前回に引き続き、企業の「英語公用語化」によって、働き方はどのように変わるのかを見ていきましょう。今回は、日本で表面化しつつある「英語力不足の問題」も併せて説明します。

優秀な外国人に、仕事を奪われる日本人が続出

前回の続きである。また、世界中の人材との競争が始まると、ネックになるのが英語力だ。

 

あなたには、明日から海外勤務を命じられてもやっていけるだけの英語力があるだろうか。海外の子会社から日本語を話せない上司が来たときに、十分にコミュニケーションがとれるだろうか。もし、ノーというのであれば、その日からあなたは居心地の悪さを感じるだろう。

 

なぜなら、若い世代には英語を話せる人も多いからだ。英語のできないあなたにかわって、若手社員が直接に外国人上司とコミュニケーションをとるようになるかもしれない。そのとき、あなたの存在価値はどこにあるのだろうか。

 

あれだけ馬鹿にされていたドナルド・トランプが、大統領選挙で勝てたのは、背後に「負け犬白人」の存在があったからだといわれている。英語ができてIT能力も高いインド人や、安価な労働力であるメキシコ人などに仕事を奪われたと感じているアメリカの白人層が、移民排斥を訴えるトランプの応援団となっていた。

 

日本でも近い将来、優秀な外国人に仕事を奪われたと感じる「負け犬日本人」がおおぜい出てくるだろう。

 

英語もできず、IT機器も使えず、むだに高給取りで、社内でのコミュニケーションしかできない人がいるとしたら、そのうちに居場所がなくなるだろう。

会社員の英語力不足は「企業の過保護体質」が原因!?

日本はいままで、日本語という言語障壁があるために雇用が守られてきた面があったが、人口が減少するなかで、企業もいつまでも日本人ばかりに固執することができなくなっている。

 

遅かれ早かれ、日本企業には英語公用語化の波がきて、外国人を登用することが当たり前になるだろう。政府は移民制限を行って、日本人を守ろうとするかもしれない。だが、ITがさらに進化すれば、社員は必ずしも日本に住む必要もなくなる。海外に支社や子会社を作ればよいだけだ。

 

この状況を危惧して、英語公用語化を検討する企業はあるが、その多くは先送りになっている。しかし、世界に目を向けると、ASEAN諸国は一部を除いてほぼ英語公用語化が進んでいる現状を知っておかなければならない。

 

グローバル・エデュケーションでのグローバルリーダー育成ワークショップの言語は英語で行っている。理由は簡単だ。

 

日本語のレクチャーに英語レッスンを加えれば、グローバル人材が育成できるというのはまったくの嘘だからだ。ASEANのグローバル企業のワークショップはすべて英語が常識であり、だから英語で討議ができ、複雑なロジックや感性やイメージを伝えることができるようになるのだ。

 

また、TOEICは、日本企業では社員にインセンティブを提示して、受けさせることが多い。言い換えれば、企業が社員に対して何とか英語を習得してもらおうと、頭を下げているような状態だ。

 

だが、韓国企業のサムスンなどでは、そもそも英語ができなければ入社できないし、昇進もできないため、社員が自ら進んで英語を学んでいる。そのため、文系職種ではTOEIC900点は当たり前だ。もちろん、TOEICで高得点を取ったからといって、特別な手当がでるわけではない。業務の必須知識にすぎないからだ。

 

日本企業にありがちな、「セミナーは日本語、語学レッスンは別口」で行うような甘いやり方で、実際のビジネスの取引ができるだろうか。

 

他国の企業が英語でやり取りしているなかに入っていけない日本人は、日本企業の過保護な体質から生み出されているのではないか。

本連載は、2017年8月25日刊行の書籍『パーソナル・グローバリゼーション』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

パーソナル・グローバリゼーション

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布留川 勝

幻冬舎メディアコンサルティング

変化の激しいグローバル化時代に必要とされるスキルについて、数多の日本企業のグローバル人材育成をサポートしてきたグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ。 代表取締役の布留川勝氏がグローバル…

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