グローバル化とAIの発達で仕事がなくなる!?
日本人から仕事を奪っていくのは、やる気のある新興国の人材ばかりではない。AI(人工知能)もまた、私たちの仕事を肩代わりする存在として存在感を増している。
これまで、AIのブームは何度かあったが、いずれもコンピュータ技術の限界のゆえか、結局は失望とともに終わっていた感がある。
映画『2001年宇宙の旅』や、漫画『鉄腕アトム』に出てくるような、人間と遜色のないコミュニケーションをとれる人工知能は、SF(サイエンス・フィクション)に出てくるおとぎ話だと思われてきた。
だが、2016年から2017年にかけて、AI(人工知能)が人間のトップ棋士を負かしてしまったことは、よい意味で私たちの予想を裏切ってくれた。
なにしろ2015年の時点では、コンピュータはプロ棋士に対して、ハンデをもらってもまったく歯が立たず「人間に勝てるようになるのは10年後」といわれていたからだ。それが、わずか1年の間に、人類最強棋士を倒すまでに成長したのだ。
オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授は、AIの進化で10年以内になくなる仕事として、以下のようなものをあげている。
●銀行の融資担当者
●保険の審査担当者
●給与
●福利厚生担当者
●レジ係
●クレジットカード申込者の承認
●審査を行う作業員
●パラリーガル、弁護士助手
●電話の販売員
●苦情の処理・調査担当者
●簿記、会計、監査の事務員
●税務申告書代行者
●不動産ブローカー
●計量技術者、地図製作作業者
●訪問販売員、路上新聞売り
●建設機器のオペレーター
これらはいずれも、一定の知識の範囲内で、一定のパターン分類と処理を行い、一定の決められたリアクションを返す仕事といえる。販売員などは、すでに自動販売機があるようにAIに置き換えることが容易な仕事だ。融資や審査なども、例外を除けば、AIに任せても問題のない単純作業といえよう。
では、私たちはよりクリエイティブな仕事に時間を割き、充実した人生を送ることができるのだろうか。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
経済的余裕があれば、私たちの暮らしはよりよいものになるだろう。しかし、外国人とAIに仕事を奪われる「負け犬」になれば、移民排斥とコンピュータの破壊を声高に叫び、古きよきちょっと昔に戻ることを熱望しかねない。
ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットンは、著書『ライフ・シフト』で、私たちの人生は100年に及ぶようになったと述べた。実際、人口学者の推計によれば、2007年に日本で生まれた子どもの半数は、107歳になってもまだ生き続けることになっている。
医療の発達で「老後不安」はさらに大きく・・・
日立製作所と、九州大学発のベンチャー企業・HIROTSUバイオサイエンスは線虫を使った、新たながん検査の実用化に向けて共同研究を始めている。
患者の尿からがんの匂いをかぎ分ける線虫を利用し、実験段階だが9割を超える精度でがんを発見することができたという。この検査が実用化されれば、がんで命を落とす人はますます少なくなるだろう。
長寿は喜ばしいことだが、実際に高齢者になったとき、心配になるのは老後の生活だ。寿命が100歳になったとき、65歳からの国民年金がはたして35年間しっかりと支払われるのかどうか、多くの人が不安を感じている。
そもそも国民年金ならぬ厚生年金(老齢年金)は、1954年当初は、男性は60歳、女性と坑内員は55歳からの支給となっていた。肉体の消耗の激しい炭坑の坑内員と、何度もの出産で肉体の衰える女性は、55歳で、もう働き続けられないものと見なされていたのだ。
だが、当時の60歳に比べて、栄養状態の改善したいまの60歳はすこぶる元気に見える。おそらくいまの60代は、昔に比べればはるかに若く健康で、80歳まで働き続けても余裕だろう。
そのような認識が一般に広がったあたりで、年金の支給開始年齢は引き上げられる。つまり、私たちは、60歳で引退できず、身体の許す限り働き続けなければならない運命にあるのだ。
ここにもまた格差が現れる。自己研鑚を忘れず、常に自分を高めてきた人は、60歳でも70歳でもひっぱりだこだろうが、自分の地位や身分にあぐらをかいて既得権益にしがみついてきた人は、60歳の定年でこれ幸いとばかりに会社を追い出されるだろう。
さて、あなたはどちらの人材になるだろうか。