前回は、「未来のGDP予想」が日本人に突きつける事実を取り上げました。今回は、世界のITビジネスの中枢を支える「インド人エリート」の存在を紹介します。

未来に対する明確なビジョンを持つ「インド人学生」

日本以上の技術を持っている国もある。もともと東西体制における東側の中心であったロシアは、国策として成長させてきた自然科学分野での成果を商品化して市場経済にポジションを得ている。

 

独自の数学教育や英語の使用頻度の高さなどから、インドも周知のとおりIT立国として、世界に存在感を放っている。さまざまな機械がコンピュータに制御されるようになった昨今、家電製品でも自動車でも工作機械でも、その作動はつねにソフトウェアによって支配されている。その開発の大きな部分を担っているのがインドなのだ。

 

インド工科大学(IIT)は「IITに落ちたらMIT(マサチューセッツ工科大学)に行く」と現地ではいわれているほどの難関校だという。その学生は国家としてのインドをリードしていくという明確なビジョンを持っている。

 

私はアメリカのトップ大学に通う学生たちの真剣に学ぶ姿勢にいつも感心するのだが、インドの学生たちは、アメリカの学生たちをさらに上回る「壮大な夢」を感じさせるビジョンを持っている。モチベートされた人材がITエリートとして量産されているのだ。

 

インドはITの領域に特化しているように見えるかもしれないが決してそんなことはない。すでに自動車製造をはじめとする製造業に本格参入しているのをニュースなどで見聞きした方も多いだろう。

加速するグローバル化…日本企業の存在意義が問われる

そのうえ興味深いのは、インド人政治家やビジネスエリートの多くが、アメリカを認めながらも、自らのアイデンティティは決して見失っていないことだ。そこには、超大国であるアメリカと共存しながら繁栄していく、したたかな戦略と交渉力を持つ国家像と、それを支えるネットワーク化された優秀な人材が見え隠れする。

 

私が思い出すのは1983年に『TIME』誌が特集した「模索する大国日本」のことだ。記憶は定かではないが、日本製のPCを米国人が掃除しているようなイラストなどがあったり、日本がにわかに注目されているレポートが満載であり、私を含む日本人のプライドをくすぐった。現在、「少子化」「格差社会」で悩む日本であるが、80年代の日米の関係と近年の日印関係は少し重なって見える。

 

もちろん意識すべきはインドや中国などの新興国だけでない。世界各国の企業がどんどんグローバル市場に進出しているからだ。新興国企業がグローバル市場でさらに存在感を増している現在、グローバル化はさらに加速していく。日本企業、そして日本人ビジネスパーソンの存在価値が改めて問われている。

 

日々の業務を十分にこなし、現在の仕事で活躍の場を確保しているとしても、決して忘れてはいけない。あなたの現在の仕事、職場、何よりもあなた自身がすでにグローバル化のサプライチェーンに組みこまれているのだ。

本連載は、2017年8月25日刊行の書籍『パーソナル・グローバリゼーション』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

パーソナル・グローバリゼーション

パーソナル・グローバリゼーション

布留川 勝

幻冬舎メディアコンサルティング

変化の激しいグローバル化時代に必要とされるスキルについて、数多の日本企業のグローバル人材育成をサポートしてきたグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ。 代表取締役の布留川勝氏がグローバル…

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