前回は、企業の「英語公用語化」で、働き方はどのように変わるのかを探りました。今回は、「未来のGDP予想」が日本人にどんな事実を突きつけているのかを見ていきましょう。

2050年、日本のGDPは世界第8位にまで転落!?

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2017年に発表した、2050年までの世界経済の見通しを分析したレポート「The World in 2050」を見てみよう。

 

2050年の世界のGDP予想ランキングは次のようにいわれている。

 

第1位:中国

第2位:インド

第3位:アメリカ

第4位:インドネシア

第5位:ブラジル

 

日本は、現在の4位から8位にまで転落すると考えられている。その要因の1つは、2016年時点では8位に位置していたインドネシアが急速な経済成長をすると予測されていることだ。日本が担っていた役割は確実に、他国に奪われつつあるといってよい。「産業の空洞化」ということばは、すでに20世紀から使い古されてきた。製造拠点すなわち工場が海外に移転し、労働需要が低下するという危惧である。

 

しかしいま、それだけでなく「サービスの空洞化」というべき現象も起こっている。単純なものづくりは海外でできても、アフターサービスは日本でしかできないという通説が覆されてきているのだ。

部品調達、製造、アフターサービスすら海外に頼る日本

Webを通じてPCを受注するケースを想定してみよう。注文はアメリカで受け、部品はアジア全域で調達され、アジアの製造拠点で注文通りの完成品へと組み立てられる。もちろん支払先は日本企業だ。ここまでは20世紀末に完成していたモデルである。

 

しかし現在はさらに、アフターサービス体制すらも海外でまかなう状況になっている。コールセンターがたとえば中国の大連に置かれ、英語も日本語も使いこなす中国人スタッフが、アメリカや日本からの問い合わせに対応してサポートを行っているのだ。いまはまだ修理などの業務は日本国内に限られるが、将来的にはロジスティクスのコストダウンによって、一部が海外へ流出していくのは確実だろう。

 

こうなると、日本の本社に絶対に必要なのは住所と電話番号だけとなる。工場も、倉庫も、そして人材すらも、日本の拠点には必要がなくなってしまうのだ。

 

日本でしか供給できないものがあるとすれば、それは研究開発部門かもしれないが、それすらも海外への移転を開始する企業が出てきている。

 

結局のところ、日本国内外を問わず、日本人であれ外国人であれ、他の人材が供給できない高度な技術、サービスを開発する頭脳、つまり高度な知識とスキルを携えた人材のみが、その存在価値・存在意義を認められる時代になりつつあることは間違いない。

本連載は、2017年8月25日刊行の書籍『パーソナル・グローバリゼーション』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

パーソナル・グローバリゼーション

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布留川 勝

幻冬舎メディアコンサルティング

変化の激しいグローバル化時代に必要とされるスキルについて、数多の日本企業のグローバル人材育成をサポートしてきたグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ。 代表取締役の布留川勝氏がグローバル…

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