予測は個人的な「仮説」にすぎない
「当てよう」と躍起になっても結果は出ない。だから流れについていく──。「トレンドを考えろ」と説明しているが、そのトレンドが完全に終わらないかぎり、はっきりと確認できないのが現実だ。
「いま上げトレンドかどうか」は、実際に上がって天井を打ち、再び下げてしまうまでわからないのだ。だから「上げトレンドに移ったかもしれない」「そろそろ上げトレンドになるだろう」という推測で出動するのが、現実のトレードだ。
予測というのは上記のような推測であり、行動を開始するきっかけ、個人的な「仮説」にすぎない。だから、当てようとしないで流れについていこうという考え方が、現実的で実践的なのだ。
では、どうやってついていくのか。第1章(※書籍参照)でも述べた、「一点狙い」を避け、「分割してポジションをつくっていく」のである。
例えば5,000株買う場合に、ジッと動きを見ながら、最安値を狙って「5,000株買った!」というのはダメ、ということだ。一発勝負で一喜一憂するのも楽しいかもしれないが、結果をマネジメントする売買、シゴトとしてのトレードとはほど遠い。
新規に仕掛ける段階では、その銘柄の現在の動きにかかわりが浅い状態だ。必死に観察して考えたって、遠い存在なのだ。「どうだろう。この見込みでいいのかな?」と探っていく必要がある。
だから、まずは1,000株買ってみるのがスタートだ。わずか1,000株でもポジションを持てば、現実に損益が生じる状態に移行する。当事者意識が高まると同時に、値動きの“感じ”を受け止められる状態になる。ポジションなしで考えているだけのときとは、別世界だ。
「見込み通りのようだ」と思ったら、それから数量を増やしていく。例えば、さらに2,000株を買う。合計3,000株になったところで、再び「このまま進んでいいかな?」と考える。日々の値動き、自分が建てたポジションから受ける印象で自分の答えを出す、確固たる気持ちで“次の一手”を決めるのだ。
「よし、いける」と思えば、最後の2,000株を買って合計5,000株にして仕込みは完了する。
資産が増えても心がけたい「丁寧なトレード」
そんなことはまどろっこしいという人もいるが、たとえ異性に一目ぼれしたとしても、その日のうちにプロポーズすることはないだろうし、どんなものでも少しずつ、状況を確認しながら進むものだ。
食べ物だって試食する、洋服だって試着するのだから、大切な資産を運用するシゴトで、これくらいの手間をかけるのは当然である。
それに、例えば300万円でトレードを開始したとしても、資金が殖えないまま300万円で取ったり取られたりを続けるなんてことが終着点ではないだろう。
資金が殖え、例えば1億円になるというのがゴール(目標)ならば、300万円で5,000株のトレードが、将来的に1億円で16万株のトレードに育った状態を視野に入れておくべきだ。
1億円の運用をしながら16万株を一発で仕掛けるなんて、あまりに乱暴で雑といえる。資金が1億円になってからも通用する基本を最初に確立しておくために、資金が少ないうちから丁寧なトレードを心がけたい。
FX取引では、数万円の資金を口座に入れ、競馬やパチンコで遊ぶような感覚でトレードする人がいる。
「負けても、また気が向いたときに、こづかいから同額を入れればいいよ」という発想だが、こういうやり方は自由闊達とか思い切りがいいなどと評価したくはない。ダメなトレードのクセがつくだけだ。
予測を当てるのではなく、流れについていく。そのためには分割売買が必須で、技法の第一歩なのである。