前回は、個別対応の実施で「利用者のQOL」を高めた介護施設の事例を紹介しました。今回は、介護施設の対応で利用者満足を高めた事例を見ていきます。

介護職員の手を借り、趣味の麻雀を楽しむ

前回の続きです。

 

このように、日々の小さな個別対応を繰り返すうち、それぞれの利用者が持つ、「こうしたい」「こんなところに行きたい」などの小さな「夢」に気づくことができるようになりました。

 

そこで、今度は職員が利用者の夢を叶えるために、個別対応というかたちで実行しはじめました。これまで施設で実施してきた、個別対応の具体例と利用者の反応を紹介します。

 

■麻雀好きの利用者と麻雀

 

ある利用者とは、麻雀をしました。

 

昔からの趣味が麻雀だということは聞いていましたが、入所時は話すことも麻雀牌を並べることも困難な状況でした。そこで、行事の時間を利用して、介護職員が利用者の代わりに牌を並べるなどし、一対一で介助しながら麻雀を実施しました。

 

麻雀をしているときの利用者の表情はとてもいきいきとしており、手元がおぼつかなくても、ルールをしっかり覚えていました。

 

たとえ心身ともに弱っている利用者でも、好きなことをできる限り続けることで、症状もしだいに改善していくのだということを教えてくれた事例です。

 

■花好きの利用者と植物園にドライブ

 

こちらも、もともとの利用者の生きがい・趣味を思い出してもらえた事例です。

 

ある利用者は、入所前は自宅で植物を育てることが趣味だったことが分かりました。

 

そこで行事の時間に、介護職員と一対一で三重県津市の植物園へのドライブを実施。園内では利用者はとてもいきいきとした様子で植物を見てまわり、お土産に鉢植えの花を購入して自分の居室に飾りました。

 

またその日から、その利用者は鉢植えの花に水をあげることが新しい日課となり、生活にハリが出てきました。

長年の夢だった伊勢神宮への参拝に涙した利用者

■伊勢神宮に参拝

 

また、入所前からの長年の夢を、ようやく叶えたという利用者もいます。

 

伊勢出身の利用者2名を対象に、職員2人(1人は看護師)がつき添い、伊勢神宮へのドライブを実施しました。

 

近くの観光スポットで昼食をとり、充実した時間を過ごしました。「お伊勢さん」参拝は、利用者2人にとって昔からの夢だったそうです。

 

このお伊勢参りのおかげで、職員と利用者の関係も良好になり、距離がぐんと近づきました。一人は途中から感極まって涙を流し、後日、家族に熱心にその日の話をしていたそうです。

 

もう一人もそのときに同行した職員を覚えており、その後何度も感謝の言葉をかけてくれるようになりました。また、リハビリにも積極的に取り組むようになりました。

 

■男性だけのおやつづくり

 

おやつづくりは、施設内でよく実施しているアクティビティですが、どうしても参加者が女性に偏ってしまいがちです。一般的に男性利用者は、女性利用者に交じってアクティビティへ参加するのは敬遠してしまいます。しかし、実は男性利用者の中にも料理に興味がある人がいることが分かり、フロアの一角を利用して男性限定でたこ焼きやホットケーキづくりを実施しました。

 

男性限定で企画したことで、普段、集団でのアクティビティに消極的な男性陣も参加しやすくなり、また「料理=女性」という固定概念を持っていた男性も料理の楽しさに目覚めて、非常に盛り上がるアクティビティとなりました。

 

その後も特に料理に関心のある利用者や、食べることが好きな利用者が率先して取り組み、男性利用者に人気のアクティビティとして定着しています。

本連載は、2017年8月26日刊行の書籍『利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル』から抜粋したものです。

利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル

利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル

山田 俊郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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