優秀な人材を高額報酬で掻き集める「海外企業」
「日本は教育レベルが高いので、英語ができるだけの外国人に自分が負けるはずがない」と考える、鼻っ柱の強い人もいるだろう。
その向こうっ気はおおいに買うが、グローバル市場であなたの競争相手になっているのは、単に英語を母国語として生まれただけの「ぼんくら」ではない。学習能力が高いがゆえに英語ができて、当然、高等教育も受けている新興国のエリート人材だ。
いや、本当のエリート人材は、すでに日本企業には高嶺の花かもしれない。
たとえば、インド工科大学(IIT)は、人口13億人のインドからごく限られた一握りのエリートを集めて、非常に優秀な教育を施すことで有名だ。
165億円の報酬で有名になったソフトバンクのニケシュ・アローラ元副社長も、グーグルのサンダー・ピチャイCEOもIITの出身で、その存在感は、日本の東京大学や東京工科大学の比ではない。
IITに合格できなかったインド人が、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)に入学するといった話もまことしやかにささやかれるほどで、フェイスブックやグーグルはIITの卒業生に対して、年収1400万円近くを提示しているとも言われる(ダイヤモンド・オンライン)。
海外企業であれば、本当にほしい人材に対して高額報酬を提示することができる。米国株式市場に上場している「主力テクノロジー銘柄」を指す略称がある。
フェイスブック・アマゾン・ネットフリックス・グーグルの4社の頭文字を並べた「FANG(ファング)」、マイクロソフト・アップル・エヌビディア・テスラの4社の「MANT(マント)」だ。これら先端をゆく企業の特徴について考えてみよう。
まずは、トップタレントにビザを発行する国にある。また、スタンフォード大学やUCバークレーというトップスクールで学んだ修士号、博士号をとるような人に向けて高い年収を提示して、優秀な人材を採用している。これらの企業が作り上げているこの構造は、それ以外の会社の将来を摘んでしまっているかもしれない。
グーグルで働く30歳過ぎのビジネスパーソンは、世界中のトップタレントと切磋琢磨できる環境で磨いた能力が自らの資産になったと話している。彼は現在年収数千万円を稼ぎ出している。
能力主義の世界では、日本企業の年収相場は低すぎる
横並び体質の強い日本企業はどうだろうか。いくら優秀な人材とはいえ、新卒にいきなり1000万円以上の年収を提示できるだろうか。同期の間ではできるだけ格差をもうけないことをよしとする日本企業では、とうてい不可能だと私は感じている。
能力主義・成果主義の世界では、本当に優秀なエリートを獲得するには、もはや日本企業の年収相場では不足なのだ。
たとえば、日本企業がインド法人の社長を探すときに、日本企業の現地法人社長の相場で探すと、適した人物にはたいてい断られてしまうそうだ。インドでは、エリートの数が限られているために、経営を任せられる人材となると、日本企業が現地に送り込む人材よりも高い報酬を得ているからだ。
逆にいえば、もしあなたが海外のグローバル企業でも通用する、本当に優秀な人材であるならば、海外勤務を志願したほうがよい。日本の現地法人の社長や、アジアを統括するようなマネージャークラスになれば、国内でくすぶっているよりも、経験を積みながら高額の年収を得られる時代が近づいている。
だが、そのとき、あなたのライバルは日本国内の日本人ビジネスパーソンだけではなく、世界中の野心的なエグゼクティブになる。そして、あなたの能力は世界基準で判断され、比較されることになる。そうなっても、あなたは競争に勝てるだろうか。
日本企業で働く日本人ビジネスパーソンは、同僚が似た価値観をもつ日本人であることの安心感と、日本語の能力という強みを持っている。だが、日本を飛び出して海外のグローバル企業で働くとき、日本人であることと日本語の能力は、たいしたアドバンテージにならない。
必要なのは、グローバルに通じる英語力と、その英語を使って、どんな国の人とでもやっていけるコミュニケーション力、そして、どんな仕事にも必須のリーダーシップと共感性だ。