今回は、銀行引受の社債発行の基準がゆるんでいる理由を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

なぜ「銀行引受の社債の基準」がゆるんでいるのか?

銀行は今や「手数料産業」である、
と言い続けています。

 

1回でも、銀行が引き受ける社債を発行した、
という経験がある経営者は、こう感じています。
「いやぁ、やるんじゃなかった。」と。

 

「御社の財務状況なら、当行が引き受けることができますよ。」
「毎月の返済がなく、資金繰りがラクですよ。」
など、甘い言葉に誘われてOKしたものの、
やってみたら、手数料のかたまりだった、というわけです。

 

つまり、そこそこいい財務状況の会社が、
社債引き受けのターゲットとされていきたのです。
ところが、この1年ほどのなかで、
「どうもおかしいな。」と感じることが増えてきました。
要は、財務状況がよくない、むしろ悪い、
といってよい会社でも、銀行引受の社債を発行している、
という例を、みかけるようになってきたのです。

 

で、ある銀行の元頭取にたずねてみました。
「最近、銀行引受の社債の基準、ゆるんでいませんか?」
すると、
「ゆるんでる。」と、即答されました。続いて、
「結局、手数料が取りやすいから、そっちへ走っているよね。」
とのことでした。

社債償還時のことより「目先の手数料」の銀行

マイナス金利導入以後、銀行は通常融資の利ザヤで稼ぐ、
というパターンが打ち消されています。
保険やアパート建設、投資信託など、手数料で稼ぐしかない、
という状況に追い込まれました。
銀行引受の社債も、そのひとつです。

 

そのため、従来の銀行基準をゆるめて、
財務状況に関係なく、社債引き受けをやり始めたのです。
しかし、これは、危険です。
年収の3分の1規制で消費者金融から借りれなくなった、
多重債務者に、銀行カードローンでお金を貸している、
のと変わりません。
要は、返せない可能性のある会社にも、貸している、
という現状なのです。
返済能力は低いかもしれない、でも、
そんなことは言っていられない、という銀行のうめき声が、
聞こえてきそうになるのです。

 

社債引き受け時の担当者は、5年後の償還時にも、
その支店に在籍している可能性は低いです。
転勤が予測されます。
つまり、償還時のことより、目先の手数料、なのです。

 

とりあえず、発行社債を引き受けて手数料を稼ぎ、
5年後に継続引き受けするのか、そこでやめるのかは、
そのときまでの様子を見て判断すればいい、泳がせておこう、
という感じなのです。
銀行の実務の現場はいま、そのような状況に陥っているのです。

 

財務状況が悪いのに、
「御社なら大丈夫です。」などと銀行員から言われると、
経営者は嬉しくなります。
その甘い言葉に、絶対にのってはいけないのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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