前回は、利用者の介護度・目的によって異なる介護施設のサービスを紹介しました。今回は、利用者に「豊かな生活」を提供する介護サービスについて見ていきます。

要介護度の高い利用者も「お客様」として接する

特別養護老人ホームでは、身体的または精神的に虚弱で常に介護を必要とし、在宅での介護が困難な利用者が生活をします。2015年度より、入所対象者は原則として要介護3~5の認定を受けた人に限定されるようになりました。

 

身体的な介護を必要とする人はもちろん、認知症によって意思の疎通が困難な利用者も多くいます。私の法人の施設でも、現在の平均要介護度は3.9です。自力で食事をとることができず、胃ろうをつけた人も数人いますが、歌の好きな人、積極的にコミュニケーションをとって友人関係を築こうとする元気な人もたくさんいます。そのため要介護度の高い人への専門的な介助と、活発なコミュニケーションの両方が求められる職場です。

 

利用者の要介護度が高くても、まず「お客様」として接することが大切です。そのため笑顔、清潔な身だしなみ、丁寧な言葉づかいは基本中の基本です。利用者に安心感を与え、信頼を得ることができる介護を目指しましょう。

「生活の場」にも配慮したサービスを

特養には、4人部屋、6人部屋などの多床室と、個室の2種類があります。従来の施設は多床室がほとんどですが、プライバシーへの配慮の問題から、2000年以降からユニット型個室が増えています。現在はユニット型個室を希望する人が多くいますが、ユニット型個室の場合、多床室に比べどうしても料金が高くなります。ひとりが寂しいという利用者、重度の認知症で誰かいないと落ち着かない利用者には、従来型をおすすめすることもあります。

 

ユニット型個室と従来型の多床室とでは、介護職員の利用者への配慮のしかたも異なります。たとえばユニット型個室では、利用者が個室に入ってしまうので「死角」が生まれやすくなります。そのため、定期的に部屋を見回り、体調の変化などがないかを確認しなければなりません。その点、多床室の場合は同室の利用者の目もあるため、転倒などの事故が起こっても早く発見できます。その半面気をつけなければならないのは、利用者同士のトラブルです。介護職員が仲裁し、どうしても相性が合わない場合は部屋替えを考えます。

 

特別養護老人ホームは、利用者にとって「終の棲家」です。残された人生を豊かに過ごすために入所しています。介護職員は利用者のQOL(生活の質)を考え生活全体の支援も行っていきます。そのために重要なのは「個別対応」「アクティビティ」です。多くの施設では日々さまざまなアクティビティを行っていると思いますが、似たようなものが続くと利用者は飽きてしまいます。工夫をこらし、退屈しないよう、多種多様なアクティビティを揃えましょう。

 

[図表]特別養護老人ホーム(従来型)のタイムスケジュール

※ユニット型は利用者の希望に個別に対応するため、決められたスケジュールは原則ない。

本連載は、2017年8月26日刊行の書籍『利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル』から抜粋したものです。

利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル

利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル

山田 俊郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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