前回は、高齢者ケアの拠点としての地域包括支援センターを、一般に周知する試みを取り上げました。今回は、自宅への配食などを通じて高齢者を支援する、介護施設の取り組みを見ていきます。

市の委託事業からはじまった「配食サービス」

事例:第1通所介護センター

 

地域の高齢者に喜ばれる配食サービスを実施

 

●メニューのバリエーションを増やす

●「ちょうどよい」時間に安心の手渡しサービス

●お弁当箱・袋にもひと工夫!

 

地域包括支援センターが誕生する前から、各自治体には高齢者の生活を支援する独自のサービスがありました。そのひとつが、配食サービスです。

 

体力的・身体的な理由から、自分で料理をつくることが難しい独居の高齢者を対象とし、昼食や夕食を自宅に配達し、あわせて安否確認も行うというものでした。私の法人でも三重県津市の委託を受け、2006年には1カ月あたり約800食を配食していました。

 

現在もなお、地域独自の支援のひとつとして配食サービスを行っています。地域包括支援センターができたことで、相談に来る人が配食サービスを頼むといった新たな動きもあります。

 

そこで、「地域に愛される弁当をつくって1カ月2000食を届ける」ことを大きな目標に、配食の見直しを行いました。

 

まずは、毎日の献立を改善しました。職員自らがメニューを考案し、味つけをチェックし、また彩りも重視しました。副菜に赤(にんじんなど)、緑(ピーマンなど)、黄(さつまいも、卵など)、黒(ひじきなど)、白(白和え、ポテトサラダなど)の5色が入るように献立を考えます。

 

食材の切り方にもひと工夫をします。高齢者がのどに詰まらせることがないよう、大きさや硬さをチェックし、刻み食、超刻み食などさまざまな形態に対応しました。

 

今までの弁当箱は、包みもゴムバンドを巻いただけという地味なものでした。そこで、思い切って弁当箱・弁当を入れる袋を新しくすることにしました。職員がカラフルな箱を選び、袋も手づくりのものを準備しました。こちらは利用者に非常に好評で、「お弁当を食べるのが楽しみになった」という声が届いています。

「自費負担」で配食サービスを利用したい人にも対応

配食サービスは本来、身体的な理由から食事を準備することができない独居の高齢者が対象者で、「料理が苦手で食事がつくれない」「夫婦2人暮らしで高齢のため食事準備ができない」といった人は、必要であってもサービスを受けることができませんでした。そこで、市の補助は受けなくても、自費負担で配食サービスを利用したいという人にも対応し、「自費での配食利用者」も受けつけることにしました。おためしでの利用も可能にし、少しでも多くの人に配食サービスを利用してもらえるようにしたのです。

 

また、配食の時間・方法も大きなポイントです。ほかの配食サービスは配食の時間が早すぎて、昼頃にはすでに夕食が届くという声をよく聞きました。そこで、3人の職員が、できるだけ夕食の時間に近づけて配達するようにしました。通所介護で弁当を受け取って持ち帰る人も含め、直接顔を見て受け渡すようにし、不在の場合は再配達します。

 

そうした努力もあって、1カ月800食だった配食は、約3年後の2009年には1カ月2000食にまで増加しました。

本連載は、2017年8月26日刊行の書籍『利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル』から抜粋したものです。

利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル

利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル

山田 俊郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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