トランプ、読書・・・利用者が「できること」を増やす
事例:ケアハウス
ケアハウスならではの人と人とのかかわりを充実させたい!
●居室での閉じこもりを回避し、余暇時間を充実させる
●さまざまな年代構成の入居調整を実践
●アクティビティは「できない」で終わらせず準備に工夫をする
私の法人のケアハウスでは30人の利用者が過ごしています。
ケアハウスで暮らしている利用者は、当然のことですが次第に年をとり、「できること」が少なくなっていきます。少し前まではほかの利用者とカラオケボックスに行ったり、旅行に行ったりしていた人も、年月が経つにつれ、体力や身体状況が大きく変化し、「できないこと」が増えていきます。そのためケアハウスでは、新たな取り組みを行うことよりも、今までしていたことをいかに長く維持していくかが課題になります。そこで、利用者の状態をもとに、介護職員で話し合い、5つのミッションを考え、実行しました。
■Mission1/居室での閉じこもりを回避せよ!
余暇時間に居室で過ごす利用者が増えてきたため、閉じこもりを減らすことを目標にしました。
最初は職員から「トランプしませんか?」と声をかけましたが、日を追うごとに、利用者同士が自発的に声をかけ合って余暇時間を過ごせるようになりました。
■Mission2/余暇時間を活用せよ!
利用者が余暇時間を有効に活用できるように、共有スペースにトランプや百人一首を置いて、自由に遊んでもらえるようにしました。また、図書コーナーもつくり、集団活動が苦手だった利用者にも、居室外で過ごしてもらうことができるようにしました。
「新人」が入ってくることで、利用者の意識が前向きに
■Mission3/入居調整の工夫で利用者の意識改革!
新たな入居者の入居調整の段階で、比較的若い年齢層に入居してもらうようにしました。すると、以前からの利用者も「新人」が入ってくることによって刺激され、意識が前向きになったのです。カラオケで、聴き慣れない歌を歌う新しい利用者に刺激されて、いつもと違う曲を歌ったり、ベランダでの野菜づくりやひとり旅など今までしなかったことに挑戦したりする利用者が増えました。
■Mission4/「できない」で終わらせるな!
加齢に伴うADLの低下から、利用者の「できること」はだんだんと減っていきます。しかし「できない」から「しない」のでは、ますますADLは低下してしまいます。
そこで、介護職員が作業の下準備をすることで、利用者に今までどおり作業してもらえるように工夫します。たとえば、紙を切ることはできないが、折ったり、のりで貼ったりすることはできるという利用者の場合、介護職員が紙を切って準備をし、利用者には折るだけ、貼るだけの作業をしてもらうなど、それぞれに役割をもってもらいます。できないことがあれば、できることをしてもらい、そのための手伝いを介護職員が行うようにしたのです。
また、ADLが低下するとどうしても転倒事故などが起こりがちです。職員はその分注意して見守らなければならないのですが、規定どおりに、あるいは危険を減らすために、「けがをするといけない」「そこは歩かないでください」などと制限ばかりをしていれば、利用者の不満が出てきてしまいます。
その対策として、比較的安全で、職員の見守りが可能な中庭を開放することにしました。今では中庭の散歩を日課とする利用者もいます。