前回は、フィンテックとして大きな可能性を持つ「電子記録債権」について取り上げました。今回は、「電子記録債権」の特徴について、債権の成立と譲渡の仕組みから見ていきます。

記録原簿にデータが書き込まれ、初めて効力が発生

電子記録債権が成立するには、指名債権などと同じように当事者による意思表示があることに加え、国から指定を受けた電子債権記録機関に請求して電子記録を行うことが不可欠です。つまり、意思表示だけでは成立せず、電子債権記録機関が管理する磁気ディスクなどの記録原簿にデータが書き込まれて初めてその効力が発生します。

 

いったん発生した電子記録債権を譲渡する場合も、電子記録債権を発生させたのと同じ機関の記録原簿にデータが書き込まれることでその効力が発生します。

 

そのため、債権の存在や帰属の確認が容易で、一般的な指名債権のような二重譲渡のリスクがありません。

 

[図表1] 電子記録債権の発生・譲渡のイメージ

多くの情報を記録するため、複数の形式が存在

また、電子記録債権は、電子データを利用するため非常に多くの情報を記録することが可能です。

 

これは、紙を利用する手形と大きく違う点です。手形は手形法という法律によって、券面に記載される内容や文言が定められていますが(手形要件)、これは券面に記載できる文字数に自ずと制限があるからです。

 

商取引でよく使われる約束手形の場合、手形法において9項目が手形要件とされており、その他の記載をすると手形全体が無効になることもあります。

 

[図表2]約束手形の手形要件

 

これに対し、電子記録債権では法律上、「発生記録において必ず記録しなければならない事項」(必要的記載事項)が8つあるほか、「(任意的に)記録できる事項」(任意的記載事項)が16も認められている、手形では物理的に記載が難しい参考的記載事項についても幅広く記録できます。

 

この結果、電子記録債権は手形のように単一の形式しかないのではなく、いろいろなタイプがあり得るのです。

 

例えば、決済手段として使えば、手形や一括ファクタリングの電子記録債権化ができます。担保として使えば、さまざまな売掛債権の電子担保化が可能です。電子契約書のプラットフォームとして使うこともできます。

 

また、のちほど触れますが、電子債権記録機関も一つだけとは限りません。民間の株式会社が国の指定を受ければ設立できるので、さまざまなサービスを提供する電子債権記録機関が誕生する余地があります。

 

[図表3]電子記録債権法の必要的記載事項と任意的記載事項

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