前回は、空室対策のひとつである「優良なテナント」を見つけるためのポイントを説明しました。今回は、募集開始から16カ月空室が続く賃貸ビルのケース例を見ていきます。

必死な思いがなければ、ビル経営はうまくいかない

【CASE1】駅からは遠いが、ロケーションは抜群。厳しい値下げ要望に募集開始後16カ月も空室

 

ビル経営がうまくいかない数々のケースには、ひとつ共通するポイントがあります。それは、経営にあたる担当者が空室に対して責任も、経済的負担も負わなくて済む立場にいるということです。

 

いささか厳しい言い方になりますが、ビル経営が破綻した場合でも自分には何のマイナスもない、そんな立場にいる人が経営について一心不乱に知恵を絞ることはほとんどありません。

 

これがうまくいかなかったら自分が保証人となった借金が返せない、何とか成功させなくてはいけない、そのような必死な思いがなければ、経営はうまくいくものではないのです。CASE1はその無責任さが生むマイナスが非常にはっきりとわかる例です。

空室が3カ月続いたら「募集条件」を見直す

建物自体は悪くはありません。最寄りとなる山手線の駅から徒歩約15分。近年新しく開発され、注目度の高いオフィス街のなかにあり、駅から多少距離はあるものの、眼下に東京湾を望むという、距離的なマイナスを補って余りある、すばらしい眺望のビルでした。建てられたのは平成4年。基準階の貸床面積は200坪あり、ビルのグレードやスペックも標準以上です。

 

しかし、募集を開始してから16カ月。このビルでは当初募集をかけた5フロアはそのすべてが決まっていませんでした。オーナーは一般事業法人で、ビル経営は本業ではありません。そのため、経営者である社長も、ビル事業の担当者もビル経営に関しては素人同然。まったく知識のない人たちでした。

 

しかも、このビルのように、オーナーに本業があり、ビル経営は副業といった場合、本業がそこそこうまくいっていれば、多少副業がつまずいても仕方ない。そう思ってしまいがちです。昨今のように不景気な状況下では、何の努力もしていないにもかかわらず、景気が悪いから決まらないといった、安易な言い訳が認められてしまいます。その結果、このビルは16カ月もの長期にわたって放置されていました。

 

当社の場合、空室を6カ月以上も放置することは絶対にありません。理想は解約通知が退去の3カ月前、あるいは6カ月前に届いたとして、そのテナントが退去するときには新規のテナントが決まっていること。もし、そこで決まらなくても退去後、原状回復が終わって1~2カ月で決まる。これが当社の考えるベスト、ベターなスケジュールです。最悪でも空室になって3カ月で決める、そうでなければどこかに判断ミスがあったと考え、募集条件の見直しで次の手を打つ。それが当社のやり方です。

 

しかし、その6カ月を大幅に上回って空室だったこのビルには、私が見るところ、大きく3つの問題点がありました。

 

次回は、この問題点について見ていきます。

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    本連載は、2010年12月21日刊行の書籍『空室を抱える中小オフィスビルオーナーのための満室ビル経営』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

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    佐々木 泰樹

    幻冬舎メディアコンサルティング

    サブプライム問題、リーマンショックを経て、悪化した賃貸オフィスビル市場は依然厳しく、地方都市では都心以上に苦しい状況にあります。 そのような中、特に中小規模のオフィスビルは、バブル期以前に建った築20年以上のビル…

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