自分が欲しいカードをできるだけ短時間に手に入れることが大事なのです。

 

これを不動産の仲介会社に置き換えてみると、神経衰弱をしている会社とは、お客にいわれた条件を絶対的なものだと信じ込み、それ以上の情報を得ようとせず、ただ、手当たり次第にビルを紹介し続けているような会社です。出した物件のどれを相手が気に入るかを考えずに紹介しても決まるわけはありません。効率が悪過ぎます。

 

逆に神経衰弱をやらない会社とは、カードを返す前に、相手がどのカードを欲しているのかを的確に判断し、気に入るだろう物件だけを厳選して紹介する会社です。

 

たとえば50坪のオフィスを探している企業があったとしましょう。たいていの仲介会社は「よし、50坪のオフィスを紹介すればいいな」と貸床面積が50坪のオフィスだけを選んで紹介するはずです。しかし、それでは神経衰弱です。優秀な仲介会社であれば、50坪と聞いてすぐに50坪のオフィスを探しにかかるのではなく、どうして移転することになったのかを聞くはずです。

 

企業がオフィスを移転する場合、理由はそれほどにはありません。ビルが手狭になったから移転したい、人を募集したいが今のオフィスでは募集をしても人が集まらず採用がうまくいかない、取引関係によく思われたい、今のオフィスでは経費がかさんで仕方ないから安いオフィスに移転したい、人員削減で広さが不要になった、たいていはこの5つの理由のうちのいずれかです。

 

そして、その理由がわかればオフィスを探しているテナントが何を重視しているかがわかります。人員を削減した会社であれば50坪を希望しているといいながら、実はもっと狭くてもよい可能性があり、手狭になったという企業であれば、60坪、70坪を紹介しても決まる可能性があるのです。

住宅の仲介を手がけている会社も依頼先としては論外

また、オフィスに入る机、什器、備品、書庫などの数、有無や応接室、社長室の有無、今のレイアウト、将来の人員計画などでも本当に必要な面積は違ってきます。優秀な仲介会社であれば、そうした事情についての情報を収集した上で、50坪という要望に対し、40坪から70坪までの範囲での提案を行うはずです。

 

もちろん、広さだけでなく、築年数やセキュリティ、二重床、ガレージなどの必要性、レベル、その他設備で絶対に必要なもの、あったら欲しいものは何か、今のビルの不満点なども事前に聞くべき点。それができない不動産会社に仲介を依頼しても決まらないのは当然です。

 

同じ仲介を手がける会社でも、住宅を手がけているような会社に仲介を依頼するようなことなどは論外。絶対に空室は解消されません。

本連載は、2010年12月21日刊行の書籍『空室を抱える中小オフィスビルオーナーのための満室ビル経営』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

佐々木 泰樹

幻冬舎メディアコンサルティング

サブプライム問題、リーマンショックを経て、悪化した賃貸オフィスビル市場は依然厳しく、地方都市では都心以上に苦しい状況にあります。 そのような中、特に中小規模のオフィスビルは、バブル期以前に建った築20年以上のビル…

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