前回は、電子記録債権と手形との違いについて解説しました。今回は、振り込みミスや二重譲渡のリスクが低い、「電子記録債権」の特徴を見ていきます。

売買や担保としての扱いが可能な「売掛債権」

「指名債権」は最も一般的な債権で、債権者を特定しているものをいいます。当事者の意思表示があれば成立し、また行使にあたって契約書などの証書の存在を必要としません。

 

売掛債権も指名債権の一種です。売主と買主の間で、ある商品について特定の価格で「売ります」「買います」という意思表示が合致すれば、それで売買契約が成立し、買主には商品の引き渡しを求める債権、売主には代金の支払いを求める債権(売掛債権)が生じることになります。

 

売掛債権も財産の一つであり、原則として動産や不動産のように売買したり、債権を担保にお金を借りたりすることができます。

 

しかし、債権者が異なる複数の第三者に債権を譲渡したり担保に入れたりすることも考えられます。これを「二重譲渡」といい、当然トラブルになります。そこで民法は、二重譲渡された者の間で、誰が正当な権利を有するのかを判断するにあたって、一定のルールを定めています。法律の専門用語でこれを「対抗要件」といいます。

 

ちなみに、二重譲渡は不動産の売買でも起こり得ます。民法では、不動産の二重譲渡においては、移転登記を先にしたほうが優先する(対抗要件を備える)というルールを定めています。

二重譲渡のリスクがない「電子記録債権」

一方、債権の譲渡について民法では、「確定日付のある証書による債務者への通知又は債務者の承諾」を対抗要件としています。「確定日付のある証書」という表現は文書に記載された日付があとか先かで決まるようにも読めますが、実際には確定日付は先でも債務者に届くのがあと、というケースも十分あり得ます。

 

そこで判例では、確定日付のある「通知が債務者に到達した日時」または確定日付のある「債務者の承諾の日時」の順によって決すべきであるとしています。記載の日付ではなく債務者の認識を基準にしているのです。

 

このように債権譲渡にはいろいろ複雑な問題があるので、最初から債権の譲渡禁止特約を付けることが珍しくありません。特に債務者にとって、債権者が知らない間に変わり、突然、支払いの請求を受けたり、間違って元の債権者に振り込んだりすることを避けるためです。

 

この点、電子記録債権においては、電子債権記録機関の記録原簿に電子データが記録されることが債権譲渡の要件となっており、記録の日時は明確です。また、債権者が誰であるかは電子債権記録機関に記録されているので、間違えて振り込んだり、二重譲渡が起こったりすることはあり得ません。

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