中小企業の資金調達に「電子記録債権」を活用する方法

前回は、中小企業への融資の促進が期待される、「電子記録債権」の活用について取り上げました。今回は、中小企業の資金調達に「電子記録債権」を活用する方法を見ていきます。

過去の決算書を分析しても「未来」のことはわからない

ところで最近「AI融資」という、貸し出し先の決算書を人工知能で分析して融資の可否を判断しようという試みがあるようですが、私からみるとナンセンスです。AIによって審査事務の合理化ができ、審査スピードが早まるというメリットはあるのでしょうが、人間が審査するのと違う結果が出るわけではありません。従来の審査スキームが抜本的に改善されるというわけではないでしょう。

 

また、繰り返しになりますが、今の時代、前年の売り上げを今年も確保できる保証はどこにもありません。まして、日本を代表するような大手企業でさえ粉飾決算の事件が何度も起きています。AIを使っても使わなくても、そもそも監査もされていない中小企業の決算書に依拠した融資判断は不確実性が増していくばかりです。過去の決算書をいくら精緻に分析しても、返済する未来について確たる情報は得られません。

 

それより現在はIT化が進んでいるのですから、月次の受注状況や売掛金の発生状況を確認するほうがよほど有意義です。特に建設業などの受注から支払いまでのサイトの長い業界であれば、かなり先の売上までがほぼ分かります。そして、将来発生するであろう売り上げを担保にすれば、安心して融資できるはずです。

売上管理から資金繰りまでサポートするシステムを提供

こうした新しい融資スタイルを可能にするプラットフォームが、私の会社が提案する「トランザクション・ファイナンスⓇ」です。

 

「トランザクション・ファイナンスⓇ」は、中小企業と地域金融機関の利用を想定しています。地域金融機関は企業との間でこのシステムの利用について合意し、企業は日々発生する売掛債権をできる限り電子記録債権化します。

 

そうすれば、金融機関にとっては毎月の売上の確認が非常に楽です。取引先が多くても、それぞれいくらの売掛債権があるのかは電子データによって一目瞭然です。

 

また、実務的なポイントとして、売掛債権がすべて電子債権化されていれば、銀行による売掛金が実際に入金されたかどうかを確認する突合作業がほとんどいらなくなります。電子記録債権の場合、期日に入金がなければデフォルトの連絡が電子債権記録機関から入ります。逆に何も連絡がなければ期日に決済されていることになります。

 

こうした売上の請求の事務代行、電子記録債権の発生.管理.譲渡、銀行向けの売掛金の評価レポートなどをすべてセットとした企業の売上管理から資金繰りまで、一気通貫でサポートするシステムを「トランザクション・ファイナンスⓇ」としてTranzaxは開発しています。

 

フィンテックが一番力を発揮しなければいけないのは、金融にまつわる社会の課題を解決することです。日本では、中小企業の資金調達こそが最大の課題であると私は考えています。中小企業に役立つ電子記録債権の新たな利用方法こそが、この課題の解決策のメインストリームになると確信しています。

Tranzax株式会社 代表取締役社長

一橋大学卒業後、野村證券に入社。金融法人部リレーションシップマネージャーとして、ストラクチャード・ファイナンス並びに大型案件の立案から実行まで手掛ける。主計部では経営計画を担当。経営改革プロジェクトを推進し、事業再構築にも取り組んだ。2004年4月にエフエム東京執行役員経営企画局長に。同年10月には放送と通信の融合に向けて、モバイルIT上場企業のジグノシステムを買収。2007年4月にはCSK-IS執行役員就任。福岡市のデジタル放送実証実験、電子記録債権に関する研究開発に取り組んだ。2009年に日本電子記録債権研究所(現Tranzax)を設立。

著者紹介

連載電子記録債権を活用した「企業金融スキーム」

企業のためのフィンテック入門

企業のためのフィンテック入門

小倉 隆志

幻冬舎メディアコンサルティング

圧倒的な「コスト削減」「業務効率化」「キャッシュフロー改善」を実現する最新技術とは? フィンテックは一時の流行の枠を超え、次のステージに入っているという見方が大勢を占める。 ビットコインのリスクなどマイナス要…

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