変化が激しい「VUCAの時代」を生き延びる人材の特徴

前回は、これからのビジネスで意識したい「VUCAの時代」とは何かを説明しました。今回は「VUCA」時代で生き延びることができる人材を見ていきましょう。

何が起きても対応できる「俊敏で賢い小動物」

このようなVUCA時代に生き残るのは、従来の意味での強者ではない。どんなに寡占ネットワークを築いていても、パッケージそのものがなくなってしまえば、意味がないからだ。

 

アマゾンがインターネットで本を売るようになって、書店がバタバタと潰れていった。紙の書籍がなくなれば、アマゾンもまた衰退するはずだったのだが、聡明なジェフ・ベゾスは、いちはやくキンドルを開発し、自ら電子書籍市場を開拓することで、延命に成功した。それどころか、消費者へのラストワンマイルを握ることで、コンテンツ・ホルダーの出版社よりも大きな権力を得つつある。

 

時間はいくらでもあったはずなのに、書店と出版社は何をしていたのだろうか。紙の書籍という既存市場にあぐらをかいて、すべてのデータがWebを通じてやりとりされる電子化の時代を先読みできなかったとしか思えない。60代の私でさえ、書籍や雑誌の8割以上をipadで読んでいる。ミレニアル世代のデジタルネイティブに至っては子どものころから活字も漫画もスマートフォンやタブレットで読んでいる。

 

デジタルデータの流通量の増大が、既存の情報産業を押しつぶしていく姿は、かつて地球を支配していた大型恐竜が、環境の変化に対応できずに死滅して、小型哺乳類の時代がやってきたことを思い起こさせる。

 

他の生物を食らうために巨大化した肉食恐竜は、隕石の衝突による気候の変化と、食物の減少に耐えきれず、絶滅した。環境が激変する現代も、恐竜時代の終焉と同じだ。生き残るのは、一方向に特化して進化したかつての強者(大企業)ではなく、何が起きても対応していける、俊敏で賢い小動物(個人)だ。

「将来は計画通りに進むはず」という幻想は捨てる

あなたは、明日、会社が倒産しても生きていけるだろうか。

 

会社の不正会計が発覚して、事業部ごと外資系企業に売却されて、外国人上司や同僚、部下と英語を使って働かねばならなくなったとしても、いまの地位を保てるだろうか。

 

VUCA時代には何が起きるか分からない。

 

会社の公用語が英語になるかもしれない。中国に転勤になるかもしれない。ミサイルが飛んできて、戦争になり、個人の財産が没収されるかもしれない。世界恐慌が起きて、あなたの資産がすべて紙屑になるかもしれない。直下型大地震に襲われて・・・。

 

いずれにせよ、これからの社会の進展を予測できるとか、いまの会社で真面目に働いていればキャリアが順調に積み重ねられるといった幻想は捨てねばならない。将来が計画通りに進むという思い込みは、個人ではどうにもならない環境の変化を無視した傲慢さの表れだ。

 

もちろん、戦争や天災といった、急激な変化が起きる可能性はとても少ない。だが、変化は目に見えないところでゆっくりと起きている。

 

1971年まで、1ドルは360円の固定相場だった。だが、変動相場性に移行してから、じわじわと円高が進み、1995年には1ドルが80円を割る事態になった。輸入品の価格は4分の1以下になったが、輸出品の価格は4倍以上になる。

 

輸出メーカーにとって円高は大打撃だが、行きつ戻りつしながらゆっくりと切り上がっていったために、いつのまにかという感想を抱くものが多かった。

 

熱湯にカエルを放り込めば飛び上がって逃げるが、カエルを水に入れてから、ゆっくりと全体を加熱していくと、温度変化に気づかずにゆで上がって死んでしまうといわれている。いまの日本人の多くは、この「ゆでガエル」になりつつある。

 

あなたの父親は、もしかすると善良なサラリーマンで、出世のコツは周囲をよく見て、空気をしっかり読んで、ちょっとだけ進歩的なことを言って大勢についていくことだと考えていたかもしれない。昔はそれでよかったかもしれないが、いまは社内で強いものについていっても、会社ごとひっくりかえるリスクのある時代だ。

 

会社内とか、業界内とか、日本国内といった、限定された狭い視野で物事を見ていては、いつ足元をすくわれるか分からない。遠い国、遠い業界で起きる小さなできごとが、すぐに自分たちのビジネスを脅かすようになる。

 

たとえば、テスラのイーロン・マスクがなくそうとしているのは、単にガソリン自動車ではない。テスラが電気自動車に取り組むのは、自然破壊や渋滞といった環境汚染をなくすためだ。そのために、リサイクル可能な宇宙船による火星移民計画を発表しているし、ボーリングという新会社での地下トンネルの高速自動車道路も構想している。

 

これは、地上の道路に設置した電動式の車台に車を乗せると、車台ごとエレベーターで降下し、そのまま地下トンネルの道路を高速走行するという仕組みだ。このように、既存のビジネスモデルを変えようとする動きは今まさに起こっているのだ。

 

これは夢物語だろうか。いや、そうではない。電話や電車や飛行機だって、完成前は夢物語だったが、誰もが当たり前に使うものになった。インターネットが登場する前は、外国の人と気軽に知り合うことも会話することも楽ではなかったが、いまでは難なくできる。

 

ビジネスにおけるイノベーションには3種類ある。1つ目はビジネスモデルイノベーション、2つ目はプロセスイノベーション、3つ目はプロダクトイノベーションだ。

 

イーロン・マスクが変えようとしているのは、ビジネスモデルイノベーションである。たとえば、ガソリン車の廃絶、ボーリングでの試みなどは、「従来の自動車の在り方」を変えようとする動きであり、これが成功すると世の中の仕組みが大きく変わってしまうのだ。

 

もしイーロン・マスクの構想が実現したら、あなたの仕事にはいったいどのような影響があるだろうか。よく考えてみてほしい。

 

次回からは、グローバルな場面で自分のポジションを模索するビジネスパーソンの例を挙げていく。

グローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社 代表取締役社長 

グローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社、代表取締役社長。
2000年、グローバル人材育成をミッションに、『グローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社』を設立。2010年に日本企業のグローバル化への貢献を評価されジャパンタイムズの「100 Next-Era CEOs in Asia」に選出される。ハーバード大学、カリフォルニア大学バークレー校、カーネギーメロン大学、ロンドン・ビジネス・スクールなどトップスクールと協働し、国内ではえりすぐりのリーダーシップやコミュニケーションの専門家のネットワークを構築。『グローバルと自立』をテーマにした、組織開発と人材開発におけるコンサルタント、ファシリテーター。

著者紹介

連載自分自身のキャリアを活かす「パーソナル・グローバリゼーション」のススメ

本連載は、2017年8月25日刊行の書籍『パーソナル・グローバリゼーション』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

パーソナル・グローバリゼーション

パーソナル・グローバリゼーション

布留川 勝

幻冬舎メディアコンサルティング

変化の激しいグローバル化時代に必要とされるスキルについて、数多の日本企業のグローバル人材育成をサポートしてきたグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ。 代表取締役の布留川勝氏がグローバル…

 

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